1986年のドイモイ政策以降、ベトナムの都市化は急激に進んでいる。フエにおいても、さらなる発展とユネスコにより世界遺産登録された伝統的建築群の保存・維持のための整備事業が計画されている。本研究では、路地コミュニティ・ソムにおける中秋節祭に着目してソムの維持と市民文化の継承可能性について考察することを目的としている。現地調査と聞き取り調査により、路地コミュニティ・ソムの特徴を同定し、ソムや多様な運営主体による中秋節祭の現在の様子を明らかにした。ソムと中秋節祭は相互に補完し合う一体的なものであり、フエにおけるソムの維持が歴史都市の市民文化継承に果たす役割は大きい。