2017 年 9 巻 p. 155-183
筆者の母語であるモンゴル語スヌト方言は、他のモンゴル系諸方言と同様アクセントに音韻論的対立がない。このため、今日までアクセント研究はほとんど行われておらず、定説として「モンゴル語のアクセントは、常に語の第1音節に強さが置かれる」とされてきた。しかし、この説には多くの反例があるところから筆者はこの説に納得できず、実験音声学的方法を用いてスヌト方言を精査したところ、(1)音節数、(2)音節の種類、(3)音節構造の3点から、従来説に対する修正案を提出することができた。
また、いわば副産物として、非示差的特徴を有する音声を研究することによって、言語研究全体にとっても裨益する事例があることを主張した。