理学療法学
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報告
開心術後患者の運動耐容能および筋力の変化
―術後早期から筋力トレーニングを併用して―
佐藤 滋荒川 直志鎌田 潤也上嶋 健治外久保 恵美斎藤 花織山崎 琢也斎藤 雅彦小林 昇川副 浩平平盛 勝彦
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2002 年 29 巻 1 号 p. 24-28

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抄録

弁膜症患者の術後早期に筋力トレーニングを導入することによる運動能力への影響を検討した。対象は1999年2月から2000年1月までに待機的な開心術を施行し,術前から術後6ヶ月までの運動耐容能と下肢筋力を評価し得た36例である。対象を好気的運動療法のみの群(C群)と筋力トレーニングを併用した群(M群)に分けた。運動療法と筋力トレーニングは術後入院中に指導し,退院後には非監視型で行った。運動耐容能は心肺運動負荷試験で,下肢筋力はHand Held Dynamometer(Power Track IITM)で,術前から術後6ヶ月まで評価した。C群の筋力は61.5 ± 25.0から69.2 ± 24.6 Nmへ,M群の筋力は64.3 ± 19.4から81.7 ± 20.1 Nmへ有意に増加し,M群でより多く増加する傾向を示した。しかしpeak VO2はC群が15.8 ± 2.8から19.7 ± 4.4 ml/min/kg,M群が15.8 ± 4.8から20.0 ± 4.5 ml/min/kgで両群に有意な差を認めなかった。また心肺運動試験における運動時間もC群は288.8 ± 89.5から378.7 ± 128.2秒,M群は272.7 ± 57.2から365.2 ± 96.2秒と有意な差を認めなかった。これらの結果より,弁膜症の開心術後患者への下肢筋力トレーニングは運動耐容能の改善に影響を及ぼさないが,下肢筋力の強化には効果があることが示唆された。今後更に積極的かつ確実に施行できる運動療法および筋力トレーニングを検討する必要性があると考えられた。

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© 2002 公益社団法人 日本理学療法士協会
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