理学療法学
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研究論文(原著)
肥満度・筋力・柔軟性と運動機能不全との関連
—小学生を対象とした横断研究—
長田 悠路 鴬 春夫近藤 慶承中宿 伸哉柳澤 幸夫平島 賢一芥川 知彰後藤 強大西 康平笹山 明美廣瀬 良平澁谷 光敬篠原 明宏
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ジャーナル オープンアクセス HTML

2026 年 53 巻 1 号 p. 10-17

詳細
要旨

【目的】小学生の間で身体活動の減少や遊び行動の変化が近年観察されている。そこで本研究では小学生における身体機能の個人差と,運動機能不全(しゃがみ込み困難,前屈・後屈時痛み,四肢の痛みや動かし難さ,姿勢の非対称性)との関連因子を明らかにすることを目的とした。【方法】私立小学校1~6年生で,2025年に運動器検診を受けた308人を対象とし,肥満度,握力,立位体前屈,反復横跳びを評価した。これらと運動機能不全指標との関連をロジスティック回帰分析により検討した。【結果】肥満度(オッズ比2.45[1.61–3.73])はしゃがみ込み困難と関連し,月齢(オッズ比0.54[0.33–0.90]),性別(オッズ比0.19[0.05–0.65])が後屈時痛みと関連していた。【結論】肥満度がしゃがみ込み可否や立位姿勢の左右差といった運動機能不全と関連する可能性が示唆された。これらの関連因子を踏まえ,運動器検診後の事後措置のあり方について検討する必要がある。

Abstract

Objective: A decline in physical activity and changes in play behaviors have been observed in recent years among elementary school children. This study aimed to clarify the associations between individual differences in physical functions and musculoskeletal dysfunctions, including squatting difficulty, pain during trunk flexion and extension, limb pain or movement difficulty, and postural asymmetry, in elementary school children.

Methods: In total, 308 students in grades 1–6 at a private elementary school in Japan who underwent musculoskeletal screening in 2025 were included in this study. Degree of obesity, grip strength, standing forward flexion, and side-step agility were the physical indicators assessed in this study. Squatting difficulty, pain during trunk flexion and extension, limb pain, and postural asymmetry were also recorded. Logistic regression analysis was performed to determine the associations between physical functions and musculoskeletal dysfunctions.

Results: Notably, degree of obesity (odds ratio: 2.45 [1.61–3.73]) was associated with squatting difficulty, and age in months (odds ratio: 0.54 [0.33–0.90]) and sex (odds ratio: 0.19 [0.05–0.65]) were associated with pain during trunk extension.

Conclusion: Overall, these findings suggest that obesity, are associated with motor dysfunctions, necessitating careful consideration and selection of follow-up interventions after musculoskeletal health screening.

はじめに

現代の小学生は,運動習慣の変化や生活環境の多様化により,身体機能や姿勢に多様な問題を抱えている。具体的には,クラブチーム等に所属して特定のスポーツを過度に行うことで運動機能障害を呈する児童と,動画視聴等のスクリーンタイムの増加に伴い運動不足となる児童に二極化する傾向があるとされている13。これらはいずれも運動機能に影響を及ぼす可能性があり,学校現場においても,関節の運動時痛や姿勢異常,運動器症候群(ロコモティブシンドローム:以下,ロコモ)の兆候を示す児童が増加している211。このような背景を踏まえ,2015年からは小・中・高等学校における運動器検診が導入され,脊柱側弯症や腰痛の有無,片脚立位,しゃがみ込み可否,バンザイ動作時の肩の可動性,四肢の疼痛の有無といった項目が評価されるようになった12。しかし,従来の内科検診に加えて運動器検診を行うことで診察時間が倍増するため,学校医の負担増が課題となっている9。このような背景のなか2024年にスクールトレーナー制度が創設され,専門資格を有する理学療法士が学校保健の現場に参入し始めた。これにより,学校医や教職員と理学療法士が協働することで,児童の運動器疾患や機能不全状態が予防・軽減されることが期待されている3

学童期の身体機能は,その後の運動発達や健康状態に大きな影響を与える1314。なかでも,しゃがみ込み困難や四肢の痛み,肩の高さ等の姿勢の非対称性は,成長過程における機能的問題の表れと考えられる1517。これらの症状と肥満度・筋力・柔軟性等の身体的特徴との関連性については,現時点では十分に明らかにされていない。特に肥満に関しては,運動不足によって体重が増えるわけではなく,肥満傾向が運動能力の発達を妨げるという因果関係が報告されており,子どものロコモに適切に対処しないことにより,将来的な成人期のロコモやメタボリックシンドロームにつながることが懸念されている313。先行研究では,肥満児が正常体重児と比較してバランス能力や柔軟性が低く,転倒リスクが高いことが報告されている18。しかし,小学生における身体機能を示す多様な因子と,運動機能不全との関連を包括的に分析した研究は限られている。本研究では,複数の身体機能と運動機能不全の関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討することで,より実態に即した理解が可能になると考えている。

本研究の目的は,小学生における身体機能の個人差に着目し,痛みや姿勢の非対称性,動作制限等の運動機能不全との関連因子を明らかにすることである。特に,肥満度や筋力,柔軟性,敏捷性等の身体機能が,しゃがみ込みの可否や四肢の痛み,姿勢の非対称性といった運動機能不全指標に与える影響を検討し,現代の発育段階における特徴的な身体機能因子の把握を試みる。本研究の仮説は,現代の小学生には肥満と痩身の二極化がみられ,肥満傾向の児童では柔軟性や可動性の低下,痩身傾向の児童では筋力やバランス機能の低下,姿勢の非対称性といった身体機能不全と関連している可能性があるというものである。

対象および方法

1. 対象

本研究は2025年に運動器検診を実施した徳島県内の私立小学校(1校)1~6年生の全児童の検診データをもとに解析を行った。本研究は徳島文理大学の倫理審査委員会において承認(R7-10)を得て実施した。なお,本研究で使用するデータは,学校保健安全法に基づき義務化されている運動器検診において説明と同意のもと計測されたものである。その後,これらのデータを後方視的に使用するにあたり,改めて児童およびその保護者に対して書面で説明を行い,データの二次利用に同意しない場合には,今後の運動器検診やその結果受領に一切不利益が生じないことを説明した。さらに,配布資料に記載したQRコードから個別にデータ使用の拒否を申し出る機会を設けた。その結果,該当児童314名のうち,長期欠席により検診を受けられなかった児童やデータ使用の拒否があった6名を除いた308名を対象として解析を行った。

2. 方法

運動器検診は学校医の指導のもと,理学療法士の資格を持つ大学教員(12名)を中心として実施した。担当する評価項目については事前にレクチャーを受け,評価方法の統一を図った。計測場所は小学校の体育館とした。児童は体操着と体育館シューズを着用して計測を行い,足趾把持力の測定時のみ裸足で実施した。評価項目は①身体機能を示す個人因子(独立変数)と②運動機能不全を示す指標(従属変数)に分類して実施した。独立変数には,肥満度,利き手握力(以下,握力),足趾把持力,反復横跳び点数,指床間距離,月齢,性別を設定した。従属変数には,しゃがみ込みの可否,片足立ちの可否,姿勢の非対称性,前・後屈時の脊柱の痛み,四肢の運動時痛や動かし難さを設定した。これらの項目は「児童生徒等の健康診断マニュアル 平成27年度改訂」における「脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無並びに四肢の状態」の評価項目に準拠し,運動機能不全を示す指標として調査した19。一方で,筋力,柔軟性,敏捷性といった児童の身体機能を示す個人因子は同マニュアルに含まれておらず,これらは先行研究に基づく方法により独自に評価を行った。

1)肥満度

日本学校保健会が示す計算式に準じ,実測体重から身長別標準体重を引いたものを身長別標準体重で除して得られる割合から算出した19。身長別標準体重は文部科学省が示す性別・年齢別に定義された値を使用している。肥満度が20%以上の者は肥満傾向児,−20%以下の児童は痩身傾向児と定義されている。

2)握力:上肢筋力のスクリーニング

デジタル握力計Grip-D(竹井機器製)を用いて計測した。5 kg未満で計測困難な児童にはGrip-A(竹井機器製)を使用した。測定方法は文部科学省の新体力テスト実施要項に準じ,握力計の数値面が外側を向くように設定し,第2指の近位指節間関節が直角になるよう調整した20。児童は直立姿勢で上肢を自然下垂し,握力計が身体や衣服に接触しないよう配慮して,利き手1回分の値を採用した。

3)足趾把持力:下肢筋力のスクリーニング

足指筋力測定器II(竹井機器製)を用いて評価した21。児童を股関節・膝関節90度,足関節0度の座位姿勢とし,把持バーを第1中足骨頭の位置に合わせたうえで,利き足で2回測定し,最大値を分析に用いた。

4)反復横跳び点数:敏捷性のスクリーニング

新体力テスト実施要項に準じて評価した。中央ラインから左右1 mの地点に引かれたラインを踏むか越えた後,中央に戻る動作を行い,各ラインを踏むか超えるごとに1点としてカウントし,20秒間での点数を計測した。ラインを踏まなかった・越えなかった場合はカウントせず,また,ジャンプは禁止とした。疲労を考慮し1回のみの実施とした。

5)指床間距離:柔軟性のスクリーニング

デジタル前屈計Flexion-D(竹井機器製)を用い,先行研究に準じて計測した14。児童はボックス上に立ち,膝を伸ばしたまま前屈し,指先でディスプレイを最大限押し下げた。測定単位は1 mmとし,足底面まで指が届かない場合はマイナスの値,足底面を超えてさらに指を下方へ伸ばすことができた場合はプラスの値で示すものとした。測定回数は1回とした。

6)しゃがみ込み:柔軟性のスクリーニング

手順は,①閉脚立位をとる,②上肢を前方水平に伸ばす(手掌は下向き),③臀部が踵につくまで深くしゃがむ,の手順とした。しゃがみ込み中に踵が浮いたり,後方に転倒したりした場合を「不可」とした。

7)片足立ち:バランスのスクリーニング

手順は,①体側に上肢をつけて直立する,②片膝を約90度屈曲して股関節を90度屈曲する,③その姿勢を5秒以上保持する,という流れで評価した。軸足の移動や上肢の動き,非軸足の接地が認められた場合は「不可」と判定した。練習1回の後,本計測を行い,軸足は児童が選択可能とした。

8)姿勢の非対称性:側弯症のスクリーニング

前後から各1名の検査者が観察し,双方の意見が一致した場合にのみ「左右差あり」と判定した。検査項目は立位時の肩峰の左右差(立位姿勢左右差),前屈時の肋骨隆起の左右差(前屈時左右差)とした。

9)脊柱の痛み:腰椎分離症のスクリーニング

立位で肩幅に足を開いた状態から,最大限の前屈・後屈を実施し,それぞれの痛みの有無を聴取した。検査項目は,前屈時痛み,後屈時痛みとして分けて評価した。

10)四肢の運動時痛や動きの悪さ:粗大な関節可動域(Range of Motion:以下,ROM)のスクリーニング

上肢挙上(バンザイ),肘の屈伸,しゃがみ込みを実施し,動作中の四肢の痛み,動きにくさの有無を聴取した。

3. 分析方法

運動機能不全の指標(しゃがみ込み可否,片足立ち可否,立位姿勢左右差,前屈時左右差,前屈時痛み,後屈時痛み,四肢の運動時痛や動きの悪さ)を従属変数として,それぞれに対してロジスティック回帰分析を行った。独立変数として身体機能を示す個人因子(肥満度,握力,足趾把持力,反復横跳び点数,指床間距離,月齢,性別)を投入した。従属変数の符号はすべて,「1:不可・異常あり,0:可・問題なし」とした。なお,数値型の独立変数(肥満度,握力,足趾把持力,反復横跳び点数,指床間距離,月齢)については,単位やスケールの差異による影響を排除するために,解析前にZスコア標準化を行った。

まず各従属変数に対して単変量解析を行い,有意水準(p<0.1)を満たす因子を抽出後,該当因子を用いて多変量ロジスティック回帰分析を行った。多変量ロジスティック回帰分析に用いる変数は,単変量解析の結果と統計的多重共線性の観点から選定した。まず,各変数間のPearsonの相関係数を算出し,|r|>0.80の高い相関が認められた変数群については,多重共線性の回避を目的として,さらに各変数の分散拡大係数(Variance Inflation Factor:以下,VIF)を算出し,相関のある変数のうちVIFがより高い変数を除外した。そのうえで,残存する候補変数すべてについてVIFを再度評価し,最終的にVIF>10を示す変数は解析から除外した。また,解析に用いる運動機能不全の指標において該当者数に対して変数が多くなりすぎないように,Events Per Variable(EPV)≧10を目安として多変量解析に投入する変数を制限した。変数の制限方法は,単変量解析のオッズ比(Odds Ratio:以下,OR)や臨床的妥当性を考慮して決定した。

各分析において,OR,95%信頼区間(Confidence Interval:以下,CI),p値を算出し,有意水準は5%とした。また,モデルの判別精度評価のためにReceiver Operating Characteristic Curve(ROC曲線)を描き,Area Under the Curve(以下,AUC)を算出した。統計処理はPython(バージョン3.12.4)を用いて実施した。

さらに,学年による影響を検討するため,対象を「低学年(1~3年生)」および「高学年(4~6年生)」に分けたサブ解析も実施した。全体解析と同様のロジスティック回帰分析をそれぞれの群に対して行い,全体傾向との一致度を検証した。

結果

対象児童の各身体機能を示す個人因子,および運動機能不全を示す指標の基本属性を表1に示す。肥満度が肥満傾向(肥満度20%以上)を示す児童が35人(11.4%),痩身(肥満度−20%以下)が2人(0.6%)であった。立位または前屈時の姿勢の非対称性を有している児童は88名で全体の28.6%であった。肥満度が正常値(−20~20%)であり,かつ上記の症状が無く,しゃがみ込みや片足立ちができた児童は170名で全体の55.2%であった。

表1 対象児童の基本属性

因子
身体機能を示す個人因子
身長(cm),平均値±SD132.4±12.0
体重(kg),平均値±SD30.7±9.1
肥満度(%),平均値±SD3.0±13.2
握力(kg),平均値±SD12.4±4.7
足趾把持力(kg),平均値±SD11.4±4.5
反復横跳び(点),平均値±SD29.3±7.2
指床間距離(cm),平均値±SD4.5±6.7
学年,平均値±SD3.7±1.7
月齢(月),平均値±SD110.5±21.0
性別(人),男児/女児(男児割合)165/143(53.6)
運動機能不全を示す指標
しゃがみ込み可否(人),不可/可(不可割合)17/291(5.5)
片脚立ち可否(人),不可/可(不可割合)8/300(2.6)
立位姿勢左右差(人),有/無(有割合)66/242(21.4)
前屈時左右差(人),有/無(有割合)36/272(11.7)
前屈時痛み(人),有/無(有割合)11/297(3.6)
後屈時痛み(人),有/無(有割合)20/288(6.5)
四肢の運動時痛や動かし難さ(人),有/無(有割合)37/271(12.0)

SD:標準偏差.

しゃがみ込み可否,片足立ち可否,前屈時痛みについてはサンプル数が少ないため,多変量解析は実施しなかった。しゃがみ込み可否に関する単変量解析では肥満度,指床間距離,月齢が有意な関連因子として抽出された(表2)。このうち最も高いORを示した肥満度を用いてROC解析を行ったところ,AUCは0.74であり,しゃがみ込み可否を判別するうえで良好な識別能を示した(図1)。しゃがみ込みができなかった児童の肥満度は平均17.3±19.9%で,肥満傾向児(肥満度+20%以上)は8名(47%)と約半数を占めていた。

表2 しゃがみ込み可否を従属変数としたロジスティック回帰分析(可:n=291,不可:n=17)

単変量解析
説明変数OR95%CI
(下限–上限)
p値
肥満度2.451.61–3.73<0.001
握力1.410.89–2.220.142
足趾把持力1.611.00–2.610.052
反復横跳び0.880.53–1.480.635
指床間距離0.530.32–0.870.013
月齢1.751.00–3.050.048
性別1.030.39–2.740.957

OR: Odds Ratio(オッズ比),CI: Confidence Interval(信頼区間).

図1 しゃがみこみ可否に関するロジスティック回帰モデルのROC曲線

AUC: Area Under the Curve, ROC: Receiver Operating Characteristic.

片足立ち可否に関する単変量解析では,握力,足趾把持力,反復横跳び点数に有意な関連が認められた。そのうち最も高いORを示した握力についてROC解析を行ったところAUCは0.79であった。片足立ちができなかった児童は1~6年生の幅広い学年に分布していたが,その88%が男児であり,握力は平均8.3±2.2 kgと低値を示した。

前屈時痛みについては単変量解析で有意な関連因子はなかった。後屈時痛みに関しては,月齢,性別に加え指床間距離が単変量解析で有意傾向を示した(表3)。サンプル数が限られるため,ORの大きさやp値の低さから月齢と性別を多変量解析に投入した結果,両因子が有意な関連因子であることが示された。痛みを訴えた児童は女児3名,男児17名で,学年別では1年生が10名(全体の50%)を占めていた。月齢と性別を用いたROC解析ではAUCは0.75で妥当な識別能が示された(図2)。

表3 後屈時痛みの有無を従属変数としたロジスティック回帰分析(無:n=288,有:n=20)

単変量解析多変量解析
説明変数OR95%CI
(下限–上限)
P値OR95%CI
(下限–上限)
P値
肥満度1.380.92–2.070.119
握力0.900.54–1.480.673
足趾把持力0.680.40–1.160.159
反復横跳び0.730.45–1.170.191
指床間距離0.650.41–1.030.066
月齢0.540.33–0.900.0190.480.28–0.830.008
性別0.190.05–0.650.0080.230.07–0.860.029

OR: Odds Ratio(オッズ比),CI: Confidence Interval(信頼区間).

図2 後屈時痛みの有無に関する多変量ロジスティック回帰モデルのROC曲線

AUC: Area Under the Curve, ROC: Receiver Operating Characteristic.

立位姿勢左右差に関しては,肥満度(OR:0.68, 95%CI:0.50–0.93, p=0.016),握力(OR:1.27, 95%CI:0.96–1.67, p=0.096),足趾把持力(OR:1.31, 95%CI:0.99–1.74, p=0.061)が単変量解析で有意傾向を示した。多変量解析の結果では肥満度のみが有意な関連因子として抽出され,肥満度の低い児童で姿勢の非対称性がある傾向を示した(AUC:0.60)。前屈時左右差は足趾把持力と月齢が単変量解析で有意な関連があったが,多変量解析では有意ではなかった。

四肢の運動時痛や動かしにくさに関しては,肥満度(OR:1.31, 95%CI:0.96–1.81, p=0.093)と反復横跳び点数(OR:0.68, 95%CI:0.47–0.98, p=0.038)が単変量解析で関連因子として抽出された。反復横跳び点数が低い児童で四肢の痛みや動かしにくさを訴える傾向がみられたが,多変量解析では有意な因子は抽出されず,モデルのAUCは0.59と限定的な識別能であった。

因子間の相関係数を確認した結果,肥満度と敏捷性(r=−0.10),肥満度と柔軟性(r=0.02)の相関は弱く,強い関連性は認められなかった。

学年別(低学年・高学年)のサブ解析では,立位姿勢左右差について,低学年群では立位体前屈(p=0.018)のみが単変量解析で有意であったのに対し,高学年群では全体解析と同様に肥満度(p=0.029)と足趾把持力(p=0.046)が有意な関連因子として抽出され,多変量解析においても有意な因子として残った(AUC:0.64)。後屈時痛みでは,低学年群で月齢(p<0.001)と性別(p=0.038)が有意な関連因子として示されたが,高学年群では有意な因子は抽出されなかった。しゃがみ込み可否については,低学年群では肥満度(p=0.026)と足趾把持力(p=0.031)が,高学年群では肥満度(p<0.001)と反復横跳び点数(p=0.039)が単変量解析で有意な関連因子として抽出された。

考察

本研究に参加した児童の平均身長や体重,肥満度等の基本属性は,文部科学省による2023年度学校保健統計調査の全国平均値とおおむね同程度であった22。ただし,痩身傾向を示す児童の割合は本研究では0.6%と全国平均(1.5%)と比較して低かった。また,片足立ちができない児童の割合も千葉県で行われた調査と比較して少なかった(本研究:2.6%,千葉県:4.8%)7。これらの違いには,私立小学校という生活環境や,保護者の社会的地位が影響している可能性がある。保護者の社会的地位が高い児童は栄養状態と運動機能が良好である傾向が報告されている23。また私立学校の児童は公立学校児童と比較して肥満児童が少ないことやその一方で,塾通い等によって睡眠時間や運動機会が少ないことも指摘されている1

本研究では,これら小学生の身体機能および動作・痛み・姿勢の非対称性に関する情報をもとに,多様な運動機能不全とその関連因子を横断的に検討した。その結果明らかとなったのは,肥満度が運動機能不全と関連する可能性があるという点である。柔軟性(指床間距離),瞬発系の運動能力(反復横跳び点数)といった要素は単変量解析では運動機能不全との関連が示されたが,多変量解析では有意ではなかった。これらの指標と肥満度との相関は低く,交絡の影響は少ないと考えられる。したがって,多変量解析においてこれらの因子が独立した予測因子として残らなかったのは,個体差や測定誤差の影響を受けやすく,説明力が相対的に弱かったためと推察される。

しゃがみ込み動作に関する単変量解析では,肥満度が有意な関連因子として示され,AUCからも良好な識別能が確認された。先行研究でも体重過多がしゃがみ込み動作等の運動機能低下と関連することが報告されており1824,しゃがめない児童は,四肢・体幹の脂肪率が高く,脂肪が膝・股関節の屈曲を妨げてしゃがみ動作を困難にする可能性が指摘されている24。また,肥満者は股関節屈曲60度以上の深くしゃがんだ姿勢で足・股関節モーメントが有意に増大すると報告されている25。そのため,肥満者は深くしゃがむ姿勢を避ける傾向がある26。さらに,肥満は足関節背屈ROM低下と関連するという報告もあり15,日常的なしゃがみ動作の回避が,下肢の深屈曲ROMの低下につながる可能性がある。本研究で用いた柔軟性の指標(指床間距離)は,これらしゃがみ込みに必要な膝・股関節屈曲ROMや背屈ROMを反映していないため,関連因子として残らなかったと考える。今後は過体重が及ぼす膝・足関節への負荷の増大やそれに伴うROMの制限,運動回避行動への関連について検証する必要があるだろう。しゃがみ込み可否は直接観察可能な項目であるため,予測の必要はない。しかし,肥満度のみでしゃがみ込み可否を高精度で識別できたことは,これらの児童に共通する身体的特性の存在を示唆するものである。特に,肥満度は生活習慣の改善によって変化し得るため,早期に運動器機能の低下兆候を把握し,予防的介入につなげる手がかりとなる可能性がある。

片足立ちの可否と関連した因子としては握力が抽出され,モデルのAUCは0.79であった。これは握力が単なる手の筋力ではなく,下肢を含む全身の筋力や体幹機能を反映する可能性を示す結果となった。握力は高齢者において下肢筋力,片足立ち時間,転倒リスクと強く関連するとされている2728。今後はよりバランスと関連する体幹機能等の評価を含めた検討が必要である。

後屈時痛みについては性別と月齢が有意な関連を示し,低学年の男児においてより痛みを訴える傾向が認められた。小学生期には腰椎の二次性骨化核が未成熟であり,腰部過伸展を伴う運動の繰り返しにより,腰椎分離症を発症しやすいことが報告されており2930,本研究でも低学年の男児で後屈時痛みとの関連がみられた。ただし,腰椎分離症との直接的な関連は本研究では検討できておらず,今後の縦断研究による確認が必要である。

四肢の運動時痛や動かし難さに関しては,単変量解析で肥満度と反復横跳びの点数が抽出されたが,多変量解析では有意な因子とはならなかった。これには,運動過多による四肢の痛みや動かし難さがあるために敏捷性が低下している児童と,身体機能の低下によって肥満や四肢の動かし難さが生じている運動不足の児童が混在していた可能性が考えられる。高学年では特定のスポーツへの過度な集中によって下肢の過負荷障害が増加することが報告されている24。これらの運動過多で痛みを有している児童に対してはその背景を評価したうえで指導する必要があるだろう。一方で,私立学校は公立学校と比べて運動量が少ないことが指摘されている31。運動不足による肥満が四肢を動かし難くした場合,より運動の機会を減らす可能性がある。この悪循環を断つためにもまずは肥満の改善が必要となるだろう。

立位姿勢左右差に関しては,肥満度のみが多変量解析で有意な関連因子として抽出された。欧米では体脂肪率が高い児童は肩甲骨位置の非対称性や姿勢異常が顕著であるという報告があるが2632,本研究結果では,肥満度が低い児童ほど肩の高さに左右差があるという傾向を示した。韓国の児童を対象とした大規模調査では,痩身傾向の児童に側弯症が多いことが報告されている33。ただし,本研究における立位での肩の高さの左右差は,あくまで外見的な姿勢評価であり,側弯症の確定診断ではない。したがって,その存在のみで側弯症の有無を判断することはできない。軽度の側弯であっても早期に積極的な治療を行うことで,従来の経過観察よりも良好な結果が得られると報告されている34。今後は,このような視診所見をきっかけとして,医学的評価につなげるためのスクリーニング指標としての有用性の有無についても検討していく必要がある。

また,本研究では学年間の違いによる影響を補足的に検討した結果,低学年・高学年共に全体解析と類似した関連因子が抽出された。特にしゃがみ込みに関しては,低学年・高学年共に肥満度がしゃがみ込み困難と関連する傾向が認められた。立位姿勢の左右差については,低学年のみで柔軟性が関連していた。このことから,低学年においては柔軟性の低下が姿勢の非対称性に影響する可能性も考慮すべきであろう。

以上より,肥満は小学生の運動機能不全に影響する可能性があり,生活習慣の改善が予防的介入の一助となることが示唆された。児童の運動機能を評価する際には,単一の運動能力だけでなく,痛みや姿勢の評価を含めた多面的な視点が必要である。そのため,今後は理学療法士が学校現場の運動器検診に継続的に関与し,スクリーニングからフォローアップまで一貫した介入体制を構築することが求められる。また,将来的には,理学療法士による介入(事後措置)の有効性を検証する研究を通じて,学童期の運動機能不全に対する予防・改善戦略の構築が検討されることが望まれる。

本研究にはいくつかの限界がある。まず,運動機能不全を有する児童の症例数が十分ではなく,一部の変数については多変量解析を行うことができなかった。今後は,より大規模なサンプルを収集し,交絡因子を調整した解析が行われることが望ましい。また,本研究は横断的な観察研究であるため,運動機能不全や痛みとの因果関係を明確にすることはできない。したがって,今後は縦断研究による追跡や,介入を通じた因果検証が求められる。次に,対象児童は私立小学校に在籍しており,保護者の教育水準や社会経済的背景等が一般的な小学生集団と異なる可能性がある。特に,徳島県のように公共交通機関が発達していない地域では,多くの児童が自家用車による移動を余儀なくされており,生活環境が運動器の健康状態に影響を及ぼす可能性がある。そのため,本研究結果の一般化には慎重を要する。最後に,今回選定したのは運動機能を示す一部の評価指標でしかない。今後は体組成やより高度なバランス能力,生活習慣等の詳細な評価指標も加えて検証する必要がある。

結論

本研究では,小学生における運動機能不全や痛み,姿勢の非対称性と身体的要因との関連を横断的に検討した。その結果,肥満度がしゃがみ込み可否や立位姿勢左右差といった運動機能不全と関連する可能性が示された。肥満と運動機能不全との関連が示唆され,学校現場でのスクリーニングや運動指導を検討する際の参考となる可能性がある。

利益相反

本研究に於いて開示すべき利益相反はない。

文献
 
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