池田ほか (2015) では、ヘブライ文字の場合、N170 とP250 の電位差が母音記号の有無という物理量、およびユニット数という認知量を反映するのではないかという解釈を提示しているが、これに対して別の解釈を提示するのが本稿の目的である。この実験で用いた視覚刺激は、1 ユニット母音記号なし(1U)、1 ユニット母音記号あり(1UP)、2 ユニット母音記号なし(2U)、2 ユニット母音記号あり(2UP)の4 種類に分類されるが、このうち言語的にも視覚的にも異なり、両方の処理が重畳する2UP を除いて比較してみると、前者ではN170 のピーク電圧に、後者ではP250 のピーク電圧に明瞭な違いが認められ、N170 は視覚処理、P250 は前語彙的な言語処理に関連しているという新たな解釈が可能となる。