理学療法学
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総説
脳卒中の長期機能予後についての文献的検討
:研究成績とその方法論
原田 和宏齋藤 圭介香川 幸次郎中嶋 和夫奈良 勲
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キーワード: 脳卒中, 長期機能予後, ADL
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2002 年 29 巻 6 号 p. 200-208

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抄録

脳卒中の研究は近年,機能回復だけではなく,回復期を過ぎた生存者の機能予後への関心が高まっている。本稿の目的は脳卒中の長期機能予後に関する研究成績とその方法論を把握することであった。一般化可能性の高い業績を集めるために,一定地域内で脳卒中を発症した住民を洩れなく対象とした前向き研究で,発症後1年以降の予後成績を有する資料を国内外から選定した。それらの成績をまとめた結果,発症後1年以降では生存者の3〜4割がADLに介助を要することが報告され,機能予後は対象集団全体における障害分布の特徴として理解されてきたことが明らかとなった。また,長期機能予後に関与する要因は発症時年齢,病型および合併症,発症初期の意識障害と運動機能障害,そして高次脳機能と知的能力障害に集約できた。一方,研究方法論に関してみると,ADL能力の時系列変化に基づく分析はなされていないことが明らかになった。予後要因の同定は最終観察時点のADL水準と時間的に先行する発症初期の諸要因との関連に基づくもので,各要因とADL予後との因果関係の真偽を推論する工夫はみられなかった。今後の研究課題は(1)ADL能力の時間的変化の様相に関する検討,(2)年齢など交絡因子をあらかじめ補正した解析モデルの検討,(3)リハビリテーション専門諸家が介入可能な予後予測因子の探索と考えられた。

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© 2002 公益社団法人 日本理学療法士協会
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