2020 年 19 巻 1 号 p. 73-77
本稿の目的は、市町村が供給主体の中堅所得者向け公的賃貸住宅の実態を整理することにある。本稿における中堅所得者向け公的賃貸住宅とは、自治体が供給主体となる、公営住宅法適用外の賃貸住宅のことを指す。福島県内の全59市町村及び該当102事業を対象とした住宅課宛の質問票調査結果を分析し、主に次の2つを結論とした。1)小規模自治体では、国の財政的支援策が整備されていない、自治体独自施策としての住宅を供給する傾向がみられる。2)近隣自治体との競争的視点を含んだ人口減少対策目的の住宅は、民間賃貸住宅市場と公営住宅が対応しない隙間に持家以外の選択肢を提供した。他方、中堅所得という収入基準に限らず入居者を限定する傾向が見られ、公的支援の対象世帯とそうでない世帯の選別的性格を強めた。