理学療法学
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29 巻, 1 号
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原著
  • ―マウスにおける実験的研究―
    中田 彩, 沖田 実, 中居 和代, 中野 治郎, 田崎 洋光, 大久 保篤史, 友利 幸之介, 吉村 俊朗
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし,その進行過程で持続的伸張運動を行い,拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け,実験群は後肢懸垂法に加え,両側足関節を最大底屈位で固定し,2週間飼育した。そして,実験群の内6匹は固定のみとし,21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお,実施時間は10分(n = 8),20分(n = 7),30分(n = 6)とした。結果,持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの,20分,30分では認められ,実施時間が長いほど効果的であった。しかし,30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず,今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。
  • 山田 崇史, 和田 正信, 中野 治郎, 堤 惠理子, 梶原 博毅
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    阻血・圧迫による損傷後のラットヒラメ筋において,ミオシン重鎖(myosin heavy chain ; 以下,MHC)アイソフォームの分布を,全筋および単一筋線維において分析した。実験動物には,12週齢のウィスター系雄ラット30匹を用い,左後肢を実験群とし阻血・圧迫を行った。処置後3,7,14,21,35日に麻酔下でヒラメ筋を摘出し,MHCアイソフォームを電気泳動により分析した。結果,再生過程にあるヒラメ筋では,fast type MHCの割合が増加し,正常なヒラメ筋では認められないMHCIId,MHCIIbおよびneonatal MHCが出現した。処置後14日目の実験群において,採取した単一筋線維のうち,約60%が2種類以上のMHCアイソフォームを含む混在型筋線維であった。これら混在型筋線維のMHCアイソフォームの組み合わせには様々なものが認められたが,MHCIを含む線維は検出されなかった。一方,処置後35日目の実験群では,fast type MHCに加えMHCIを含む混在型筋線維が確認された。先行研究により,正常な筋において,ミオシンATPase染色でtype IICと同定される線維は,MHCIとMHCIIaを含んでいることが報告されている。本研究の結果から,再生過程にあるヒラメ筋の単一筋線維では,数種類のMHCアイソフォームが発現すること,また,再生筋で出現するtype IIC線維は,MHCアイソフォームの分布に関して正常なものとは異なっていることが示された。
報告
  • 対馬 栄輝
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    歩行動作に関連させた股関節外転筋力の指標を得ることを目的として,股関節内旋・外旋位と股関節屈曲・伸展位を組み合わせた股関節外転筋力を測定し,それぞれの肢位における筋力値どうしを比較した。対象は健常な女性12名(平均年齢20.8 ± 0.6歳)である。最大等尺性股関節外転筋力測定における股関節の肢位を①屈曲外旋位,②屈曲中間位,③屈曲内旋位,④伸展外旋位,⑤伸展中間位,⑥伸展内旋位の6条件とした。被検者にはベッドに背臥位または腹臥位となってもらい,非測定肢と骨盤をベルトで固定した。各肢位で股関節0゜〜5゜外転位での外転筋力を測定した。その結果,屈曲外旋位の外転筋力は伸展外旋位以外のすべての外転筋力よりも有意に低く,伸展外旋位の外転筋力は伸展内旋・中間位よりも有意に低かった。原因として,股関節外旋位になると大転子は大腿骨頸部前捻によってさらに後方に移動して下肢の外転運動の方向と外転筋群の収縮方向が異なることと,逆に中間・内旋位では大転子は前方に移動して外転運動の方向と外転筋群の収縮方向がほぼ等しくなることを考えた。PNFの運動促通パターンでは伸展―外転―内旋と屈曲―外転―内旋パターンといった具合に,常に外転と内旋を組み合わせている。つまり,内旋を組み合わせた外転筋力は筋張力発揮に有利であったともいえる。
  • ―open kinetic chainとclosed kinetic chainの比較―
    由利 真
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    開放運動連鎖と閉鎖運動連鎖の運動肢位による筋持久力について比較した筋電図学的報告はない。そこで本報告は,開放運動連鎖での等尺性収縮と閉鎖運動連鎖での静的な姿勢保持において,運動肢位が大腿四頭筋の筋電図学的応答に及ぼす影響について検討することである。対象は健常成人男性10名で,導出筋は,内側広筋,大腿直筋,外側広筋とした。課題は等尺性収縮での膝関節伸展と静的な片脚立位をそれぞれ2分間保持させ,同時に筋電図を記録し,平均筋電位と中間パワー周波数を求めた。その結果,各課題開始初期の大腿四頭筋の筋活動は同程度であった。また,平均筋電位は片脚立位では有意な増加を示さなかったが,膝関節伸展の課題終期には各筋に有意な増加を認めた。中間パワー周波数は,膝関節伸展の各筋と片脚立位の大腿直筋に有意な減少を示す結果が得られた。これらの結果から,開放運動連鎖と閉鎖運動連鎖では大腿四頭筋の筋疲労様式が異なることを示唆した。
  • ―術後早期から筋力トレーニングを併用して―
    佐藤 滋, 荒川 直志, 鎌田 潤也, 上嶋 健治, 外久保 恵美, 斎藤 花織, 山崎 琢也, 斎藤 雅彦, 小林 昇, 川副 浩平, 平 ...
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    弁膜症患者の術後早期に筋力トレーニングを導入することによる運動能力への影響を検討した。対象は1999年2月から2000年1月までに待機的な開心術を施行し,術前から術後6ヶ月までの運動耐容能と下肢筋力を評価し得た36例である。対象を好気的運動療法のみの群(C群)と筋力トレーニングを併用した群(M群)に分けた。運動療法と筋力トレーニングは術後入院中に指導し,退院後には非監視型で行った。運動耐容能は心肺運動負荷試験で,下肢筋力はHand Held Dynamometer(Power Track IITM)で,術前から術後6ヶ月まで評価した。C群の筋力は61.5 ± 25.0から69.2 ± 24.6 Nmへ,M群の筋力は64.3 ± 19.4から81.7 ± 20.1 Nmへ有意に増加し,M群でより多く増加する傾向を示した。しかしpeak VO2はC群が15.8 ± 2.8から19.7 ± 4.4 ml/min/kg,M群が15.8 ± 4.8から20.0 ± 4.5 ml/min/kgで両群に有意な差を認めなかった。また心肺運動試験における運動時間もC群は288.8 ± 89.5から378.7 ± 128.2秒,M群は272.7 ± 57.2から365.2 ± 96.2秒と有意な差を認めなかった。これらの結果より,弁膜症の開心術後患者への下肢筋力トレーニングは運動耐容能の改善に影響を及ぼさないが,下肢筋力の強化には効果があることが示唆された。今後更に積極的かつ確実に施行できる運動療法および筋力トレーニングを検討する必要性があると考えられた。
短報
  • 西田 裕介, 久保 晃, 田中 淑子
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 1 号 p. 29-31
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    日本人の20歳代健常成人105名を対象に,前腕長および下腿長と身長との関係を検討し,各肢長と身長との関係を分析した。測定方法は,身長は,背臥位にて頭頂から足底までを計測した。前腕長は,端座位にて上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長①),肘頭から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長②)を計測した。下腿長は,背臥位にて膝関節外側裂隙から外果下端まで(以下 : 下腿長①),腓骨小頭から外果下端まで(以下 : 下腿長②)を計測した。統計学的手法には,各肢長の測定値と身長においてピアソンの相関係数の検定を用い,また,目的変数を身長,説明変数を前腕長②・下腿長②とする重回帰分析を行った。ピアソンの相関係数の結果より,全体および男性においては身長と高い相関関係を示した(男性 : r = 0.65〜0.85,全体 : r = 0.76〜0.86)。一方,女性では男性および全体と比較すると相関係数が低かった(r = 0.57〜0.70)。重回帰分析では,女性においても高い相関係数が得られ(男性 : r = 0.89,女性 : r = 0.81,全体 : r = 0.92),重回帰分析より求めた回帰式を用いることで,身長の推定が可能であると考えられる。このことは,身体に高度な変形を呈する症例や立位保持が困難で身長の測定が不可能な症例に対して,栄養状態や体格を把握した上で理学療法を実践する際に有意義であると思われる。
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