理学療法学
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31 巻, 2 号
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報告
  • 矢野 秀典, 阿川 恵美, 吉水 信裕, 箱木 北斗
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    関節可動域(ROM)拡大を目的とした膝関節拘縮治療装置を関発した。下腿部自動運動の制御モードは,理学療法士(PT)による他動的膝関節屈曲ROM運動時のトルク-角度特性から3つの領域に分類し,移動領域・戻り領域には角度制御,加圧領域にはトルク制御を採用し,2つの制御モードを切り替えるハイブリッド制御方式とした。そして,6症例に対して,本装置を用いたPTの徒手による手動反復運動(徒手操作)と本装置による自動反復運動(機械制御)により,他動的膝関節屈曲ROM運動を隔日ごとに行った。反復回数は双方とも18回とし,1回目と反復18回目,徒手操作と機被制御の負荷トルク値,ROM,ペインスケールを測定開始時,開始後2週時,測定終了時の3時期について比較検討した。ROMは,すべての時期において,徒手操作・機械制御ともに1回目に比べ反復18回目で有意な増大が認められ,徒手操作・機械制御間に差異は認められなかった。負荷トルク値は,徒手操作,機械制御ともに経時的に増大しており,徒手操作では膝関節屈曲運動を繰り返す度に負荷トルク値が増大していく傾向を認めた。ペインスケールでは,測定開始時,測定終了時とも徒手操作・機被制御はほぼ同様の傾向を示した。この結果から,今回関発した膝関節拘縮治療装置の臨床効果は、PTの徒手による他動的ROM運動と比較して,同等の痛みで同等のROM拡大効果が期待できるものと思われ,一般臨床場面の使用についても意義のあるものと推察された。
  • 大森 圭貢, 横山 仁志, 青木 詩子, 笠原 美千代, 平木 幸冶, 山﨑 裕司, 笹 益雄
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,立ち上がり動作が障害される下肢筋力水準を明らかにすることを目的として,等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力の関連について検討した。対象は,運動器疾患を有さない65歳以上の高齢患者205名である。立ち上がり動作は,座面高40cm,30cm,20cmの台からの立ち上がりの可否を調査した。等尺性膝伸展筋力は,腰掛け座位で下腿を下垂させた肢位での筋力を徒手筋力測定器によって測定し,左右の脚の平均値を体重で除した値を百分率で表した。単変量解析によって,座面高40cm台からの立ち上がり不可能群,40cm可能群,30cm可能群,20cm可能群を比較した結果,年齢,身長,体重,Body Mass Index,等尺性膝伸展筋力に有意差を認めた。ロジスティック解析では,等尺性膝伸展筋力のみが,各座面高からの立ち上がりの可否に有意に影響を与えていた。等尺性膝伸展筋力が35%,45%,55%を上回った場合,それぞれ全ての者が40cm台,30cm台,20cm台からの立ち上がりが可能であった。一方,等尺性膝伸展筋力がこれらの値を下回る場合,筋力の低下に従って各座面高からの立ち上がり可能者の割合は減少した。等尺性膝伸展筋力が20%を下回った場合,40cm台,30cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。同様に等尺性膝伸展筋力が30%を下回った場合,20cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。これらのことは,高齢患者の等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力が密接に関連することを示しており,等尺性膝伸展筋力が一定水準を下回った場合,立ち上がり動作が困難になると考えられた。
  • ―全人工膝関節置換術が施行された関節リウマチ患者における検討―
    佐々木 賢太郎, 千田 益生, 石倉 隆, 太田 靖之, 森 剛士, 築山 尚司, 井上 一
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,術前の歩行能力と術後の深部静脈血栓症合併の関連性を明らかにすることにある。全人工膝関節置換術が施行された関節リウマテ患者34例を,術後7日目のD-dimer値が10μg/ml以上(D群),あるいは未満(N群)の2群に分けた。各群の術前における年齢,性別,術側,Steinbrocker分類によるstage,ならびにclass,体重,Functional Independence Measure,およびThe Timed up & GO testの8項目について,比較検討した。その結果,歩行能力を表すThe Timed up & Go testの所要時間のみに有意な差が認められ,術前においてD群はN群よりも時間を要していた。また,回帰分析の結果,The Timed up & Go testの所要時間は,Steinbrockerのstage,つまり疾病の進行度に依存していた。このことから,術前における歩行能力の低下は,術後深部静脈血栓症合併のリスクファクターであり,術前から歩行能力を改善していく必要性が示唆された。
  • 相馬 正之, 吉村 茂和, 寺沢 泉
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,若年者と中,高年者で遊脚相中における禄趾と床が最小となる最小拇趾・床間距離に至る時間と全遊脚相時間の関係および最小拇趾・床間距離が加齢の影響を受けるかどうか明らかにすることである。被検者は健常女性,若年群が20歳代30名,中高年群が50歳代10名,60歳代10名,70歳代10名とした。測定項目は基本的な歩行データと最小拇趾・床間距離,全遊脚相時間などとした。結果,若年群と比較すると高齢群では速度および歩幅,全遊脚相時間が有意に低下していた。また,最小拇趾・床間距離の値は,若年群,高齢群共に17.3〜18.2mmで差が認められなかった。全遊脚相時間も同様に0.37〜0.39sec,つま先離れから最小拇趾・床間距離に至るまでの時間が0.13〜0.15secに収まっていた。このことから,最小拇趾・床間距離は,快適歩行下で加齢の影響が認められず,高齢者においても保たれていることが明らかになった。高齢者では,加齢の影響により歩行能力の低下が明らかにされている。しかし,最小拇趾・床間距離において加齢の影響が認められなかったことは,高齢者が最小拇趾・床間距離の低下を個人の機能に見合った何らかの補償を行うことにより,最小拇趾・床間距離に差が認められなくなった可能性が推測された。
  • 島田 裕之, 太田 雅人, 矢部 規行, 大淵 修一, 古名 丈人, 小島 基永, 鈴木 隆雄
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    施設に入所する痴呆高齢者の転倒予防のために有益な評価方法を検討した。評価方法は身体機能検査としてPerformance-Oriented Mobility Assessment,知的機能検査はMini-Mental State Examination,GBS scale,行動評価として転倒関連行動測定表を用い,これら3側面から痴呆高齢者を評価した。過去6か月間の転倒状況から対象者を転倒群と非転倒群とに分類して検査項目を比較した結果,転倒関連行動測定表においてのみ群間に有意差が認められた。また,ロジスティック回帰分析でも転倒関連行動測定表のみが痴呆高齢者の転倒と有意に関連し,危険行動が1つ増すごとに転倒の危険性が2倍に高まることが示された。以上の結果から,痴呆高齢者の転倒予測のためには身体機能や知的機能検査のみではなく,行動を分析する必要性があり,危険行動の抽出によって転倒予防のための有効な対策を講じることのできる可能性が示唆された。
  • 阿部 千恵, 吉原 真紀, 真鍋 祐子, 村上 賢一, 藤澤 宏幸
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    今回我々は,片麻痺患者を対象(n = 33)に,端坐位において体幹側屈による速い側方への重心移動動作時の圧中心点(center of pressure ; COP)の変化量を測定し,体幹運動機能(頸・体幹・骨盤運動機能検査 ; N.T.P.)との関係を検討した。COP変化量の指標は,動作関始直後にみられる重心移動をしようとする方向と逆方向の振幅(A1)・COP最大移動速度(Vmax),重心移動距離(Dcog)とした。また,独歩可能な患者の10m最大歩行速度を計測し,COP変化量との関係を併せて検討した。結果,側方重心移動時のA1とN.T.P.ステージには有意な相関関係があり,N.T.P.ステージが良好であった患者のA1は麻痺側・非麻痺側への重心移動動作共に大きかった。これより,体幹運動機能が良好な片麻痺患者では速い動作を遂行する為の重力のモーメントを作り出すことが可能であると思われた。最大歩行速度とDcogの関係は麻痺側方向と非麻痺側方向共に有意な相関があり,A1においては非麻痺側へ重心移動を行った場合,相関が認められた。これより,歩行時の体幹機能は骨盤掌上の要素に比べ骨盤帯や下肢の支特性がより影響するものと思われた。本研究より,端坐位における側方重心移動動作時のCOPの解析は,体幹運動機能評価に有用であり歩行能力に関連していることが考えられた。
  • 岩下 篤司, 市橋 則明, 池添 冬芽, 大畑 光司
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 2004/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ペダリング動作においてトークリップの有無および回転数と負荷量の変化により,下肢筋の筋活動がどのように変化するかを明らかにすることである。対象は健常成人10名であった。測定筋は右下肢の大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半膜様筋,大腿二頭筋,腓腹筋内側頭,前脛骨筋とし,トークリップの有無,回転数40,60rpm,負荷量0.5,1.0,2.0kpの組み合わせ12設定で,自転車エルゴメーターを用いてペダリングを行ったときの筋電図を分析した。トークリップ装着により大腿直筋の筋活動量は増加し,半膜様筋と大腿二頭筋の膝屈曲相における筋活動量は減少した。回転数を増加させると大腿直筋および半膜様筋と大腿二頭筋の屈曲相を除き筋活動量は増加した。負荷量を増加させることにより,半膜様筋と大腿二頭筋を除く全ての筋において筋活動量は増加したが,0.5kpから1.0kpへ変化させても筋活動量は大きく増加しなかった。本研究の結果,ペダリング動作におけるトークリップの有無,回転数,負荷量の設定条件により,下肢筋の筋活動に及ぼす影響は各筋ごとに異なることが示唆された。
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