抄録
本研究は背臥位での下肢挙上運動において股関節屈曲と骨盤後傾がどのように関与するのかを明らかにすることを目的とした。健常成人33名について,水準計及び自作の骨盤傾斜測定器を用いて水平面に対する骨盤の傾斜角度と大腿骨の挙上角度を膝関節屈曲を伴う股関節屈曲について測定した。実験計画は骨盤の固定の有無の2条件と自動及び他動関節可動域の2条件の反復測定2要因とした。大腿挙上角度と骨盤傾斜角度の差から正味の股関節可動域を算出した。その結果,自動運動及び他動運動ともに,正味の股関節可動域は骨盤を自由にした場合に固定した場合よりも大きいこと,自動可動域と他動可動域の差は骨盤を自由にした場合に固定した場合よりも小さいことが明らかとなった。このことは大腿挙上運動において骨盤の動きが正味の股関節可動域を決定する一要因であることを示している。