2004 年 31 巻 2 号 p. 113-118
本研究の目的は,術前の歩行能力と術後の深部静脈血栓症合併の関連性を明らかにすることにある。全人工膝関節置換術が施行された関節リウマテ患者34例を,術後7日目のD-dimer値が10μg/ml以上(D群),あるいは未満(N群)の2群に分けた。各群の術前における年齢,性別,術側,Steinbrocker分類によるstage,ならびにclass,体重,Functional Independence Measure,およびThe Timed up & GO testの8項目について,比較検討した。その結果,歩行能力を表すThe Timed up & Go testの所要時間のみに有意な差が認められ,術前においてD群はN群よりも時間を要していた。また,回帰分析の結果,The Timed up & Go testの所要時間は,Steinbrockerのstage,つまり疾病の進行度に依存していた。このことから,術前における歩行能力の低下は,術後深部静脈血栓症合併のリスクファクターであり,術前から歩行能力を改善していく必要性が示唆された。