イノベーション・マネジメント
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査読付き研究ノート
テクノロジー・アントレプレナーシップにおけるアイデンティティ形成と戦略遂行の結びつき
石谷 康人
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2019 年 16 巻 p. 103-120

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抄録

本論文では、企業家によるアイデンティティ形成が新製品開発に結びつき、ひいては事業の競争優位に波及するプロセスとメカニズムを説明した。そのために、東京芝浦電気株式会社が1978年に発表し、翌年から販売を開始した世界初となる日本語ワードプロセッサJW-10の製品開発事例に着目した。テクノロジー・アントレプレナーの天野真家によるアイデンティティ形成が、かな漢字変換技術の開発とJW-10の製品開発に作用し、ワープロ事業の競争優位に波及した事例を取り上げた。そして、G. H.ミードの社会的自我論のアナロジーとして企業家的自我論を導出するとともに、それを理論枠組みとして用いて天野によるテクノロジー・アントレプレナーシップを分析した。その結果、意味のあるシンボルとしての製品設計と製品アーキテクチャを介した企業家と市場のコミュニケーションが好循環すると、企業家が創発的内省性を発揮してブレークスルーを達成し、競争優位の源泉となる製品開発を成功に導く企業家的自我のダイナミクスを具体的に示すことができた。企業家のアイデンティティ形成を自我のダイナミクスの一部として捉えることが、アイデンティティ形成と製品開発および戦略遂行の結びつきを記述するのに有効であることが分かった。しかし、本論文は、テクノロジー・アントレプレナーシップを前提とし、単一の事例研究を用いていることから、普遍性の面で限界がある。

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© 2019 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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