2026 年 53 巻 3 号 p. 192-200
【目的】本研究では生活期リハビリテーション(以下,生活期リハ)を利用中の高齢者におけるSelf-efficacy for Home Exercise Programs Scale(以下,SEHEPS)の検者内信頼性を検討することを目的とした。【方法】訪問リハビリテーションまたはデイケアを利用する高齢者を対象にSEHEPSを測定し,初回評価から2週間以内に再評価を行った。信頼性の検証には級内相関係数,標準誤差およびBland-Altman分析を用いて系統誤差の検討を行った。【結果】級内相関係数は0.84(95%CI : 0.78 to 0.89),標準誤差は7.9(95%CI : 7.0 to 9.2)であった。固定誤差はなく(p=0.23),比例誤差が認められた(p<0.05)。【結論】SEHEPSは生活期リハを利用する高齢者においても信頼性の高い評価指標であり,自己効力感の変化や介入効果を検証する上で有用であることが示唆された。
Objective: In this study, we aimed to examine the intra-rater reliability of the Self-Efficacy for Home Exercise Programs Scale (SEHEPS) among older adults receiving community-based rehabilitation.
Methods: We investigated older adults receiving home-based rehabilitation or day-care services using the SEHEPS. We performed reassessment within two weeks of the initial evaluation. We evaluated intra-rater reliability using the intraclass correlation coefficient (ICC), standard error of measurement (SEM), and Bland–Altman analysis to examine systematic error.
Results: The ICC and SEM values were 0.84 (95% CI: 0.78–0.89) and 7.9 (95% CI: 7.0–9.2), respectively. We observed no fixed bias (p=0.23), whereas we detected proportional bias (p<0.05).
Conclusion: SEHEPS demonstrated good intra-rater reliability among older adults receiving community-based rehabilitation, suggesting that it is a useful tool for self-efficacy alteration and intervention effect assessment.
本邦では超高齢社会を迎えており,令和6年度の報告では65歳以上の人口が29.3%となっている1)。それに伴い,介護保険サービスの利用者数も年々増加傾向にあり,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では前年度比3.2%,通所リハビリテーション(以下,デイケア)では0.7%増加している2)。これらの介護保険サービスを利用している高齢者では支給限度額の影響から,医療保険の疾患別リハビリテーションと比較して,理学療法士が直接関与できる時間が限られているため,自身で自宅にて行う運動(Home Exercise Programs:以下,HEP)の継続および遵守が身体機能の維持・向上のために必要不可欠である3–5)。
しかし,HEPは専門職による直接的な監視や即自的なフィードバックが得られにくいことから遵守率が低いことが課題となっている6)。近年では,HEPの遵守に影響を与える心理的要因として自己効力感が注目されている6)。自己効力感とは,自らが望ましい結果を導く行動を実行できるという信念を指し,行動の持続や再挑戦への意欲に深く関与する心理的構成概念である7)。運動自己効力感と運動との関連については多くの研究が行われており,運動自己効力感が運動習慣の形成や維持に寄与することが示されている8–10)。しかし,既存の運動自己効力感指標は,運動領域における包括的な側面を評価するものであり,HEPのような「在宅環境で指示された運動を継続する」という特定の行動背景を十分に反映していない可能性がある。自己効力感は行動や状況に依存することが明らかとなっていることから6)8),HEPの遵守を正確に評価・支援するためには,HEPという背景に即した領域特異的かつ課題・状況特異的自己効力感を測定する指標が必要である。
このような背景からHEPに特化した自己効力感を測定する指標「Self-efficacy for Home Exercise Programs Scale(以下,SEHEPS)」が開発され,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:以下,ICC)(1,1)が0.88と高い信頼性が報告されている11)。SEHEPSは指導されたHEPを生活上の障壁があっても遵守できるかという領域特異的かつ課題・状況特異的自己効力感を評価する指標であり,HEPの実施・継続と関連することが報告されている11)。また,SEHEPSは山﨑ら12)により日本語版が開発されている。
しかし,先行研究11)12)では若年層を対象としており,高齢者においてSEHEPSを臨床評価として用いるためには,対象特性を踏まえた信頼性の検証が不可欠である。高齢者は加齢に伴う身体機能および認知機能の低下や抑うつ症状を呈することが多く13),これらの要因はいずれも自己効力感と関連することが報告されている8)14)。そのため,生活期リハビリテーション(以下,生活期リハ)を利用中の高齢者では,先行研究11)とは異なる特性を有し,回答の再現性が低下する可能性がある。臨床現場において,SEHEPSを評価指標として適切に用いるためには,高齢者特性を踏まえた信頼性,特に検者内信頼性の検証が不可欠である。したがって,本研究では本邦の生活期リハを利用中の高齢者を対象としてSEHEPSの検者内信頼性を調査することを目的とした。これにより,高齢者のHEP遵守状況を評価し,個別指導や介入効果のモニタリングに活用することで,HEPの継続率向上や身体機能維持への貢献が期待される。
研究デザインは前向きコホート研究である。対象は2024年10月1日~2025年9月30日までの期間に和歌山市の診療所(単一施設)の訪問リハおよびデイケアを利用している65歳以上の高齢者205名のうち,除外基準に該当した105名を除いた100名(平均年齢85.3±6.9歳)とした。除外基準はClinical Dementia Rating(以下,CDR)≧2の者,終末期状態の者,評価の実施に支障をきたす重度の言語障害を有する者,本調査に同意を得られなかった者とした。対象には週1~2回の訪問リハまたは週1~3回のデイケアが提供された。SEHEPSのようなHealth-related Quality of Life評価指標では認知機能の低下が信頼性の低下に影響を及ぼす可能性が指摘されている15)。そのため,SEHEPSの信頼性を担保する上では認知症が疑われるCDR=0.5以上の者を除外することが望ましいと考えられる。一方で,生活期リハを利用する高齢者の多くは認知機能低下を有しており,CDR=0.5以上の者が77.3%を占めることが報告されている16)。本研究では,生活期リハの実臨床におけるSEHEPSの適用可能性を検討することを目的としているため,日常生活において一定の自立が可能であると想定されるCDR=1の者を包含基準に含め,CDR≦1を主解析の解析対象とした。
2. 調査項目対象者の基本属性として,年齢,性別,Body Mass Index,主疾患種別(脳血管疾患,運動器疾患,内部障害,その他),主疾患の発症から初期評価までの期間,併存疾患数(主治医からの指示書に記載されているもの),CDR,障害高齢者の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度,要介護度,同居人数,訪問診療の利用の有無,薬剤師訪問サービスの利用の有無,訪問リハ頻度(週あたりの訪問回数),訪問リハ時間(週あたりの訪問時間),各介護保険サービスの利用状況,生活居住環境(自宅/施設),サービス利用形態,Functional Ambulation Categories,歩行補助具(補助具なし,杖,歩行器),指導されたHEPの数,Barthel Index(以下,BI)を調査した。メインアウトカムはSEHEPSとした。自己効力感は身体機能や心理的要因との関連があることが明らかとなっている8)。このため,SEHEPSの背景因子を考慮するために運動機能評価として,Short Physical Performance Battery(以下,SPPB),心理面の評価として,うつリスクの評価であるPatient Health Questionnaire-2(以下,PHQ-2)を測定した17)。基本データは医療カルテおよび医療法人明星会介護データベースから取得した。
3. SEHEPSの測定方法およびHEPの指導方法SEHEPSは指導された運動に対する飽きや痛み,疲労,ストレス,気分の落ち込みといった心理・身体的要因,忙しさや楽しめない状況,一人で行う場合といった環境要因および支援ツールの有無,他者や専門職からの見守りやフィードバックが得られない場合といった社会的要因を想定した12項目で構成される質問指標である。それぞれ0~6点(自信がない~とても自信がある)で,最小が0点,最大が72点である。点数が高いほど運動に対する自己効力感が高いことを示す。また,先行研究では運動遵守率70%以上を予測するカットオフ値を59点(感度:0.92,特異度:0.55,Area Under the Curve:0.78)と報告しており,他の自己効力感指標との高い妥当性も示されている11)。
測定は臨床経験5年以上の担当理学療法士または作業療法士(以下,担当療法士)が面接法にて行った。先行研究11)では自己記入にて測定が行われていたが,自己記入式は高齢者を対象とした調査では,加齢に伴う認知機能低下や老眼などの身体的障害により信頼性や回答率の低下,測定時間へ影響を与える可能性が指摘されている15)18)。また,Pruchnoら19)は高齢者では自己記入式よりも面接法の方が質の高いデータが得られると報告している。さらに,臨床現場を想定した場合においても,限られた時間内でより信頼性のある評価を行うためには面接法での実施が妥当であると判断し,今回の調査では面接法による評価を採用した。評価に際して面接マニュアルは作成しておらず,代わりに評価者には口頭にてSEHEPSの目的,各項目の意義,測定方法について説明を行い,理解度を確認した。
SEHEPSの測定は先行研究11)と同様にHEPの指導後に実施した。HEPの内容に関しては対象者の個々の疾患特性や身体機能を考慮して,1日あたり約30分以内で完了できる必要性の高い3種類程度の運動を選択し,担当療法士が指導した。訪問リハ利用中の対象者に対しては,各担当療法士が訪問した際にHEPの指導を行い,デイケア利用中の対象者に対しては,デイケアの担当療法士が利用中にHEPの指導を行った。いずれの場合も,指導は口頭にて10~15分程度で行った。また,必要に応じてHEPの内容を記載した書面も手渡した。
運動の種類の違いは自己効力感に影響を与える可能性が報告されている20)。しかし,生活期リハの利用者は,疾患特性や身体機能の個人差が大きく,運動内容を統一することが不利益となる可能性がある。そのため,本研究では対象者の能力および疾患特性に応じて個別化されたHEPを指導した。HEPの指導を行う上で,系統的な中止基準は設定せず,担当療法士が個々の身体機能や疾患に応じたリスク管理方法を併せて説明した。また,調査期間中は担当療法士が対象者に対してHEPの実施を促す声掛けを行わないこと,および訪問時にHEPの実施状況の確認を行わないことを事前に周知した。
SEHEPSの初回評価後,検者内信頼性を確認するために,同一の担当療法士が次のサービス利用日に再評価を行った(2週間以内)。
4. サンプルサイズ信頼性研究の国際的な方法論基準であるConsensus-based Standards for the selection of health Measurement Instruments(COSMIN)では,ICCを用いた信頼性評価において100名以上のサンプルサイズが非常に良好(Very good)とされている21)。本研究ではこの基準に基づき,主解析におけるサンプルサイズを100名以上に設定した。
5. 統計解析SEHEPSの検者内信頼性を確認するために初回評価値と再評価値の測定値に対してICC(1,1)を算出した。また,測定誤差の程度を把握するため,標準誤差(Standard Error of Measurement:以下,SEM)および最小可検変化量(Minimal Detectable Change 95:以下,MDC95)を以下の式より算出した22)。
![]() |
その後,測定時における系統的な誤差の有無を検討するため,Bland-Altman分析を実施した。初回評価値と再評価値の平均値を横軸に,測定間の差を縦軸にプロットし,測定値の系統誤差の有無を評価した。測定間の差の平均値および95%信頼区間(95% Confidence Interval:以下,95%CI)を算出し,95%CIが0を含まない場合,固定誤差が存在すると判断した。比例誤差の有無は測定間の差と平均値との間のPearson積率相関係数を算出し,さらにBland-Altman分析における単回帰分析を実施した。回帰分析において,回帰係数が統計学的に有意(p<0.05)である場合,比例誤差が存在すると判断した。加えて,背景因子がSEHEPSの信頼性に及ぼす影響を検討するため,感度解析として性別,CDR,サービス利用形態および生活居住環境,同居者の有無の因子をサブグループとして層別化して初回・再評価時の平均値およびICC(1,1),SEMを算出した。
また,SEHEPSに対する背景因子との関係を検討するためにKendallの順位相関係数にて検討を行った。解析ソフトはR(version 4. 4. 0)を使用し,統計学的有意水準は5%とした。
6. 研究倫理本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者のプライバシーおよび個人情報の保護,研究内容,研究への参加の撤回について十分に説明を行い,書面にて同意を得た。また,本研究は大阪医療福祉専門学校倫理委員会の承認を得た(承認番号:24-88)。
本研究の包含基準(図1)に含まれる100名(平均年齢:85.3±6.9歳)のSEHEPSの初回評価の平均値は34.0(±21.5)点,再評価の平均値は35.3(±18.8)点であった(図1)。その他の対象者の基本属性の平均値(標準偏差)またはn(%)を表1に示す。

| 年齢[歳] | 85.3 (6.9) |
| 性別[n(%)]女性/男性 | 71 (71)/29 (29) |
| BMI [kg/m2] | 21.9 (4.0) |
| 主疾患種別[n (%)]脳血管疾患/運動器疾患/内部障害/他 | 13 (13)/42 (42)/24 (24)/21 (21) |
| 主疾患の発症から初期評価までの期間[月] | 29.8 (23.5) |
| 併存疾患数[個] | 8.2 (2.9) |
| CDR [n (%) ] 0/0.5/1 | 22 (22)/51 (51)/27 (27) |
| 障害高齢者の日常生活自立度[n (%)]生活自立/準寝たきり/寝たきり | 63 (63)/32 (32)/5 (5) |
| 認知症高齢者の日常生活自立度[n (%)]正常/ I/IIa/IIb/IIIa/IIIb/IV | 16 (16)/53 (53)/20 (20)/11 (11) |
| 要介護度[n (%)]なし/支援1/支援2/介護1/介護2/介護3以上 | 7 (7)/6 (6)/12 (12)/29 (29)/26 (26)/20 (20) |
| 同居人数(自宅の者)[n (%)]0/1/2/3/4人以上 | 25 (35)/34 (47)/11 (15)/1 (1)/1 (1) |
| 訪問診療の利用[n(%)]なし/月1回/月2回 | 29 (29)/11 (11)/60 (60) |
| 薬剤師訪問サービスの利用:あり[n (%)] | 67 (67) |
| 介護保険サービス利用状況 | |
| 訪問リハビリ頻度[回/週] | 1.4 (0.6) |
| 訪問リハビリ時間[分/週] | 55.7 (23.0) |
| 訪問看護:あり[n (%)] | 35 (35) |
| 訪問入浴:あり[n (%)] | 1 (1) |
| 訪問介護:あり[n (%)] | 53 (53) |
| 通所介護:あり[n (%)] | 20 (20) |
| 通所リハビリ:あり[n (%)] | 39 (39) |
| ショートステイ:あり[n (%)] | 0 (0) |
| 生活居住環境[n (%)]自宅/施設 | 72(72)/28 (28) |
| サービス利用形態[n (%)]訪問リハ/デイケア/併用 | 44 (44)/20 (20)/16 (16) |
| FAC[n (%)]1/2/3/4/5 | 5 (5)/3 (3)/7 (7)/35 (35)/50 (50) |
| 歩行補助具[n(%)]補助具なし/杖/歩行器 | 48 (48)/21 (21)/31 (31) |
| 指導されたHEPの数 | 3.0 (1.5) |
| BI[点] | 90.5 (11.6) |
| SPPB[点] | 7.9 (3.3) |
| PHQ-2[点] | 1.7 (1.5) |
| SEHEPS(初回評価)[点] | 34.0 (21.5) |
| SEHEPS(再評価)[点] | 35.3 (18.8) |
| 再評価までの期間[日] | 6.9 (2.3) |
平均値(標準偏差)またはn: Number (%).
BMI: Body Mass Index, リハビリ:リハビリテーション,デイケア:通所リハビリテーション,FAC: Functional Ambulation Categories, HEP: Home Exercise Program, BI: Barthel Index, SPPB: Short Physical Performance Battery, PHQ-2: Patient Health Questionnaire-2 for Depression Screening, SEHEPS: Self-Efficacy for Home Exercise Programs Scale.
今回,評価を実施した担当療法士の経験年数は6~20年の7名で,中央値は10年であり,再評価までの期間は平均6.9(±2.3)日であった。SEHEPSのICC(1,1)は0.84(95%CI:0.78 to 0.89),SEMは7.9(95%CI :7.0 to 9.2)点であった。Bland-Altman分析の結果では,平均差は1.36(95%CI:−0.87 to 3.59)であり,有意な固定誤差は認めなかった(p=0.23)。一方,測定間の差の平均との間には有意な負の相関が認められ,(r=−0.26, p<0.05),回帰分析においても回帰係数が−0.15(95%CI:−0.26 to −0.04, p<0.05)と有意な比例誤差を認めた(表2)。Bland-Altman分析の分布は図2に示す。Bland-Altman分析において比例誤差が存在する場合,測定誤差が測定値の大きさに依存することを意味しており,測定誤差が平均値に依存せず一定であることを前提としているMDC95の算出は適切ではない。このため,本研究ではMDC95の算出は行わなかった。
| ICC (1,1) (95%CI) | 0.84 (0.78 to 0.89) | |
| SEM (95%CI) | 7.9 (7.0 to 9.2) | |
| Bland-Altman分析 | ||
| LOA(上限to下限) | 1.36 (−16.81 to 19.53) | |
| 固定誤差 | 平均値(95%CI) | 1.36 (−0.87 to 3.59) |
| p値 | 0.23 | |
| 比例誤差 | 回帰係数(95%CI) | −0.15 (−0.26 to −0.04) |
| p値 | <0.05* | |
| 相関係数 | −0.26 | |
*: p<0.05.
SEHEPS: Self-Efficacy for Home Exercise Programs Scale, ICC: Intraclass Correlation Coefficient(級内相関係数),95%CI: 95% Confidence Interval, SEM: Standard Error of the Measurement, LOA: Limit of Agreement.

初回評価値と再評価値の平均値を横軸に,測定間の差を縦軸にプロットした.
また,サブグループ別のSEHEPSの初回評価・再評価の平均値およびICC(1,1),SEMを表3に示す。性別[男性(n=29),女性(n=71)],CDR[CDR=0(n=22),CDR=0.5(n=51),CDR=1(n=27)],サービス利用形態[訪問リハのみ(n=64),デイケアのみ(n=20),併用(n=16)],生活居住環境,同居者の有無[施設入居者(n=28),自宅(n=72)],[自宅(n=72)のうち,独居(n=25),同居者あり(n=47)]の各サブグループにおけるICC(1,1)は0.76~0.93の範囲であった。いずれのサブグループにおいてもICC(1,1)はおおむね0.80前後の値を示した。
| 初回評価の平均値 (SD) | 再評価の平均値 (SD) | ICC (95%CI) | SEM (95%CI) | |
|---|---|---|---|---|
| 全体(n=100) | 34.0 (21.5) | 35.3 (18.8) | 0.84 (0.78 to 0.89) | 7.9 (7.0 to 9.2) |
| 性別 | ||||
| 男性(n=29) | 36.1 (17.3) | 35.2 (22.6) | 0.77 (0.56 to 0.88) | 9.9 (7.8 to 13.3) |
| 女性(n=71) | 35.0 (19.4) | 33.5 (21.2) | 0.88 (0.81 to 0.92) | 7.1 (6.1 to 8.5) |
| CDR | ||||
| 0 (n=22) | 36.0 (20.4) | 35.8 (21.2) | 0.79 (0.57 to 0.91) | 9.7 (7.5 to 13.9) |
| 0.5 (n=51) | 35.1 (16.4) | 32.8 (20.3) | 0.87 (0.78 to 0.92) | 6.6 (5.5 to 8.2) |
| 1 (n=27) | 35.2 (21.9) | 34.8 (24.5) | 0.86 (0.72 to 0.93) | 8.9 (7.0 to 12.2) |
| サービス利用形態 | ||||
| 訪問リハのみ(n=64) | 33.0 (18.1) | 31.2 (20.8) | 0.82 (0.72 to 0.88) | 8.3 (7.1 to 10.1) |
| デイケアのみ(n=20) | 45.8 (17.9) | 48.5 (17.1) | 0.89 (0.75 to 0.96) | 5.6 (4.2 to 8.1) |
| 併用(n=16) | 32.0 (18.8) | 27.1 (22.4) | 0.82 (0.58 to 0.93) | 8.2 (6.1 to 12.7) |
| 生活居住環境 | ||||
| 施設入居者(n=28) | 35.9 (18.8) | 35.1 (21.0) | 0.90 (0.79 to 0.95) | 6.4 (5.0 to 8.8) |
| 自宅(n=72) | 35.2 (19.0) | 33.5 (21.9) | 0.83 (0.74 to 0.89) | 8.5 (7.3 to 10.2) |
| 同居者の有無 | ||||
| 独居(n=25) | 36.5 (20.6) | 37.6 (21.9) | 0.93 (0.86 to 0.97) | 5.5 (4.3 to 7.7) |
| 同居者あり(n=47) | 34.3 (18.1) | 31.4 (21.7) | 0.76 (0.62 to 0.86) | 9.6 (8.0 to 12.0) |
SEHEPS: Self-Efficacy for Home Exercise Programs Scale, SD: Standard Deviation, ICC: Intraclass Correlation Coefficient(級内相関係数),SEM: Standard Error of the Measurement, 95%CI: 95% Confidence Interval, CDR: Clinical Dementia Rating, 訪問リハ:訪問リハビリテーション,デイケア:通所リハビリテーション.
SEHEPSと背景因子の相関分析では関連のある項目としてBI(ρ=0.37, p<0.01),SPPB(ρ=0.25, p<0.05),PHQ-2(ρ=−0.45, p<0.01)において有意な相関関係を認めた(表4)。
| ρ | 95%信頼区間 | p値 | |
|---|---|---|---|
| 年齢 | −0.02 | −0.21 to 0.18 | 0.87 |
| BMI | −0.03 | −0.24 to 0.18 | 0.77 |
| BI | 0.37 | 0.18 to 0.52 | <0.01** |
| SPPB | 0.25 | 0.05 to 0.44 | <0.05* |
| PHQ-2 | −0.45 | −0.59 to −0.27 | <0.01** |
Kendallの順位相関係数.*p<0.05, **p<0.01.
SEHEPS: Self-Efficacy for Home Exercise Programs Scale, BMI: Body Mass Index, BI: Barthel Index, SPPB: Short Physical Performance Battery, PHQ-2: Patient Health Questionnaire-2 for Depression Screening.
本研究において,生活期リハを利用中の高齢者におけるSEHEPSの検者内信頼性はICC(1,1)で0.84(95%CI:0.78 to 0.89)であった。ICC(1,1)は0.75以上で「良好な信頼性」と評価されることから23),本研究におけるICC(1,1)=0.84は十分な検者内信頼性を有する指標であることが示唆された。
一方で,先行研究11)と比較するとICC(1,1)はやや低値を示した。この要因として2つ挙げられる。1つ目は再評価までの期間の違いによる影響である。先行研究11)では再評価までの期間を48時間以内に実施していたが,本研究では介護保険サービスの特性上,平均6.9(±2.3)日であった。安藤ら24)は,再評価の遅延が再現性の低下につながる可能性を指摘している。横川ら10)も運動自己効力感の検討において再評価まで4週間を要し,ICC(1,1)=0.57と報告している。同報告10)では,再評価までの期間に介入による成功体験や運動に伴う疲労蓄積,疼痛などの生理的反応が影響を及ぼした可能性が示唆されている。本研究では再評価までの期間が比較的短期間であったため,これらの影響は限定的と考えられるが,心理的要因の影響を完全に排除できたとは言い切れない。2つ目として,高齢者の身体的および心理的要因が影響した可能性が挙げられる。高齢者では身体機能および認知機能の低下,抑うつ症状を呈することが多い13)。本研究のBland-Altman分析では固定誤差は認めなかったが(p=0.23),測定間の差と平均値に有意な負の相関が認めたことから比例誤差の存在が示唆された(p<0.05)。つまり,低得点者では測定値の変動が相対的に大きくなる傾向が示唆された。さらに,SEHEPSと背景因子の相関分析では,PHQ-2との間に中等度の負の相関(ρ=−0.45)があり,BI(ρ=0.37)とSPPB(ρ=0.25)は中等度の正の相関を示した。低い自己効力感は身体活動制限や精神的なQuality of Lifeの低下と関連し25),自己効力感が抑うつ症状や不安感と関連することが報告されている14)26)27)。したがって,自己効力感が低い者では抑うつ症状や不安の影響により,測定時の変動が大きくなる可能性がある。また,BI, SPPBが高く日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)が自立している者では自己効力感が高く,誤差が少ない傾向を示した。この結果は身体機能が自己効力感と関連するという先行研究8)の結果を追従するものである。これらの高齢者特有の身体的および心理的状態が再評価値の変動に影響した可能性がある。一方で,大谷ら28)は高齢者を対象とした転倒自己効力感に関するICC(1,1)が0.83と報告している。本研究では大谷ら28)の報告よりも再評価までの期間が長く,高齢であったにもかかわらず,ICC(1,1)は同等の値を示した。以上より,本研究のICC(1,1)=0.84は許容範囲可能な水準と判断できる。さらに,本研究ではSEHEPSの測定に面接法を採用した点が信頼性に寄与している可能性がある。高齢者では自己記入式において理解不足や誤解によるバイアスが生じやすく19),面接法の方が自己記入式よりも信頼性の高いデータを得られることが示されている。面接法では評価者が適宜説明や補足を行えるため,今回のICCに反映された可能性がある。しかし,本研究では自己記入式との直接比較は行っておらず,その効果については推察の域を出ない。サブグループ別の結果では,性別,CDR,サービス利用形態および生活居住環境,同居者の有無のいずれにおいてもICC(1,1)が0.70以上を示しており,大きな信頼性の低下は認められなかった。性別などの一部のサブグループにおいてICC(1,1)とSEMのばらつきを認めたが,これらの群ではサンプルサイズが小さく,95%CIが広いことから推定精度の影響を受けた可能性がある。このため,ICCの差をこれらの因子による影響として解釈することは慎重を要する。以上のことから,本研究ではSEHEPSが生活期リハを利用中の高齢者において信頼性のある評価指標であることが示された。一方で,SEHEPSの再評価においては,特に初回評価時の低得点者において測定時の変動が大きくなる可能性があるため,単一評価による判断ではなく,他の心理的指標や臨床情報と併せた解釈が望まれる。
本研究におけるSEHEPSの測定は先行研究11)と同様にHEPの指導後に実施した。自己効力感は環境などの因子により変化しうる心理的概念であるため6),初回評価時には課題理解や期待の影響を含む可能性は否定できない。特に高齢者では特有の身体的および心理的状態が評価結果に影響を及ぼすことも考えられる。しかし,SEHEPSは「処方されたHEPを遵守できるという自己効力感を有しているか」を評価する課題特異的指標であり,評価対象となる運動課題が提示されていない状態では適切な評価が困難となる可能性がある。このため,HEP指導後に測定を行うことが前提条件として位置付けられる。すなわち,HEP指導後の評価は介入ではなく,対象行動を明確にした上での自己効力感評価として妥当である。
本研究ではいくつかの課題が存在する。1つ目にサンプルのバイアスを考慮できていない点である。本研究の対象は介護サービスを利用している高齢者である。SEHEPSは中等度以上の認知症患者や終末期医療を受けている者,言語障害を有する者を除く対象者,特に介護保険サービスを利用しており,ADLが自立している者に対しては信頼性のある指標であることが示された。一方で,地域在住高齢者では医療機関を利用していない者や介護保険を利用していない者が含まれていない。これらの者はADLや心理的状況,環境因子が今回の対象者と大きく異なる。そのため,地域在住の医療機関や社会保険サービスの必要のない高齢者には一般化できない可能性があり,さらなる検証が必要である。また,単一施設での調査であり,外的妥当性には他施設での検討が必要である。2つ目に本研究ではSEHEPSを面接法により測定した点である。面接法は高齢者において回答の理解を補助できる一方で,評価者の説明やかかわり方による影響を完全に排除することはできない。また,本研究では面接マニュアルを作成しておらず,評価者間で解釈の差が生じた可能性は否定できない。さらに,自己記入式との直接比較は行っていないため,本研究の結果は面接法によるSEHEPSの測定特性に基づく信頼性として解釈される必要がある。3つ目に評価者間信頼性や他評価指標との併存的妥当性を検討していない点である。本研究では検者内信頼性に焦点を当てており,評価者間での再現性や,他の自己効力感指標との併存的妥当性を検討できていない。そのため,SEHEPSが他の自己効力感指標や異なる評価者によっても同様の結果を得られるかについては明らかでなく,信頼性と妥当性の外的検証には課題が残る。
本研究では,本邦の生活期リハを利用中の高齢者を対象にSEHEPSの信頼性の検討を行った。その結果,ICC(1,1)は0.84と検者内信頼性を有する指標であることが示された。SEHEPSを活用することで,HEPに対する自己効力感を評価することが可能になり,自己効力感の経時的変化を追う上での一助となる可能性がある。
本研究にご協力いただいた星野クリニックの訪問診療部門および在宅リハビリテーション部門,在宅医療コーディネーターに深謝申し上げる。
開示すべき利益相反はない。