2021 年 19 巻 4 号 p. 408-411
犯罪の空間的偏在を計測するための指標として,ジニ係数がこれまで用いられてきた.しかし,ジニ係数には,観測ユニット数に対して事象数が非常に少ないときに偏在を過大に評価するという問題がある.日本のような犯罪が低頻度な状況でその空間的偏在を明らかにするためには異なるアプローチが必要である.本報告ではこうした問題意識のもと,東京23区と大阪市において2008~2019年に認知された8罪種を対象に,希少事象集積係数(Rare Event Concentration Coefficient; RECC)を用いた犯罪の空間的偏在の計測を行った.分析の結果,RECCは,従来のジニ係数では評価することが難しかった,犯罪低頻度な状況での偏在を検出できること,罪種間では出店荒しや事務所荒しで偏在度が高く,住宅対象侵入窃盗や車上ねらい,乗り物盗,自転車盗,ひったくりで偏在度が低いことなどが明らかとなった.