2019 年 18 巻 2 号 p. 164-171
本研究では,包括的な視点から,濃尾地震から東日本大震災までの日本における災害・被爆遺構について体系的に整理し,保存状態や維持管理状況などの分析を行った.その結果,218件の遺構が収集され,被爆遺構が約57%,地震による遺構が35%,噴火による遺構が7%,風水害による遺構が1%であった.それらを類型化し,5つに区分した時代による傾向を調べたところ,古くから残る遺構は,存置型で保存された地形の遺構が多く,近年は遺構のタイプと保存状態に様々なパターンが見られるようになっていた.東日本大震災では民間企業による新たな活用の仕方も見られた.維持管理状況については,施設型や修復利用型の遺構の事業費が高く,とくに施設型で地形を保存している事例は事業費,維持管理費ともに最も高かった.存置型の遺構や,メモリアルパークで土木構造物を保存している事例は事業費,年間維持管理費があまりかかっていなかったが,これらは経年劣化による補修が今後必要になることも考えられる.