抄録
脳卒中片麻痺患者に見られる患側肩の痛みは, 上肢の機能回復やリハビリテーションの遂行において, 多大の悪影響を及ぼす。本稿では, この片麻痺肩の痛みの原因を文献的に再考するとともに, 痛みの発生予防と治療に対する臨床的示唆を述べる。痛みの原因は, 肩アライメントの異常, 肩軟部組織の障害, 腕神経叢麻痺などが関与していると考えられる。痛みの対策は, 予防が第一であり, 急性期からの正しい臥床肢位, 関節可動域訓練や日常生活動作時における患肢の適切な取り扱いが殊に大切である。痛みの原因, 増悪因子運動を中止するとともに, 異常アライメントの回復, 異常筋緊張の抑制, 異常運動パターンの正常化が治療の基本となる。