2011 年 38 巻 2 号 p. 90-96
【目的】膝歩きは臨床で骨盤に対するアプローチとして使われることがあるものの,その動作特性の解析に関する報告は少ない。そのため本研究は骨盤に着目し,膝歩きを歩行と比較することで,膝歩きの運動特性を解析することを目的とした。【方法】対象の健常者24名(22 ± 2歳)に三次元動作解析装置用マーカーを貼付し,歩行と膝歩きの1歩行周期における骨盤可動域の平均変化量,重心移動を解析し,比較を行った。また,体幹・骨盤近位の7筋での立脚期,遊脚期における% MVC(% Maximum Voluntary Contraction:最大随意収縮に対する割合)を求め,歩行と膝歩きの比較を行った。【結果】骨盤前後傾・水平回旋可動域の平均変化量において,膝歩きの方が有意に高値を示した。筋活動量は立脚期,遊脚期において計測した多くの筋で歩行と比較し,膝歩きの方が有意に高値を示した。【結論】膝歩きは,骨盤の可動性・近位筋の活動性を高める運動療法として有用である可能性があると考えられた。