本稿では国営追悼・祈念施設が立地する津波復興祈念公園が建設された岩手県陸前高田市および宮城県石巻市で実施した居場所の変化に関する調査結果を報告する。復興市街地整備事業区域内の住宅(災害公営住宅、民間賃貸住宅、戸建住宅)を配布対象とし、居住移転を経験した被災者に質問紙調査を実施した。場所のアイデンティティを構成する三要素である「意味」、「設え」、「活動」、がどのように変化したのか、居場所の空間的変容に着目し、質問紙調査で得た生活圏や居場所の地域名や具体的な場所のデータを用いて、ジオコーディングを行い、GISを用いて空間的変容を可視化した。その結果、災害伝承や記憶の継承という意味が埋め込まれた津波復興祈念公園はかつて、住民にとっての居住地、地域の誇り、住民が訪れる場所であったが、震災を経た現在は被災者の居場所にはなっていない実態が明らかとなった。震災12年を経た東日本大震災の被災地で求められているのは、市民の居場所を取り戻す・作り出す主体的活動をサポートし、まちの中で広大なエリアをしめる復興祈念公園をまちにとって大切な場所として再生させ、市民の居場所にしていくことである。