2025 年 52 巻 2 号 p. 79-85
【目的】本研究の目的は,気腫合併肺線維症患者に対する運動療法の多様性を要約すること,および研究ギャップを明らかにすることである。【方法】本スコーピングレビューは,2024年3月に9つのデータベースにて検索を行った。肺気腫と肺線維症の両方を有する参加者に運動療法を行った研究を対象に,研究の特徴,介入の特性,報告された介入後の結果について要約した。【結果】29件の研究が特定され,対照群と比較した介入研究はなく,ほとんどが学会抄録の形式で報告されていた。運動療法の内容は,全身持久力トレーニングおよび筋力トレーニングが低強度から実施されていた。介入後の結果について,呼吸機能や最低percutaneous oxygen saturation,自覚症状,身体機能,健康関連quality of lifeや身体活動性などが報告されていた。【結語】今回の結果から,気腫合併肺線維症患者に対する運動療法のエビデンスは不十分であることが明らかとなった。
気腫合併肺線維症(combined pulmonary fibrosis and emphysema:以下,CPFE)は,2005年にCottinらによって提唱された症候群であり,胸部computed tomography(以下,CT)画像検査で上肺野優位に肺気腫,下肺野優位にびまん性の肺線維症を伴う間質性病変を特徴としている1)。閉塞性換気障害が比較的軽度である一方,肺拡散能および労作時低酸素血症の程度が重度であり1),肺高血圧症(pulmonary hypertension:以下,PH)を高頻度に合併することから予後不良である2)。
現時点では,CPFE患者の診療ガイドラインは存在しないため,臨床管理や治療は確立されておらず,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:以下,COPD)や間質性肺疾患(interstitial lung disease:以下,ILD)に準じた治療が用いられている3)。
臨床現場において,COPDや肺線維症におけるCPFEの頻度は,12–38%であり4)5),リハビリテーションを提供する可能性は高い。呼吸リハビリテーションの中核である運動療法では,COPDやILDに対する有効性6)7)は報告されているが,CPFE患者に対しては不明確である。CPFEに関する研究は発展の余地がある分野であり,運動療法における介入の一助や今後の研究を更に促進させるために,スコーピングレビュー(scoping review:以下,ScR)の実施は適していると考える。本ScRの目的は,CPFE患者に対する運動療法の多様性を要約すること,および研究ギャップを明らかにすることである。
本研究はPreferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses Statement Extension for ScR (PRISMA-ScR)8)に基づいてプロトコルを作成し,Open Science Framework(https://osf.io/quj2n/)に登録した。本研究の選択基準は,以下の3つを設定した。(1)肺気腫と肺線維症の両方を有する18歳以上の参加者を含む研究,(2)運動療法を行った研究,(3)介入研究や観察研究,記述研究の研究デザインを含め,さらに総説や学会抄録,未発表データも含めることとした。また,介入環境や追跡期間,言語などは問わないものとした。運動療法の定義は全身持久力トレーニング(endurance training:以下,ET)または四肢筋力トレーニング(resistance training:以下,RT)からなる介入とした。
除外基準は,単独で行う神経筋電気刺激療法や日常生活動作練習,セルフマネジメント教育,薬物療法,栄養療法などの個別介入のみに焦点を当てた研究,介入後の結果が提示されていない研究,機器の検証に焦点を当てた研究とした。
1. 検索方法MEDLINE, Cochrane Central Register of Controlled Trials, Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature, Web of Science, Physiotherapy Evidence Database,医学中央雑誌,CiNii Articles, OpenGrey, The LILACSの9つのデータベースを用いて文献検索を行った。また,臨床試験登録サイトや主要な研究,関連するガイドラインに掲載されている参考文献を確認し,追加の文献を検索した。検索は,2024年3月3日に実施された。検索語は,“気腫合併肺線維症”,“運動療法”などの関連した主題見出しを用いて構築した(補遺1)。
2. 選択方法本研究の2名の著者が独立して,1次スクリーニングで表題と抄録から関連のない論文を除外した。2次スクリーニングでは,2名の著者が独立して本文を確認し,適格な研究を選択した。意見の相違があった場合は,議論や他の著者の関与により解決した。また,学会抄録のみの研究について,包含基準を満たすかどうか不明な場合は,当該研究の責任著者に問い合わせを行った。
3. データ抽出選択された研究のデータ抽出は,2名の著者により独立して行った。研究の基本情報を含む参加者の特徴,介入の内容,アウトカムなどの情報を抽出した。データに欠損がある場合は,2週間ごとに最大3回,当該研究の責任著者に問い合わせを行った。
4. データの統合と解析PRISMAフロー図8)を用いて,検索結果と研究の組み入れ過程を示した。また,抽出したデータを質的統合し,要約した内容を表で示した。
検索により568件の論文が特定された。2名の著者によるスクリーニングの一致率は,1次スクリーニングで86.1%,2次スクリーニングで86.2%であった。不一致は全て2名の著者間の議論により解決され,第3著者の関与は必要とされなかった。スクリーニングの結果,包含基準に合致する29件の研究9–37)が選定された(補遺2)。2次スクリーニングで除外された研究と理由は補遺3に示す。
2. 包含された研究の特徴包含された研究の特徴について,運動内容(頻度・強度・時間・種類)が具体的に報告されている研究を表1に示し,情報が不足している研究については補遺4に示す。1件10)を除く全ての研究が日本で実施され,単群前後比較の介入研究が1件20),観察研究が3件9)29)37),症例報告が24件10–19)21–28)30–33)35)36),総説が1件34)であり,学会抄録として報告された研究は24件11–20)22–31)33)35–37)もあった。研究参加者の81.7%が男性で,年齢層は65–93歳と高齢者が含まれていた。CPFEの診断基準としては,8件の研究9)10)13)15)17)21)32)37)が胸部CT画像を用いていたが,それ以外は診断基準が不明であった。酸素療法に関しては,未報告の3件を除く全ての研究で,低流量やリザーバーシステム,high-flow nasal cannulaが運動療法と併用されていた。併存疾患として,10件の研究9)10)16)17)20)21)23)24)32)33)でPHや肺がんが含まれていた。
| 著者,発行年,国 | 研究デザイン | 対象者数 | 男性(%) | 平均年齢 | CPFEの診断基準 | 重症度 | 酸素療法 | 状態 | 併存疾患 (PH or LC) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 石橋20) 2021日本 | 介入研究* | 30 | 18 (60.0) | 77.2 | 呼吸器内科医による診断。 | I–IV | 室内気–低流量システム 7 L/min | 安定期 | PH, LC |
| Tomioka9) 2016日本 | 観察研究 | 17 | 15 (88.2) | 76.5 | HRCTで両上葉の25%以上を占める肺気腫,および下肺野の線維化を伴う特発性びまん性肺疾患が認められた場合。 | — | あり 流量:— | 安定期 | PH |
| 山本37) 2011日本 | 観察研究* | 10 | 9 (90.0) | 72.7 | CT検査で線維化初見と気腫化初見を同時に認めた。 | — | あり 流量:— | 安定期 | — |
| 加藤11) 2023日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 60代 | — | IV | リザーバーシステム 5 L/min | 増悪期 | — |
| 藤原13) 2023日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 60代 | CT画像で上肺野優位の肺気腫像と下肺野優位の線維化像あり。 | — | HFNC 20 L/min | 増悪期 | なし |
| 野口15) 2022日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 79 | CT所見より上葉に気腫病変,肺底部に蜂巣肺,網状陰影を認めていた。 | — | 低流量システム 4 L/min | 安定期 | なし |
| 浅野16) 2022日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 69 | 呼吸器内科医による診断。 | III | 低流量システム 3 L/min | 安定期 | PH |
| 髙山17) 2021日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 80 | CTでは上肺野に気腫病変および下肺野に間質性陰影を認める。 | IV | リザーバーシステム 7 L/min | 安定期 | LC |
| 伊藤18) 2020日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 82 | 呼吸器内科医による診断。 | IV | 低流量システム 2 L/min | 安定期 | — |
| 山本21) 2020日本 | 症例報告 | 1 | 1 (100) | 93 | 慢性閉塞性肺疾患と診断されており,加療中にCT画像検査で両下葉に蜂巣肺を認め,CPFEを指摘された。 | — | 低流量システム 4 L/min | 増悪期 | PH |
| 衣田32) 2018日本 | 症例報告 | 1 | 1 (100) | 82 | CT検査では,左右の肺尖部に気腫病変,左右の肺底部にすりガラス様陰影と線維化病変を認めた。 | — | 低流量システム 6 L/min | 増悪期 | PH |
| 松江30) 2018日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 85 | — | — | あり 7 L/min | 増悪期 | — |
| 石橋33) 2016日本 | 症例報告* | 1 | 1 (100) | 74 | 呼吸器内科医による診断。 | IV | 低流量システム 5 L/min | 安定期 | PH |
| De Simone10) 2015イタリア | 症例報告 | 1 | 1 (100) | 65 | HRCTにより確認され,両上葉の遠心性肺気腫に加えて,末梢性の両側分布を有する小葉内間質肥厚および中隔肥厚の領域が認められた。 | III | 低流量システム 2.5 L/min | 増悪期 | PH |
| 杉野34) 2016日本 | 総説 | 2 | 2 (100) | 73.5 | — | I, IV | 室内気–低流量システム 2 L/min | 安定期 | なし |
*:学会抄録として報告された研究.
CPFE: combined pulmonary fibrosis and emphysema, PH: pulmonary hypertension, LC: lung cancer, HRCT: high-resolution computed tomography, HFNC: high-flow nasal cannula, —:記載なし.
介入の特性は表2,補遺5に示す。入院期間中に実施された研究では,40–150分,2–7回/週,2–12週の短期間・高頻度で実施されていた9)10)13)15–18)20)21)30)32)37)。一方,外来時期に実施された研究では,頻度は少ないが,60分,1回/週,12–16週の期間実施されていた33)34)。運動内容は,ETとRT,またはそのどちらかで構成されていた9–22)26)27)30)32–34)37)。ETではエルゴメーターやリカンベントバイクなどを使用し,低強度負荷で実施され,主に修正Borg scaleで調整されていた9–11)13)15)21)30)。5件の研究ではインターバルトレーニングや少量・頻回の運動が処方されていた9)13)16)21)32)。RTでは,自重や重錘,ダンベルなどが使用され,低強度から始め,10–15回,1–3セットの範囲で下肢を中心に実施されていた9)13)15)17)18)21)32–34)。
| 著者,発行年,国 | 環境 | 運動療法の内容 | その他 |
|---|---|---|---|
| 石橋20) 2021日本 | 入院 | 150分×7日/週×2–3週 RT: Karvonen法を用いてTHR 70%の強度。ダンベル,バンド,自重を用いて四肢に実施。 ET: Karvonen法を用いてTHR 70%の強度。リカンベンドバイクもしくはエルゴメーターで実施。 | ・なし |
| Tomioka9) 2016日本 | 入院 | 40分×5日/週×3週 RT: 1RM 60%負荷で四肢に10回×3セット実施。 ET: 修正Borg Scale <5,SpO2>89%を指標。エルゴメーターやITを実施。 | ・ストレッチ ・吸気筋トレーニング ・呼吸練習 ・セルフマネジメント教育 ・作業療法 |
| 山本37) 2011日本 | 入院 | 40分×5日/週×4週 心肺運動負荷試験から得られた結果をもとに酸素療法および流量の有無や目標となるSpO2,脈拍数を設定し運動療法を実施。 RT: — ET: — | ・呼吸練習 ・ADL練習 |
| 加藤11) 2023日本 | 入院 | —分×—日/週×5週 ET: 修正Borg Scale 3–4の強度。歩行やリカンベントエルゴを実施。 | ・呼吸法の指導,介助 ・動作練習 ・作業療法 |
| 藤原13) 2023日本 | 入院 | 40分×5日/週×3週 ET: 最大仕事量60%の強度。エルゴメーターを10分,1日2回実施。 | ・歩行練習 |
| 野口15) 2022日本 | 入院 | 40–60分×2日/週×2週 RT: 修正Borg scale呼吸困難3–4,下肢疲労感5–6,脈拍100–110 bpm,呼吸数30–35回/分の範囲内を指標。下肢に実施。 ET: 最大仕事量の40–60%の強度。エルゴメーターを実施。 | ・動作指導 ・作業療法 |
| 浅野16) 2022日本 | 入院 | 150分×7日/週×4週 ET: エルゴメーターを用いてITを20分間実施。Karvonen法を用いてTHR 70% 5分,THR 40%を2分で設定。 | ・動作指導 |
| 髙山17) 2021日本 | 入院 | 20–40分×2×—日/週×2週 RT: SpO2<90%を指標。低強度の負荷で下肢に実施。 | ・歩行練習 |
| 伊藤18) 2020日本 | 入院 | 150分×7日/週×—週 RT: Karvonen法を用いてTHR 60%の強度。四肢体幹筋筋力トレーニングを実施。 | ・呼吸練習 ・動作練習 ・酸素療法の流量調整 |
| 山本21) 2020日本 | 入院 | 60分×6日/週×3週 RT: ダンベル1.0 kg,重錘1.5 kg,自重を用いて四肢に15回×2セット実施。 ET: 20 wattでエルゴメーターもしくは修正Borg scale 3–4を目安に平地歩行を5分間1セットから開始した。運動強度増加の指標として,①本人の意欲,②呼吸数<36回/分,③SpO2>85–90%,④脈拍<100回/分,⑤修正Borg Scale <4を設定し,全て満たせばセット数を増加した(最大3セット)。 | ・ADL練習 ・セルフマネジメント教育 |
| 衣田32) 2018日本 | 入院 | 60分×2×7日/週×12週 RT: 1RM30%の強度。15回を下肢に実施。 ET: Karvonen法40%の強度で求めたTHR,Borg scale 13以下を指標。リカンベントバイクを用いてITを高強度30 watt 30秒,低強度20 watt 20秒で合計15分から開始した。IT中はSpO2を90%以上に保つように酸素流量を調節。強度を高強度40 watt 30秒,低強度30 watt 60秒まで漸増した。 | ・歩行練習 |
| 松江30) 2018日本 | 入院 | 60分×7日/週×7週 ET: 修正Borg scale 2を目安にCOPD体操を実施。 | ・歩行練習 |
| 石橋33) 2016日本 | 外来 | 60分×1日/週×16週 RT: Karvonen法を用いてTHR 40%の強度。自重を用いて下肢に実施。 | ・胸郭可動域練習 ・セルフマネジメント教育 |
| De Simone10) 2015イタリア | 入院 | 30分×2×5日/週×4週 ET: 最大心拍数の50–60%の強度。時速2.5 km,傾斜0%のトレッドミルを実施。10分の時点で修正Borg scaleが5以下の場合は運動負荷(速度および高度),運動時間を10%増加した。 | ・吸気筋トレーニング |
| 杉野34) 2016日本 | 外来 | 60分×1日/週×12週 RT: 重錘を使用し10–15回×1–3セットを四肢に実施。 ET: 6MWTより算出した歩行速度40–80%の強度。修正Borg scale 3–4を指標にトレッドミルまたはエルゴメーターを10–20分実施。 | ・呼吸練習 ・呼吸筋ストレッチ体操 ・セルフマネジメント教育 |
RT: resistance training, THR: target heart rate, ET: endurance training, RM: repetition maximum, IT: interval training, ADL: activities of daily living, COPD: chronic obstructive pulmonary disease, 6MWT: six-minute walk test, —:記載なし.
研究で報告された介入後の結果は表3,補遺6に示す。情報が得られた全ての研究9–24)28–34)37)で介入前後に評価が実施され,呼吸機能や最低percutaneous oxygen saturation(以下,SpO2),自覚症状,身体機能,健康関連quality of life(以下,QOL)や身体活動性などが報告されていた。10名以上の参加者を対象とした4件の研究のうち,2件9)20)が呼吸機能や自覚症状,身体機能,健康関連QOLにおいて統計学的に有意な改善を認めたが,残りの2件29)37)では,改善を認めなかった。1症例を対象とした研究では,呼吸機能以外の多くのアウトカムで改善が報告されていた10)11)13–15)17)19)21–23)30–33)。有害事象は4件の研究12)16)22)26)から報告されており,運動療法に関連するものは転倒による骨折のみであり,その他の詳細は不明であった。
| 著者,発行年,国 | 測定時期(週) | アウトカム | 有害事象 | 主要な結果 |
|---|---|---|---|---|
| 石橋20) 2021日本 | 2–3 | 最低SpO2,修正Borg scale,6MWD,膝伸展筋力,CAT,LINQ | なし | 介入前と比較して,最低SpO2,修正Borg scale,6MWD,膝伸展筋力(1.89 kgf)の改善を認めた(p<0.01)。 |
| Tomioka9) 2016日本 | 3 | FVC,FEV1,最低SpO2,修正Borg scale,6MWD,SF-36 | なし | 介入前と比較して,介入後のFEV1(0.10±0.18 L),SF-36身体機能(16点)に改善を認めた(p<0.05)。 |
| 山本37) 2011日本 | 4 | 最低SpO2,6MWD | なし | 介入前と比較して,最低SpO2(2%)の改善を認めた。 |
| 加藤11) 2023日本 | 5 | 膝伸展筋力(MMT),NRADL,FIM | — | 介入前と比較して,膝伸展筋力(3),NRADL(16点),FIM(47点)の改善を認めた。 |
| 藤原13) 2023日本 | 3 | 最低SpO2,修正Borg scale,6MWD,膝伸展筋力(MMT),握力,5CS,SMI | なし | 介入前と比較して,6MWD(60 m)の改善を認めた。 |
| 野口15) 2022日本 | 2 | 最低SpO2,最大仕事量,膝伸展筋力,6MWD,病棟内PA | — | 介入前と比較して,最大仕事量(20 w),膝伸展筋力(0.9 kgf/kg),6MWD(80 m),病棟内PA(2189歩/日)の改善を認めた。 |
| 浅野16) 2022日本 | 3 | 最低SpO2,連続歩行距離 | 発熱,下血 | 介入前と比較して,最低SpO2(10%)の改善を認めた。 |
| 髙山17) 2021日本 | 2 | 酸素流量,膝伸展筋力,NRADL | — | 介入前と比較して,NRADL(19点)の改善を認めた。 |
| 伊藤18) 2020日本 | — | 酸素流量,最低SpO2,呼吸数,修正Borg scale,6MWD,膝伸展筋力,握力,NRADL | なし | 介入前と比較して,酸素流量の減少(−3 L/min),最低SpO2(3%),呼吸数(−6回/分)の改善を認めた。 |
| 山本21) 2020日本 | 3 | 酸素流量,最低SpO2,修正MRC息切れスケール,修正Borg scale,6MWD,膝伸展筋力(MMT),握力,NRADL,CAT | なし | 介入前と比較して,酸素流量の減少(−2 L/min),最低SpO2(7%),6MWD(133 m),膝伸展筋力(1),握力(1.6 kg),NRADL(33点),CAT(−4点)の改善を認めた。 |
| 衣田32) 2018日本 | 8 | 酸素流量,最低SpO2,6MWD,膝伸展筋力,握力,FIM | なし | 介入前と比較して酸素流量の減少(−6L/min),最低SpO2(9%),6MWD(91.8 m),膝伸展筋力(0.20 kgf/kg),握力(9.2 kg),FIM(51点)の改善を認めた。 |
| 松江30) 2018日本 | 7 | 酸素流量,最低SpO2,修正Borg scale,呼吸数,膝伸展筋力,連続歩行距離 | — | 介入前と比較して,最低SpO2(1%),修正Borg scale(−2),連続歩行距離(10 m)の改善を認めた。 |
| 石橋33) 2016日本 | 16 | 修正MRC息切れスケール,膝伸展筋力,CAT | なし | 介入前と比較して,膝伸展筋力(17.2 kgf),CAT(−4点)の改善を認めた。 |
| De Simone10) 2015イタリア | 4 | FEV1/FVC,FVC,FEV1,DLCO,PAO2,PAP,酸素流量,VAS,修正Borg scale,PImax,PEmax,6MWD,SGRQ | なし | 介入前と比較して,酸素流量の減少(−1 L/min),PAP(10 mmHg),VAS(−3),修正Borg scale(−4),PImax(13 mmHg),PEmax(35 mmHg),6MWD(120 m),SGRQ症状・身体機能・影響・総合(−27.33・−23.11・−19.75・−12.32点)の改善を認めた。 |
| 杉野34) 2016日本 | 12 | 最低SpO2,%FVC,FEV1/FVC,%DLCO,修正MRC息切れスケール,修正Borg scale,6MWD,膝伸展筋力,PImax,SGRQ | なし | 介入前と比較して,修正MRC息切れスケール(−0.5),修正Borg scale(−0.5),6MWD(17.5m),膝伸展筋力(47.6Nm),SGRQ影響(−8.9点)の改善を認めた。 |
6MWD: six-minute walk distance, CAT: chronic obstructive pulmonary disease assessment test, LINQ: the lung information needs questionnaire, FVC: forced vital capacity, FEV1: forced expiratory volume in one second, SF-36: short form 36 quality of life, MMT: manual muscle test, NRADL: The Nagasaki university respiratory activities of daily living questionnaire, FIM: functional independence measure, 5CS: 5 chair stand, SMI: skeletal muscle mass index, PA: physical activity, DLCO: diffusing capacity for carbon monoxide, PAO2: partial pressure of arterial oxygen, PAP: pulmonary artery pressure, VAS: visual analogue scale, PImax:maximal inspiratory mouth pressures, PEmax:maximal expiratory mouth pressures, SGRQ: St. George’s respiratory questionnaire, —:記載なし.
CPFE患者に対する運動療法は,COPDやILD患者に実施される運動療法と同様の構成内容であり,かつ低強度から実施されていることが示された。ガイドラインなどでは,COPDやILD患者に対し,ETやRTを推奨している38)39)。本ScRに含まれた研究においても,実施された運動療法の構成内容は同様であった。CPFE患者に対する運動療法を推奨するような確かなエビデンスはない。そのため,COPDやILD患者に対する改善効果を期待して同じ内容で実施されていると考える。
CPFE患者に対する運動療法の効果や安全性は不明確であることが示された。CPFEに関連する研究の大きな限界として,CPFEの定義が不均一であることが挙げられている3)。本ScRで含まれた研究においても,29件中21件がCPFEの診断基準が不明確であった。また,対照群と比較された介入研究は1件もなく,運動療法の効果を述べることはできなかった。安全性に関して,本ScRで含まれた研究では,未報告を除くと4件のみ有害事象が確認された。運動療法との関連性まで報告された研究は1件のみであり,安全性に関する情報も十分ではなかった。
本ScRの結果からCPFE患者に対する運動療法関連のエビデンスは十分でない現状が示された。2022年にCPFEの研究定義が改めて提案されており3),今後は,統一された定義を用いた研究の推進と論文化が必要である。具体的には,CPFE患者に対する運動療法の効果を検証するために,多施設共同によるランダム化比較試験の実施が求められる。CPFE患者に著明な労作時低酸素血症の対応として酸素療法やインターバルトレーニングが挙げられ,呼吸困難やSpO2の低下に対し改善を認めている40)41)。したがって,CPFE患者もILD患者同様に労作時低酸素血症や呼吸困難の軽減を図るような酸素療法やインターバルトレーニングなどの適応を検討する必要がある。これに加え,酸素療法やインターバルトレーニングの適応条件などを明確にするため,まずはパイロット介入試験を実施し,その後,大規模な検証研究へと進展させることで,運動療法の戦略を確立することが望まれる。また,運動療法の効果を判定するアウトカムについては,COPDやILD患者で使用されているアウトカムがCPFE患者に適用可能であるかを検討する必要がある。これには,観察研究やデルファイ法などで専門家の意見を集約し,CPFE患者に適したアウトカムを特定することが求められる。これらの課題に取り組むことで,CPFE患者に対する運動療法のエビデンスの構築が促進され,更なる研究の発展と臨床応用への貢献が期待される。
本ScRの強みは,CPFE患者に対する運動療法の多様性と研究ギャップについて要約した点にある。医療者にとっては,本ScRで明らかとなった介入内容などを参考に介入の一助として情報を提供できるものと考える。研究者にとっては,今回の結果から未知の情報が多いことが明らかとなったため,更なるエビデンスの構築を図っていくことの必要性を示すことができた。
本ScRにはいくつかの限界点がある。第1に,含まれた研究に症例報告が多く,不足している情報が多かった点が挙げられる。ScRの目的の1つにエビデンスの範囲の特定8)があるとされているが,本ScRでは灰色文献のデータベースを使用し網羅的な検索を行った。学会抄録などの限られた情報も含めることで現時点でのエビデンスの範囲について示すことができた。しかしながら,選択バイアスの可能性が高いという点42)を考慮し,結果の解釈に注意が必要である。第2に,各研究の質の評価は行っていない点が挙げられる。本ScRの目的はプロトコルで事前に各研究の質を評価することを規定しておらず,また,今回包含された研究は,ほとんどが学会抄録として報告されていたため評価自体が難しかったかもしれない。
本ScRではCPFE患者に対する運動療法の多様性の要約および研究ギャップについて明らかにすることを目的とした。CPFEに対する運動療法はCOPDやILD患者に実施される構成内容のものが多く,かつ低強度から実施されていたが,効果や安全性については不明確であった。今回の結果から,CPFE患者に対する運動療法のエビデンスは不十分であったため,更なるエビデンスの構築を図っていくことが必要であることが示された。
本ScRのデータ問い合わせにご協力いただいた研究著者の皆様に深謝いたします。
開示すべき利益相反はない。