イノベーション・マネジメント
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16 巻
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論文
  • 北田 皓嗣
    原稿種別: 論文
    2019 年 16 巻 p. 1-18
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2020/03/31
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    本稿では、日本企業のサステナビリティ目標の設定状況について検討している。具体的には環境関連項目および社会関連項目の目標についてそれぞれの目標設定期間を2014年から2018年の5年間で比較しその傾向を分析している。また併せて2015年から2018年までの日本企業のSustainable Development Goals(SDGs)へのコミットメントの状況と17の目標それぞれへの対応状況について分析している。これにより企業のサステナビリティ目標について2020年や2030年などの特定の年度を対象に活動目標を設定していること、また通常の中期経営計画と比べ目標の改定の頻度が高くないことが示された。長期目標の設定について環境関連項目の目標については産業の影響がみられるものの、社会関連項目の目標については産業ごとの特徴はほとんどみられなかった。特徴的なものとして建設業の企業は環境関連項目および社会関連項目のいずれにおいても目標設定について高い開示割合と長期的な目標設定期間を示していた。SDGsについては2015年に国連で承認されて以来、日本企業もより積極的に企業経営に反映させようと進めてきてSDGsへのコミットメントを開示する企業数は増加してきている。ただしその活動として本業と近い製造責任や消費者責任に関する項目や地球温暖化に関連する項目に関する活動がより優先され取り組まれていた。これらを通じて本稿ではサステナビリティ目標の設定状況に関する研究に対して、特に企業の計画との関連でエビデンスを示すことで既存の研究に貢献を試みるものである。

  • ―パナソニックとソニーの役員属性分析―
    金 容度
    原稿種別: 論文
    2019 年 16 巻 p. 19-51
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2020/03/31
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    これまで、日本の創業者企業については、主に、有名創業経営者に分析の光が当てられることが多かった。しかし、創業者企業でも、創業者はいずれ経営から退き、サラリーマン役員が経営への影響力を高めたはずである。にもかかわらず、創業者企業のサラリーマン取締役についてはほとんど研究がなされてこなかった。こうした問題意識から、本論文では、戦後日本の創業者企業を代表するパナソニックとソニーを取り上げ、1950年代から2010年代までの取締役の属性の変化を実証的に分析した。なお、代表的な経営者企業である日立の取締役の属性との比較分析も行った。

    本論文の分析によって、両社が経営者企業に移行した時期から、役員属性にどのような変化があったかが明らかにされ、さらに、両社の取締役間の共通点と相違点、両社の取締役と日立の取締役の共通点及び相違点が解明された。

  • ―Facebookページへのリレーションシップがロイヤルティに及ぼす影響の検討―
    竹内 淑恵
    原稿種別: 論文
    2019 年 16 巻 p. 53-78
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2020/03/31
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    多くの企業が、Facebookページ(以下、FBページ)を統合マーケティング・コミュニケーション戦略の一環として活用している。これまでの研究では、FBページを展開している企業が多数存在するにもかかわらず、少数のFBページに限定して調査する、あるいは、多数のFBページのデータを収集した後、集計して分析するというアプローチが採られてきた。そこで本研究では、38ブランドのFBページに対する消費者反応データを用いて、階層線形モデルの適用可能性を検討した。階層線形モデルは、個人レベル(消費者)と集団レベル(FBページ)という階層的なデータを適切に分析するための手法である。分析の結果、集団レベルの誤差を固定効果としたモデルよりも、変量効果としたモデルのほうが適合度が有意に高いこと、個人レベルの効果に関して、FBページ間の異質性を仮定したモデルのほうが、独立変数(信頼、相互作用、コミットメント)による従属変数(推奨意図)に対する説明力が高いことが明らかになった。また、集団レベルの変数である、年齢、男女比率、人気ランキングには有意な効果が認められなかった。一方、満足度、快楽的動機においては、個人レベルの効果のみならず、集団レベルの効果を扱うことにより、モデルの説明力が高まることが見出された。

研究ノート
  • 鍾 淑玲
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 16 巻 p. 79-101
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2020/03/31
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    セブン‐イレブン中国(SEC)は2017年の1年間に中国市場において100店舗以上を新規出店し、中国市場においてテイクオフした可能性を示唆される。本稿では、SECが大量出店を実現した時点における「コンビニの事業システム」の現状を把握するため、3つの事業システムを構成する「フロントシステム」、「バックシステム」、「店舗運営システム」について、SECが直面した課題および対策方法を明らかにした。

    2004年以来、中国・北京のマクロ環境が大きく変化したことを背景に、SECは段階的に「フロントシステム」における革新と現地化を行い、高い平均日販を実現した。10年余り苦労した背景には出店数の伸び悩みがあったが、2017年のFC出店契約についての政策が改定され、店舗展開が容易になった。現在、SECが成長軌道に乗りつつある理由は、2017年の出店数の増加に伴う規模の経済と、これまでに築いた「フロントシステム」や「バックシステム」、「店舗運営システム」の相乗効果が発揮されるようなったからである。SECの「コンビニの事業システム」の特徴をみると、最も重視されている戦略は「フロントシステム」における革新と現地化であり、コンビニ国際化が成功する原動力になった。また、「バックシステム」の商品調達システムも品揃えなどと連動しているため、2012年にパートナーの現地誘致や資金投資が行われた。一方、技術重視の商品供給システムでは現地企業が採用された。

査読付き研究ノート
  • 石谷 康人
    原稿種別: 査読付き研究ノート
    2019 年 16 巻 p. 103-120
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
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    本論文では、企業家によるアイデンティティ形成が新製品開発に結びつき、ひいては事業の競争優位に波及するプロセスとメカニズムを説明した。そのために、東京芝浦電気株式会社が1978年に発表し、翌年から販売を開始した世界初となる日本語ワードプロセッサJW-10の製品開発事例に着目した。テクノロジー・アントレプレナーの天野真家によるアイデンティティ形成が、かな漢字変換技術の開発とJW-10の製品開発に作用し、ワープロ事業の競争優位に波及した事例を取り上げた。そして、G. H.ミードの社会的自我論のアナロジーとして企業家的自我論を導出するとともに、それを理論枠組みとして用いて天野によるテクノロジー・アントレプレナーシップを分析した。その結果、意味のあるシンボルとしての製品設計と製品アーキテクチャを介した企業家と市場のコミュニケーションが好循環すると、企業家が創発的内省性を発揮してブレークスルーを達成し、競争優位の源泉となる製品開発を成功に導く企業家的自我のダイナミクスを具体的に示すことができた。企業家のアイデンティティ形成を自我のダイナミクスの一部として捉えることが、アイデンティティ形成と製品開発および戦略遂行の結びつきを記述するのに有効であることが分かった。しかし、本論文は、テクノロジー・アントレプレナーシップを前提とし、単一の事例研究を用いていることから、普遍性の面で限界がある。

  • ―星利源社の事例研究―
    王 亦菲
    原稿種別: 査読付き研究ノート
    2019 年 16 巻 p. 121-139
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
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    中国においてB2Bプラットフォーム型流通企業が台頭し注目を集めている。同型企業は包括的なリテールサポートを展開し、伝統的な中小零細小売店舗の経営能力を強化することによって、大規模組織小売企業と大規模ネット通販企業に対抗する流通サプライチェーンの構築を狙う。本研究では、理論的サンプリングで先駆的なB2Bプラットフォーム型流通企業である星利源社を調査対象に選定し、同社に対する事例研究を行う。そのうえで、流通システムのイノベーションの視点から、同社のリテールサポートの実態と構成要素を解明するとともに、流通システムのダイナミズムという視点から、中国流通システムの進化プロセスにおけるB2Bプラットフォーム型流通企業のもたらすインパクトを考察する。

  • 岸田 泰則
    原稿種別: 査読付き研究ノート
    2019 年 16 巻 p. 141-156
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
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    本稿では、中小企業4社において、高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションが波及した事例を分析した。本稿では、就労困難な状況に置かれた高齢者に雇用を提供することにより、居場所などの労働過程の持つ価値や経済的自立を補佐する生活資金といった労働統合型社会的企業と同様の社会的包摂を、営利企業が市場メカニズムの中で実現できることを明らかにした。また、先行研究では、社会的課題の認知がソーシャル・イノベーションの起点となっていたが、本稿の事例により必ずしも社会的課題の認知が起点ではなく、経済的課題の解決策(ビジネスモデル)がソーシャル・イノベーションに変容していくプロセスが発見された。いわば、「意図せざる創発的ソーシャル・イノベーション」の可能性が提示された。また、複合的な学びのネットワーク、すなわち実践共同体における多重成員性が社会的企業家に高齢者雇用の社会的課題を認知させ、高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの創出・普及を促すプロセスが示唆された。

  • 楽 奕平
    原稿種別: 査読付き研究ノート
    2019 年 16 巻 p. 157-169
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
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    本稿は、日本におけるオープンデータ政策の変遷と、変化する国際情勢の中におかれた日本政府の問題意識について考察するものである。国内外のオープンデータに関する動向とそれに応じた政府決定の変遷の分析から、オープンデータに関する日本の政策が、政府の透明性を主眼においた行政情報の提供の段階、公共データの利活用による新サービス創出や産業振興を重視した段階、そして、新サービスの創出を全面に出して事業者の保有するデータについても行政データを補完するものとしてオープン化を推進するという段階へと3段階の変遷を遂げたことを示した。また、データ活用の社会的意義及び民間データのオープン化に関する今後の展開について考察した。

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