2025 年 24 巻 2 号 p. 260-267
本研究では、我が国の低い食料自給率と都市部の人口集中問題に対応するため提唱された「自給型人口分散」の改善効果を試算している。分析では、人口減少を上回る農業・漁業従事者の減少や、農業における生産効率向上のトレンドを考慮したシナリオを設定した。都道府県別の食料需給バランスと耕作地利用の長期推計によると、地方部への人口分散を推進しつつ、安定した食料生産労働力を確保することで、2105年までに全国の食料自給率を90%まで引き上げ、耕作面積の減少を抑制することが可能であることが示された。これより、地方部への人口分散と職業構成への介入を総合的に実施する必要性が示唆された。