2020 年 19 巻 1 号 p. 68-72
本研究の目的は中堅所得者向け公的賃貸住宅の今日的な役割・機能を検討することである。わが国では特に1990年代から中堅所得者向け公的賃貸住宅の供給が展開してきた。しかし、この政策の都道府県及び市区町村における普及状況の把握は進んでいない。そこで本研究では全国47都道府県を対象に照会を行い、41団体から回答を得て供給動向を把握した。また、福島県を事例に59市町村を対象とした調査票調査を行い、53自治体から回答を得て施策の普及状況を把握した。特に本報では都道府県の動向についてまとめている。回答41団体中、こうした住宅の供給は25団体で確認された。しかし、今後の供給必要性があるとの回答は4団体に止まった。また、都道府県から見た市区町村による供給の展望について、進展すると回答したのは7団体であった。この二つの回答に共通して見られる特徴は、今後は人口減少傾向にある、また、都市化の進展が低い側で供給の可能性があるという点である。この点を確認するため人口減少割合及び市区割合が低い都道府県として、福島県を検討対象事例として抽出し、調査票調査を行った。その回答53自治体の内、こうした住宅の供給は47自治体で見られた。つまり広く普及している。そして、その自治体の意図については次報で考察している。