花街は日本の文化をソフト・ハード両面から包括的に継承している稀有な場であり、近年ではその価値が再評価されつつある。福岡市では、建築的価値の高い料亭が現存している。それに加え、券番は合併と独立を繰り返してきた。本研究では福岡市の花街を対象に1924年頃、1956年頃、1974年頃、現時点の2020年の4時点での料理屋を中心とした花街建築の分布とその変遷を明らかにする。主な結論としては、1)新に券番の位置を敷地単位で4か所発見したこと、2)調査した4時点の内、料理屋は1924年が最も多かったこと、3)料理屋の分布は昭和期にかけて博多から福岡まで広がったこと、4)ほとんどの料理屋は中洲及び博多に分布していることが挙げられる。