理学療法学
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原著
骨格筋損傷後の再生単一筋線維におけるミオシン重鎖アイソフォームの発現
山田 崇史和田 正信中野 治郎堤 惠理子梶原 博毅
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2002 年 29 巻 1 号 p. 6-13

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抄録

阻血・圧迫による損傷後のラットヒラメ筋において,ミオシン重鎖(myosin heavy chain ; 以下,MHC)アイソフォームの分布を,全筋および単一筋線維において分析した。実験動物には,12週齢のウィスター系雄ラット30匹を用い,左後肢を実験群とし阻血・圧迫を行った。処置後3,7,14,21,35日に麻酔下でヒラメ筋を摘出し,MHCアイソフォームを電気泳動により分析した。結果,再生過程にあるヒラメ筋では,fast type MHCの割合が増加し,正常なヒラメ筋では認められないMHCIId,MHCIIbおよびneonatal MHCが出現した。処置後14日目の実験群において,採取した単一筋線維のうち,約60%が2種類以上のMHCアイソフォームを含む混在型筋線維であった。これら混在型筋線維のMHCアイソフォームの組み合わせには様々なものが認められたが,MHCIを含む線維は検出されなかった。一方,処置後35日目の実験群では,fast type MHCに加えMHCIを含む混在型筋線維が確認された。先行研究により,正常な筋において,ミオシンATPase染色でtype IICと同定される線維は,MHCIとMHCIIaを含んでいることが報告されている。本研究の結果から,再生過程にあるヒラメ筋の単一筋線維では,数種類のMHCアイソフォームが発現すること,また,再生筋で出現するtype IIC線維は,MHCアイソフォームの分布に関して正常なものとは異なっていることが示された。

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© 2002 公益社団法人 日本理学療法士協会
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