抄録
心理社会的問題を抱えた一症例を通して,治療構造論的観点から患者-治療者関係を捉えながら,理学療法アプローチを検討し考察を加えた。
外来訓練開始当初,症例は障害否認・自己否認していた。それに対しPTは,障害受容を強制するような教師的立場で接していた。このため,理学療法場面での双方の訓練意義が噛み合わず,ダブルバインド状況が一過性に存在していた。
そこで,PTは治療構造を認識し,患者を主体とした治療契約の確立と役割の調整を行なった。その結果,有効な治療関係が成立し,症例の主体的な運動学習やゴール設定・達成につながった。