理学療法学
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平成23年度研究助成報告書
運動が認知機能低下を予防するメカニズムの探索
-有酸素運動が血中ノルアドレナリンと脳由来神経栄養因子に及ぼす影響の検討-
合田 明生福田 寛二上田 昌美本田 憲胤大城 昌平
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2013 年 40 巻 2 号 p. 102-103

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抄録
【目的】本研究は,理学療法における運動処方の効果を神経細胞レベルで検討した。近年,運動が神経細胞の分化,成熟,生存の維持を促進する神経成長因子ファミリーの一種である脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor:BDNF)を増加させ,認知機能を維持改善する可能性が示唆されている。ヒトにおける運動時のBDNF分泌増加のメカニズムの要因として,有酸素運動による交感神経活動亢進がBDNFの分泌を増加させることが仮説として考えられ,本研究ではその仮説検証を行った。【方法】健常成人男性10名を対象とした。対象者は,最高酸素摂取量の60%の中強度有酸素運動を30分間実施した。運動の前後で採血を実施し,末梢血液中のBDNF,ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。以上の結果から,運動前後のBDNF変化と交感神経活動の変化(NA)の関連性を検討した。【結果】中強度の有酸素運動介入によって,10名中5名では運動後に血清BDNFが増加したが,運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=0.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(r=0.38,p=0.27)には有意な相関は認められなかった。【結論】健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は,末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず,運動によるBDNF変化には,交感神経活動は関連しないことが示唆された。
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© 2013 公益社団法人 日本理学療法士協会
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