2015 年 13 巻 4 号 p. 192-195
カトマンズ盆地は、ネパールのほぼ中心に位置し、二千年の歴史を経た現在でもなお、先住民族のネワール族による文化が息づく地として世界遺産に登録されている。その中でも仏教僧院はネパールで独自の発展を遂げ、文化的にも重要な位置付けにあるが、1970年代のユネスコによるカトマンズ盆地における歴史的遺構の全数調査以来、その実態が把握されてこなかった。仏教僧院は都市化に伴いその姿を大きく変えており、伝統的な僧院建物の喪失が危惧される。本研究は、世界遺産カトマンズ盆地の生きた文化遺産としての仏教僧院における継承保存の現代的あり方に有益な知見を得ることを目的として、僧院運営の変容が仏教僧院建築の建物保存に及ぼす影響を明らかにするものである。