抄録
本研究では,温熱負荷によるラットヒラメ筋,長趾伸筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を検討した。7週齢のWistar系雄ラット21匹を対照群5匹と実験群16匹に分け,実験群の内5匹は温熱負荷のみとし(Heat詳),残りの11匹は1週間の後肢懸垂(HS)によって筋萎縮を惹起させ,HSのみの群(HS群)5匹とHSの過程で温熱を負荷する群(HS&Heat群)6匹に分けた。温熱負荷は麻酔下で毎日60分間(1週間),約42℃の温水に後肢を浸漬する方法で行った。HS&Heat群は両筋とも筋湿重量,相対重量比,タイプI,IIA線維の筋線維直径,ならびにHeat shock protein 70(Hsp70)含有量がHS群より有意に高値で,長趾伸筋のタイプIIB線維の筋線維直径はHS群との間に有意差を認めなかった。したがって,温熱負荷はタイプI,IIA線維の筋線維萎縮の進行抑制に効果があり,これはHsp70の発現が影響していると考えられる。