理学療法学
Online ISSN : 2189-602X
Print ISSN : 0289-3770
ISSN-L : 0289-3770
原著
加齢による敏捷性機能の変化過程
―Ten Step Testを用いて―
宮本 謙三竹林 秀晃滝本 幸治井上 佳和宅間 豊宮本 祥子岡部 考生森岡 周八木 文雄
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 35 巻 2 号 p. 35-41

詳細
抄録
運動機能は加齢と共に低下するが,敏捷性機能の変化過程は十分明らかにされていない。我々は身体の敏捷性を全身を用いた動作速度に運動反応や運動の切り換えが内包されたものと定義し,Berg Balance Scaleを参考にした高齢者向けの簡便な敏捷性テスト「Ten Step Test(TST)」を考案した。そして,その信頼性と妥当性を検討した上で,加齢に伴う敏捷性機能の変化過程を明らかにした。対象は地域居住の健康成人828名(男性266名,女性562名)である。高齢者健診や基本健診,高齢者の運動教室などの参加者を中心に協力を得た。測定方法の信頼性の分析にはTSTを2回測定し,級内相関係数を求めた。妥当性の検証には「床からの立ち上がり時間」との単相関,および下肢筋力や立位バランス機能との偏相関を分析した。加齢過程の分析は直線回帰式から3次曲線回帰式までの回帰式への適合性(決定係数)から判断した。その結果,TSTは敏捷性のテストバッテリーとして十分な信頼性と妥当性が得られた。また,敏捷性機能の加齢的変化の特徴としては,50歳以降に急激に低下する傾向が認められた。加齢過程は3次回帰曲線への適合性がもっとも良好であったが,高齢層では一定の機能水準を維持している者を対象としたためフロアー効果を生じていると考えられ,本来は2次回帰曲線のような加速度的な低下を示すものと推察された。今後は高齢者を対象にした簡便な敏捷性テストとして,TSTを活用できるものと考えられる。
著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本理学療法士協会
次の記事
feedback
Top