2002 年 29 巻 1 号 p. 29-31
日本人の20歳代健常成人105名を対象に,前腕長および下腿長と身長との関係を検討し,各肢長と身長との関係を分析した。測定方法は,身長は,背臥位にて頭頂から足底までを計測した。前腕長は,端座位にて上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長①),肘頭から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長②)を計測した。下腿長は,背臥位にて膝関節外側裂隙から外果下端まで(以下 : 下腿長①),腓骨小頭から外果下端まで(以下 : 下腿長②)を計測した。統計学的手法には,各肢長の測定値と身長においてピアソンの相関係数の検定を用い,また,目的変数を身長,説明変数を前腕長②・下腿長②とする重回帰分析を行った。ピアソンの相関係数の結果より,全体および男性においては身長と高い相関関係を示した(男性 : r = 0.65〜0.85,全体 : r = 0.76〜0.86)。一方,女性では男性および全体と比較すると相関係数が低かった(r = 0.57〜0.70)。重回帰分析では,女性においても高い相関係数が得られ(男性 : r = 0.89,女性 : r = 0.81,全体 : r = 0.92),重回帰分析より求めた回帰式を用いることで,身長の推定が可能であると考えられる。このことは,身体に高度な変形を呈する症例や立位保持が困難で身長の測定が不可能な症例に対して,栄養状態や体格を把握した上で理学療法を実践する際に有意義であると思われる。