理学療法学
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原著
慢性閉塞性肺疾患患者のための上肢運動負荷試験の開発
高橋 哲也Jenkins SueStrauss GeoffWatson CarolLake Fiona
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1999 年 26 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

慢性閉塞性肺疾患(Chronic Airflow Limitation; CAL)患者は上肢運動によってしばしば息切れを訴える。しかし,CAL患者の上肢運動耐容能やさまざまな治療の効果を客観的に評価するための標準的な上肢運動負荷試験はない。本研究では,9人のCAL患者(平均年齢61.6歳,平均1秒率40.0%)を対象に,我々が独自に考案した非支持かつ動的な漸増運動負荷試験(Unsupported Incremental Upper Limb eXercise test; UIULX test)から得られる運動継続時間,呼吸循環反応,息切れ感,および主観的運動強度の再現性を検証した。症候限界性のUIULX testはプラスチック製の棒を一定の早さ(30rpm)で股関節の位置から各レベルへ持ち上げる運動で,1分間に15cmずつ運動の高さが漸増するプロトコールを使用した。最高運動高度レベルで運動を終了できた場合は棒の重さを1分毎に重くした。3回のUIULX testの結果,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient; ICC)は運動継続時間0.976,最大酸素摂取量0.954,最大二酸化炭素排出量0.954,最大分時換気量0.957,最大呼吸数0.950,最大1回換気量0.934,最大心拍数0.914と高い再現性が認められた。また,それら変数の増加パターン,さらに運動終了時の上肢筋の主観的運動強度,息切れ感にも高い再現性が認められた。よって,UIULX testはCAL患者で毎回同程度の呼吸循環反応や主観的運動強度を引き出すことができることが証明されたが,臨床応用にはUIULX testの妥当性の検討が必要である。

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© 1999 公益社団法人 日本理学療法士協会
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