抄録
本研究の目的は,運動誘発性低酸素血症を認めない慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の定常運動負荷試験での運動持続時間に対する酸素投与の影響を検討することである。安静時動脈血酸素分圧が55torr以上で,かつ運動中に経皮的酸素飽和度が88%以下の低下を認めないCOPD患者10例に対して,定常運動負荷試験を通常空気下と4L/分の酸素投与下を無作為の順番で別の日に行った。通常空気下と酸素投与下の定常運動負荷試験の運動持続時間,呼吸困難感,下肢疲労感,最高心拍数に差を認めなかった。運動誘発性低酸素血症を認めないCOPD患者に対して,酸素投与は自覚症状を減少させたり,より長く高強度の運動療法を実施させる影響をもたないと考えられた。