2022 年 21 巻 3 号 p. 308-311
災害大国であるイタリアと日本は、近年の大規模震災を経てそれぞれ復興を推し進めている。本稿は被災した地域の経済活動の復興に着目し、特に仮設商店街の運用においてそれぞれ生じている課題を、法制度を整理しながら比較分析する。イタリアにおいては、法制度に基づき仮設商店街への移動が自治体内に制限されたことにより、地域特有の個人事業の保護や生活面での安定を比較的保つものの、店舗そのものの不足や設備の不備が露呈し、経済活動面に多くの支障をきたしている。一方日本では経済活動の再開を優先し仮設商店街の建設および移動が早期に進んだが、もとの土地を離れた場合や急速な環境の変化による生活面やメンタル面での障害が長期的な課題として指摘された。双方の経験に基づき、被災者のウェルビーングに配慮した仮設商店街運用の重要性が示された。