イノベーション・マネジメント
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査読付き研究ノート
高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションに関する事例研究
岸田 泰則
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2019 年 16 巻 p. 141-156

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要旨

本稿では、中小企業4社において、高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションが波及した事例を分析した。本稿では、就労困難な状況に置かれた高齢者に雇用を提供することにより、居場所などの労働過程の持つ価値や経済的自立を補佐する生活資金といった労働統合型社会的企業と同様の社会的包摂を、営利企業が市場メカニズムの中で実現できることを明らかにした。また、先行研究では、社会的課題の認知がソーシャル・イノベーションの起点となっていたが、本稿の事例により必ずしも社会的課題の認知が起点ではなく、経済的課題の解決策(ビジネスモデル)がソーシャル・イノベーションに変容していくプロセスが発見された。いわば、「意図せざる創発的ソーシャル・イノベーション」の可能性が提示された。また、複合的な学びのネットワーク、すなわち実践共同体における多重成員性が社会的企業家に高齢者雇用の社会的課題を認知させ、高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの創出・普及を促すプロセスが示唆された。

1.  はじめに

近年、高齢者雇用の促進にあたり、地域雇用の視点が重視されている(前田, 2016)が、その背景には、地域において働きたくても働く場のない高齢者が多く存在することがあげられる(加藤, 2013古村, 2015)。地域の高齢者雇用の促進には、地方公共セクターと社会的企業の連携が有効であるが(岸田, 2018)、高齢者の外部労働市場1、すなわち一旦退職した高齢者が新たに雇用される仕組みがまだまだ未整備である。そして、日本においては、社会的企業が高齢者雇用を促進するプロセスを研究した先行研究が少ない状況にある。企業が高齢者雇用に取り組むきっかけとしてソーシャル・イノベーション(以下、「SI」)に着目した研究があるが(吉澤, 2009古村, 2015)、高齢者雇用を促進するSIのプロセスについては明らかにできていない。本稿の目的は、高齢者雇用促進のSIの創出・普及プロセスを明らかにすることであるが、先行研究では高齢者雇用促進のSIの事業性を分析できていないため、本稿では、高齢者雇用促進のSIの事業性についても分析に加える。大企業での高齢者雇用は、生産合理性を追求できていない「福祉型雇用」が多いが(今野, 2014)、中小企業では、大企業に比べて生産合理性を求めつつ高齢者雇用を維持してきた企業が多い。そこで、本稿では中小企業における高齢者雇用促進のSI事例を分析し、その事業性とともに、高齢者雇用促進のSI創出・普及のプロセスを明らかにしていく。

2.  先行研究レビュー

2.1  ソーシャル・イノベーションの定義

SIの先行研究には、米国を起点とした新自由主義学派と、欧州を起点とした社会政策学派といった大きく2つの流れが存在する(高橋・木村・石黒, 2018藤井・原田・大高, 2013)。まずは新自由主義学派から見ていくと、谷本他(2013)では、SIを「社会的課題に取り組むビジネスを通して、新しい社会的価値を創出し、経済的・社会的成果をもたらす革新」と定義する。あるいは、大室(2007)は、SIを「社会的課題の解決のために市場メカニズムを活用した新しい製品、サービスの供給、そのための新しい仕組み」と定義する。ここでは、市場メカニズムを通じて社会的課題を解決することが念頭に置かれている。すなわち、新自由主義学派のSI研究においては、社会的課題の解決という社会性と市場メカニズムで求められる事業性の両立を議論の前提にしている(Dees, 1998経済産業省, 2008)。なお、経済産業省(2008)は、ソーシャル・ビジネスの定義として、「現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとする」社会性と、「それのミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進める」事業性、そして、それらの両立を可能にするために、「新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりする」革新性の3点を挙げる。

一方、SIの主体には、営利企業だけでなく、市民運動や政府・行政などの非市場セクターが主体になることを指摘する先行研究も存在する(Westly, Zimmerman, & Patton, 2006Mulgan et al., 2007)。この非市場セクターを含めた考えは新自由主義学派の中にも若干存在するが、よりその姿勢を鮮明にしているのが社会政策学派であり、彼らのSIの定義は、社会的企業がコミュニティ、市場、政府の媒介領域に存在し、その3者の経済を混合したハイブリッド構造を持った社会的企業が社会的排除の解決を行うこととする(Evers, 2001)。この3者の経済とは、コミュニティから得られるソーシャル・キャピタル(互酬性)、営利事業から得られる事業収益(市場)、公共セクターから得られる補助金や公共サービス(再配分)の3点を言う(Defourny, 2001)。新自由主義学派が想定する社会的企業は営利企業のCSRやBOPビジネスなどの私的所有の企業を含む幅広いものであるが、社会政策学派の想定する社会的企業は労働統合型社会的企業(以下、「WISE」)や協同組合、ソーシャル・ファーム2などの社会的所有3の企業に限定される(藤井・原田・大高, 2013)。

2.2  ソーシャル・イノベーションの社会性と事業性(先行研究)

SI研究における社会性の議論を俯瞰すると、新自由主義学派では、社会的企業家が社会的使命を担うことで社会性が担保される前提をとっており(高橋・木村・石黒, 2018藤井・原田・大高, 2013)、その社会性の内容は問われない。米国ではピューリタリズムに基づき市民が市場社会を構築することが倫理的であるため、新自由主義学派では、「社会的課題に対して市場での解決を図る事業を構築することそのものが、社会的な行為である」という前提に立っている。新自由主義学派のSI研究はこの前提に立つがゆえに、社会的企業には社会性と事業性の両立が求められる。

一方、社会政策学派における代表的な社会的企業の定義は、社会的目的、社会的所有、企業性の3点が包含されている企業となる(Martin & Thompson, 2010)。社会政策学派は、社会的に排除された人々の救済、すなわち社会的包摂を社会的課題ととらえ、その解決にあたり、政府、市場、コミュニティをつなぐことが社会的企業の使命となる(高橋・木村・石黒, 2018)。いわば、相互扶助や民主的参加など、社会的に排除された人々を労働や社会に組み込む「労働や社会への再統合」(Borzaga & Loss, 2006)が、社会政策学派の社会性となる。特に、労働市場で不利な人々へ雇用を提供し、かつ社会的にも自立を促すWISEでは、「生産されるものの価値」、居場所などの「労働過程の持つ価値」、「経済的自立を可能とする生活資金」の3点の社会的目的を掲げている(藤井・原田・大高, 2013)。社会政策学派における社会的企業には、営利を上げる事業性は重視されておらず、政府に統制されることやコミュニティにつながることが求められる。むしろ、社会政策学派は新自由主義学派の過度な商業化を批判し、社会的企業が事業性を強めることにより貧困層を排除し、地域密着や多様なステイクホルダーの参加といった社会性が失われると警告する(Kerlin, 2006藤井・原田・大高, 20134

2.3  ソーシャル・イノベーションの創出・普及プロセス(先行研究)

SIの創出・普及プロセスについては、まだまだ研究の蓄積が進んでいないが、新自由主義学派のMulgan(2007)や、谷本他(2013)が参考となる。Mulgan(2007)は、①社会的課題の発見、②社会的課題を解決するアイデアの開発、③社会的課題とアイデアのマッチング、④成功モデルの普及、⑤学習と適応による変革といったSIの創出・普及プロセスを提示し、谷本他(2013)は、Mulgan(2007)を踏襲し、①社会的課題の認知、②ソーシャル・ビジネスの開発、③市場社会からの支持、④SIの普及の4つのフェイズに分けたSIのプロセスを提示した。また、SIの普及においては、外部から得られた知見をそのまま取り入れず、組織内部の実情に合わせる工夫としての「模倣・翻訳・編集」を重視する(谷本他, 2013)。いずれにしろ、これらの研究は、社会的企業家というヒーローが社会的課題の認知をすることでSIのプロセスをスタートさせており、予定調和的であるとの批判もある(木村, 2016)。

社会政策学派の藤井・原田・大高(2013)の議論においては、多様なステイクホルダーを巻き込んだ組織学習によりソーシャル・キャピタルを蓄積するプロセスを重視しているが、次にあげる新自由主義学派もネットワークからの学びに焦点をあてており、SIのプロセスにおいて学習が重要であるという点では近似した議論を展開している(高橋・木村・石黒, 2018)。Westly, Zimmerman, and Patton(2006)は、SIが多様な動きの相互作用から生まれることを主張する。土肥(2005)は、企業・NPO・大学・中間支援ネットワークといったオープンで複合的なネットワークが、コミュニケーションなどの相互行為により社会的課題を解決するための情報を共有し新たな社会的価値が広がっていく事例を紹介する。この複合的なネットワークという視点に関連して、大室・大阪NPOセンター(2011)はSIを展開するマネジメントの特徴として「中心のないネットワーク」を挙げる5。「中心のないネットワーク」とは、社会的価値がその中で支配的な相互制御行為となっている社会的ネットワークを意味し、ネットワークの中で「社会的価値を共創し、アクターはその作られた社会的価値に基づいて行為する」。具体的には、「カリスマ企業家」をあえて中心から外す構造を企図したネットワークを作ることで、「カリスマ企業家」に依存することを避け、「カリスマ企業家」の価値観が固定されることを防ぐことができる。これには、ヒーローに責任や意思決定が集中することで、周りのメンバーが受け身になり組織機能が不全に陥る「ヒロイック・リーダーシップの罠」(Martin, 2003)を防ぐ意味合いがある。

2.4  ネットワーク理論に関する先行研究レビュー

上述のように、自由主義学派も社会政策学派もネットワークから新たな発見や学びを深めることを示唆しているが、そのプロセスを十分に明らかにしていない。このネットワークが学びを深めるというプロセスの解明には、社会ネットワーク理論の概念を応用できる。「弱い紐帯」ほど有益な情報をもたらすといった弱い紐帯の論理(Granovetter, 1973)もあるが、「強い紐帯」ほど信頼を醸成する(Krackhardt, 1992)という議論もあり、ネットワークの紐帯の強弱は状況に依る。また、ネットワークのブリッジ(集団と集団を結びつける唯一の紐帯)は、そのほとんどが「弱い紐帯」であるが、その9割は1年以内に消滅する(Burt, 2002)ため、紐帯のメンテナンスにはコストがかかることがわかる。この弱い紐帯の論理を発展させた「構造的空隙」論では、重複しない複数の情報源を分断している構造的空隙を埋めること、そしてその位置にいる行為者が積極的に資源を動員することがソーシャル・キャピタルを高め、イノベーションを喚起することを示唆する(Burt, 1992)。構造的空隙とは、「重複しない接触相手の間が隔てられており、2者の接触相手の間では重複のない関係になっている」ことを指す。さらに、Lin(2001)は、「構造的空隙」論にヒエラルキーの概念を付加し、「よりソーシャル・キャピタルにアクセスしやすいのは、相対的に高い地位にある行為者とつながるブリッジに近い位置にいる行為者である」と主張する。

これらのネットワーク論のほかに、学習を深めるネットワークを考える点では、「実践共同体」の概念が注目される。実践共同体は「学習のための共同体」(松本, 2013)の概念であり、「あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」(Wenger, McDermott, & Snyder, 2002)と定義される。Wenger, McDermott, and Snyder(2002)は、実践共同体が地域で孤立した知識や学習を越境的に結びつけると指摘するが、国内の研究でも、実践共同体が地域のネットワークの結節点となり、学習を促進することやイノベーションにつながるといったことが示唆されており、実践共同体への参加が地域活性化へ効果を及ぼすことが期待できる(石山, 2013松本, 2013)。そして実践共同体には、個人学習と熟達の促進のほかに、組織学習の促進や知識創造も役割としてあげられる(松本, 2013)。また石山(2013)は、地域のネットワークにおいて構造的空隙を埋める触媒の役割を重視しており、触媒の資質として、「素直に学ぶ姿勢」をもった「よそ者(若者)」をあげる。ここでの「よそ者(若者)」は、その分野への新規の参入者であり、素直に学ぶ姿勢をもっていることで新規参入であっても地域に受け入れられる。最後に、実践共同体の論理においては、「多重成員性」が特筆される。多重成員性とは、複数の実践共同体での多重所属を意味し、多重成員性が、複数の立場からの意味の検討やアイデンティティーの同一化の検討を促し、高次な学習へと導くとされる(松本, 2017)。

3.  研究の目的と方法

3.1  研究の目的

本稿の目的は、高齢者雇用促進のSIの創出・普及プロセスとその社会性と事業性を探索的に検討することである。吉澤(2009)は、企業が高齢者雇用により興味を持つようにするための仕掛けとして、高齢者雇用にSIを活用する視点を提示しているが、高齢者雇用促進のSIの社会性と事業性の両立を立証できていない。本稿では、中小企業では従来から高齢者を活用している事例が多く、高齢者雇用を継続しつつ事業性を確保している可能性があるとの視点に立ち、中小企業の事例を分析することにより、高齢者雇用促進のSIのプロセスを検証する。

一方、古村(2015)は、働きたくても働く場のない高齢者を活用し雇用の場を創出したSI事例として、岐阜県中津川市6にあるサラダコスモの事例を紹介しているが、高齢者雇用促進のSIの創出・普及プロセスの要因や背景を解明したとは必ずしも言い切れない。そこで、本稿では、中津川市から高齢者雇用が波及した4社の事例を調査対象として、その高齢者雇用促進のSIの創出・普及のプロセスを解明する。

本稿では、社会的企業を、社会政策学派が対象としたWISEなどの社会的所有の企業に絞らずに、新自由主義学派が想定する営利企業のCSRを含めた概念とする。そのため、本稿では、社会的企業が市場メカニズムを通じて社会的課題を解決するという視座に立つことになる。したがって、社会性と事業性を両立させる仕組みがイノベーション(革新)であり、SIであるからには社会性と事業性の両立を求められる。そのため、本稿では、高齢者雇用促進のSIを「社会的企業が、就労困難な高齢者に就労の場を提供するという社会的課題を解決するために、社会性と事業性を両立する仕組み」と操作的に定義し、以下のとおりリサーチクエスチョン(RQ)を設定する。

RQ1:高齢者雇用促進のSIは、どのような条件で創出され、普及するのか

RQ2:高齢者雇用促進のSIは、どのように社会性と事業性を両立しているのか

3.2  研究の方法

本稿では、研究方法としてケース・スタディ・アプローチを用いる。ケース・スタディ・アプローチは、先端事例や逸脱事例を分析することにより新たな仮説を導出することに適しており、複雑な相互作用や経路依存性などの「複雑な因果関係」の分析に適したリサーチデザインである(George & Bennett, 2005)。古村(2015)が取り上げた事例である中津川市の(株)サラダコスモ7と、そのサラダコスモに高齢者雇用の知見を伝授した(株)加藤製作所8、そして加藤製作所から高齢者雇用が波及していった(株)コミュニティタクシー9と(株)オハラ10を事例として取り上げる。これら4社は、一旦退職した高齢者を新たに外部から採用し、高齢者に就労の場を提供するSIが4社に波及したユニークな先端事例である。

具体的には、インタビュー調査、文献調査、参与観察の3つの手法を用いた11。インタビュー調査においては、2012年から2018年にかけて4社の経営者にインタビュー調査を行った。その後4社の経営者からのインタビューの調査の分析を受けて、背後の因果メカニズムを明らかにするために追跡調査を行った。追跡調査として、4社の経営者に追加のインタビューや電話やメールでの質問を繰り返した。その他、4社に勤務する高齢雇用者や、4社の経営者と交流のある企業・NPO法人の関係者、学者、地方公務員からも調査を行った。

4.  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの波及(事例)

中津川市には一旦退職した高齢者を新規に採用する企業が2社存在する。このような場が創出された直接の契機は、中津川市が中京学院大学へ調査委託した「中津川市の高齢者の生きがいと地域活動・生涯教育のあり方」アンケート調査である。中津川市では働きたいけど働く場のない高齢者が多くいるという調査結果に、加藤製作所の加藤景司社長が反応し高齢者雇用の場が創出された。加藤景司社長は、その調査報告書にヒントを得て、高齢者が主体となって土曜日曜に稼働する工場のコンビニエンス化を実行した。2001年2月22日に「土曜、日曜は、わしらのウイークデー」というキャッチコピーで新聞折り込みの求人広告を出し高齢者を新たに採用したことが高齢者雇用促進のスタートとなった。加藤製作所が高齢者雇用を始めた目的は、土曜日曜の工場稼働による生産量の拡大であり、当初から社会貢献を目的にしていたわけではなかったが、その後数々のメディアに取り上げられることになった。現在ではサラダコスモを始め数社へその高齢者雇用のノウハウが伝播している。加藤景司社長によると、高齢者雇用についての情報を交換した結果、高齢者雇用はサラダコスモの他に、多治見市のタクシー会社の(株)コミュニティタクシー、金沢市の食品加工業の(株)オハラへ波及した。加藤景司社長は各社の経営者と複数のネットワークでつながっており、高齢者雇用についての意見交換を行った。

コミュニティタクシーの岩村隆一会長は創業当初の2003年当初から生涯雇用を推進しようと考えていたが、具体的な採用方法などを思案していたところ、後述する倫理法人会12の会合で加藤景司社長より高齢者採用のノウハウを教わることとなった。コミュニティタクシーでは、高齢者募集の広告は加藤製作所から広告代理店を紹介してもらい、加藤製作所の名文句の「ただし年齢制限あり、60歳以上の方」を広告文面に使用している。

その後、加藤製作所からサラダコスモのちこり村事業へも高齢者雇用の知見が伝播した(古村, 2015)。サラダコスモの中田智洋社長は「私も大変親しくさせていただいている」加藤製作所から中津川の健康な高齢者のなかで定まった仕事のない人が50%もいるという話を聞き、高齢者雇用に対しての問題意識をもったという。

一方、オハラの小原繁社長と加藤景司社長とは2013年当初、倫理法人会の全国の会合で顔を合わせる間柄であった。当時、小原繁社長は人手不足で生産量を拡大できないことに頭を悩ませていたが、加藤景司社長の著作である加藤(2013)に刺激を受け、高齢者パートによる工場の早朝稼働を開始する。この工場の早朝稼働は、一時は24時間稼働に近いものになり、生産量の拡大が可能になった。Redlich(1951)は、これまでにない新たなイノベーションを「第1次イノベーション」、イノベーションが他の地域へ転移することを「派生的イノベーション」と呼ぶが、本稿の事例では、加藤製作所での高齢者雇用促進のSIが第1次SIであり、コミュニティタクシーなどの3社は派生的SIと言える。図1に、高齢者雇用促進のSIの普及を図示する。

図1 高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの波及

(出所)筆者作成。

5.  社会的企業家を取り巻く複合的な学びのネットワーク(事例)

高齢者雇用促進のSIに関連する複合的な学びのネットワークは、図2のとおり4つのカテゴリーに分けられる。

図2 社会的企業家を取り巻く複合的な学びのネットワーク

(出所)加藤製作所の加藤景司社長のメモをもとに、筆者にて加筆修正のうえ作成。

第1のネットワークとして、中津川市近隣の経営者の勉強会組織である「21世紀クラブ」である。21世紀クラブは、1992年に立ち上げられた経営者を主体とした勉強会組織であり、法人会員12社、個人会員80名で地域と企業を結ぶ学びのネットワークとして活動している。第2のネットワークは、「掃除に学ぶ会」である。中津川では、中田智洋社長が中心となり「中津川掃除に学ぶ会」が結成され、経営者らが中津川商業高校などで掃除研修会を開催している。第3のネットワークは、「NPO法人いわむら一斎塾」である。中津川市の隣の恵那市岩村に存在するNPO法人いわむら一斎塾は1995年に活動を開始し、21世紀クラブ、ちこり村、中津川倫理法人会などで講演を行い、佐藤一斎の『言志四録』の普及に努めている。これら3つのネットワークの中で、加藤景司社長と中田智洋社長との交流が深まった。第4のネットワークは、2007年に加藤景司社長らが中心となり立ち上げた中津川倫理法人会である。コミュニティタクシーの岩村龍一会長とオハラの小原繁社長は、一時、倫理法人会の各々の県組織の幹部を務めており、倫理法人会の全国大会などを通じて、加藤景司社長と知己となった。

これらの複合的な学びのネットワークの特徴として、2点挙げられる。第1に、21世紀クラブのような多様な人材を巻き込んだ地域の経営者の学びの場が、経営者に社会的志向性を意識させる視点を養った。これらの学びのネットワークはどれも実践活動を重んじる学びの場であり、この実践を重んじる姿勢が社会的課題を解決しようとする社会性を促進させた。これらの複合的な学びのネットワークは、あるテーマに沿った学びを深めることを目的としており、実践共同体と言える。そして、経営者は複数の実践共同体に所属しており、多重成員性が観察された。第2に、これらの学びのネットワークでは、アクターが入れ替わり活躍しており、いわば、「中心のないネットワーク」であり、アクターが交互に積極的に外部へ情報をとりにいくことによりネットワークが拡大している。そして、加藤景司社長と中田智洋社長は、各々の実践共同体の構造的空隙に位置しており、高齢者雇用促進のSIが普及するための触媒の役割を果たしていた。

6.  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの創出・普及プロセス(RQ1の分析)

6.1  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの創出・普及プロセス

本稿の事例では、社会的課題の認知のプロセスにおいて、図3に示すとおり2つのパターンが観察された。第1のパターンであるコミュニティタクシーとサラダコスモでは、高齢者雇用という社会的課題を認知することを契機に高齢者雇用促進のSIを開始したケースである。この2社は、高齢者雇用を開始する前から高齢者雇用とは別の面で社会的企業家としての機能を発揮しており、高齢者雇用を継続するなかで、高齢者雇用の経済的価値の認知を深めていった。いわば、「当初より意図されたSI」と言える。

図3 高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションのプロセス

(出所)筆者作成。

第2のパターンである加藤製作所とオハラでは、経済的制約から高齢者雇用を開始しており、高齢者雇用促進のSI創出に至る動機が社会的課題の認知ではなく、あくまでも生産量の拡大といった経済的課題の解決が動機となっていた。この2社とも主婦層をはじめとする現役世代のパート社員が採用できないために、止むを得ず高齢者を採用することになったわけである。この2社の経営者は、Domenico, Haugh, and Tracey(2010)が指摘する「社会的ブリコラージュ」(手近にあるものでなんとか間に合わせる)の能力を持っていたと言えるが、高齢者雇用を社会的課題として認知してから高齢者雇用を始めたわけではなかった。この2社は、高齢者雇用を継続するなかで、高齢者雇用の社会的価値の認知を深め、その社会的価値を地域へ積極的に宣伝していくことになった。経済的課題の解決策(ビジネスモデル)が徐々にSIに変容していく事例であり、「意図せざる創発的SI」と言える。先行研究では、SI創出の起点を社会的課題の認知に置いていたが、本稿の事例から、必ずしもSI創出の起点が社会的課題の認知でないこと、すなわち始めは社会的課題を認知せずともSI創出に至る事例があることが示された。

先行研究では、SIの主体が社会的課題を認知することにより、SIを起こすという予定調和的な論理展開がほとんどであったが、本稿の事例からは、経営者が複合的な学びのネットワークである実践共同体の中に位置することにより、経済的課題の解決のためのビジネスモデルがSIへ変容していくプロセスが発見された。イノベーション論の中では、漸進的イノベーションでは予定調和的なプロセスが適しており、急進的イノベーションには創発的なプロセスが適していることが議論されており(浜田, 2016)、SIの議論でも、市場メカニズムの中で社会的包摂を実現するという急進的なSIには創発的なプロセスが適していたと言える。

6.2  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの創出・普及の要因

高齢者雇用促進のSIの創出・普及プロセスの要因は、複合的な学びのネットワーク、すなわち実践共同体の多重成員性が形成され、さらに経営者が複数の実践共同体の構造的空隙に位置し、アクターの間で高齢者雇用促進のSIに必要な知見や思考を結びつける触媒の役割を果たしていたことにある。経営者が実践共同体の中から高齢者雇用促進のSIのアイデアを発見し、さらに、実践共同体の多重成員性が高齢者雇用促進のSIの普及を促した。具体的には、加藤景司社長ら経営者が構造的空隙に位置することにより、高齢者の採用方法や、リテンション施策(人材の維持・確保の施策)が他の3社へ普及していった。

ただし、社会的企業家が構造的空隙の位置にいるだけで、SIが創出・普及するのかと言うと、それだけではなく、次に示すような4点の要因も絡まって高齢者雇用促進のSIの創出・普及に至るプロセスが見られた。第1には、複合的な学びのネットワークすなわち実践共同体で培われた加藤社長と他の経営者との間の信頼関係が強固であったことが要因としてあげられる。強固な信頼関係すなわち強い紐帯があるからこそ、経営者に素直に学ぶ姿勢を生み、高齢者雇用の知見を模倣しようとする余地が生まれた。第2には、各々の企業の経営者が地域への社会的貢献の意識が高く、社会的課題を解決しようとする姿勢を有しているなど、経営者の倫理性が高かったことがSI創出の一因としてあげられる。第3に、各企業が高齢者雇用の知見を社内に取り入れるにあたり、谷本他(2013)が示唆する「模倣、翻訳、編集」のプロセスが存在した。すなわち模倣したアイデアを社内に受け入れやすいように翻訳し、さらにより良くするための工夫(編集)を加えていたことが、SI普及のもう一つの要因である。第4に、4人の経営者が高齢者雇用を継続する過程において、その社会的価値を新聞・雑誌やテレビへ積極的に宣伝する行動をとっていたことが、SIの普及を促す一因になっていた。

7.  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの社会性と事業性(RQ2の分析)

7.1  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの社会性の分析

4社では、働きたくても働く場のない高齢者に就労の場を提供しており、就労弱者を雇用するソーシャル・ファームであるとも言える。4社の経営者のインタビューから、近年は、高齢者が就労により生活資金の一部を賄うことが必要になっていることが判明しており、本稿の高齢者雇用促進のSIにおいても、「経済的自立を可能とする生活資金」の価値を高齢者へ提供していた。さらに、4社の経営者は、新聞、雑誌、テレビへの露出を高めることにより、高齢者雇用の意義と可能性を宣伝し、高齢者に働く喜び、生きる喜びを提案していた。高齢雇用者からは、職場で仲間に会えることを生きる張り合いにしているといった発話データを得ており、高齢者へ居場所を与え、高齢者の承認欲求を満たしていたことがわかる。また、4社ともに外部労働市場より自社での職務経験のない高齢者を新規採用し、育成していた。これは、「現実の仕事を通しての技能や自信の獲得」(藤井・原田・大高, 2013)に該当する。このように、本稿の事例では、「労働過程の持つ価値」も実現しており、営利企業においてもWISEの社会的目的であった社会的包摂を実現できることが示された。結果的に、高齢者雇用促進のSIは、社会的に排除された高齢者に就労の場を与え、居場所を作り、エンプロイアビリティを高めるといった「労働や社会への再統合」を果たしていたと言える。

7.2  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの事業性の分析

4社では、高齢者雇用を始めてから6年、あるいは18年経過しており、高齢者雇用のもと事業が継続されており、事業性が保持されていた。その要因としては、「福祉型雇用」ではなく、高齢者が企業の戦力となっていたことが挙げられる13

次に、高齢者雇用の経済的効果として2点挙げる。第1に、地域労働市場における人手不足を高齢者雇用で補う効果があった。これは、主婦層のパートや派遣での人手確保が困難になる中で、高齢者の採用により生産現場に必要な労働供給量を確保していた。第2に、高齢者雇用は新たなイノベーションの可能性を秘めていることが観察された。コミュニティタクシーでは、「タクシーの接客は業務マニュアルでは成し得ないドライバー本人の人格、人間力という個々の資質に頼ることが多く、その点では高齢者の能力は高い」という状況が観察された。サラダコスモのちこり村では、高齢者雇用により店舗内での接客に優しさが生まれ販売促進に貢献していた14。このように、高齢雇用者の戦力は、「現役世代の力になる能力」よりも「第一線で働く能力」(大木・鹿生・藤波, 201415としての効果が大きかったため、事業の継続性が維持されていたと言える。

7.3  高齢者雇用促進のソーシャル・イノベーションの社会性と事業性の両立の要因

高齢者雇用促進のSIの社会性と事業性の両立の要因として、次のとおり3点述べる。第1に、4社の経営者は、高齢者雇用を開始する当初、高齢者は使えないという無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)を持ちあわせておらず、柔軟な思考を持っていた。そのため、躊躇することなく高齢者雇用を始めることができ、高齢者への期待表明などの現役世代と変わらぬ対応を実行できることになった。これらの要因が、高齢者雇用を「福祉型雇用」で終わらさずに、高齢者の戦力化を可能にしていた。第2には、高齢者が入社後に職場に定着することができるように、リテンション施策に工夫を重ねていたことが挙げられる。このリテンション施策の中で特徴的なことは、高齢者を企業のルールに合わせるのではなく、企業のルールを高齢者に合わせる姿勢があった。4社では、高齢者のパートに対し柔軟な勤務シフトや勤務環境を敷いていた。たとえば、加藤製作所では高齢者が働きやすいよう作業台の高さの改善や照明の調整など、働きやすい職場づくりを行っていた。第3には、事業性の確保にあたっては、自社の努力に加え、公共セクターからの支援を取り付ける姿勢も顕著に見られた。加藤製作所では、政府の高齢者雇用助成金を活用しており、オハラでは地方公共セクターからの支援を積極的に受けていた。さらに、オハラでは地方公共セクターへ高齢者就労の媒介機関となるシニア向けのハローワークの創設を働きかけていた。その他、各社は、厚生労働省や経済産業省などの公共セクターより高齢者雇用で表彰されており、これらの表彰も高齢者雇用の促進の一助となっていた。このように、本稿の事例では政治とのつながりを維持しながら、社会性と事業性の両立を図る様子が見られた。

最後に、本稿で見出された「意図せざる創発的SI」について、社会政策学派と新自由主義学派との比較分析を表1に示す。「意図せざる創発的SI」は、社会政策学派とも新自由主義学派とも相違して、当初より社会的課題を意図せずに、結果的にSIが創出された創発的なSIであったが、社会政策学派と新自由主義学派の特徴を融合したハイブリッドなSI事例でもあった。社会政策学派は、市場メカニズムを重視せずに労働統合といった社会的包摂を目指す。一方、新自由主義学派は、市場メカニズムを重視するが労働統合といった社会的包摂への関心はそれほど高くない。それらに対し、「意図せざる創発的SI」は、市場メカニズムの中で労働統合といった社会的包摂を実現しており、新自由主義学派と社会政策学派のハイブリッドな側面を有している。

表1 ソーシャル・イノベーションの3類型
類型 SIの主体 社会的課題の当初からの意図 労働統合型(社会的包摂の目的) 市場メカニズムの活用 政治とのつながり コミュニティとのつながり 特徴
社会政策学派のSI 社会的所有の企業(WISE、協同組合) ○当初より労働統合という社会的課題を意図する ○社会的包摂を目的とする △政治、コミュニティ、市場とのバランスを図る ○政治主導の側面がある ○コミュニティとのつながりを重視する 政治とのつながりが強く、労働統合型に特徴がある
新自由主義学派のSI 営利企業、社会的志向性企業 ○当初より社会的課題を意図する ×労働統合を扱ったものは、ほとんど存在しない ○商品、サービスを通じてのSI ×政治とは一定の距離を置く立場 ○ステイクホルダーとして、コミュニティと関わる 市場メカニズムの中でのSIであり、労働統合型ではない
意図せざる創発的SI 営利企業 ×当初より社会的課題を意図しない ○結果的に社会的包摂を実現した ○市場メカニズムの中でのSI △行政の支援を積極的に受ける ○実践共同体など地域コミュニティとの交流が多い 市場メカニズムの中で、労働統合型SIを実現した

(出所)筆者作成

8.  考察

本稿は、働きたくても働く場のない高齢者がいるという社会的課題に対し、営利企業の経営者が、地域と密着した複合的な学びのネットワークからその解決策を学び、高齢者への就労の場の提供といった新しい社会的価値を創出した事例であり、次の2点の理論的意義を有する。第1に、市場メカニズムを重視するSI(新自由主義学派)と就労困難な人々の社会的包摂を目指すSI(社会政策学派)とのハイブリッドな事例を発見したことにある。先行研究においては、市場メカニズムにより労働統合を実現したSIを分析したものは存在しなかったが、高齢者雇用促進のSIにおいては、市場メカニズムにより就労弱者である高齢者の社会的包摂が可能であることを立証できた。そして、このことは、社会的企業が事業性を強めることで貧困層を排除するという社会政策学派の主張に対する反証ともなる。第2に、ほとんどの先行研究は、社会的課題の認知をSIの創出・普及のプロセスの起点とする予定調和的な議論であったが、本稿の事例では、経済的課題の解決策(ビジネスモデル)がSIに徐々に変容していく、「意図せざる創発的SI」という新たなプロセスが示唆された。SIの先行研究では、従来創発的なプロセスを議論されていないが、今後は創発的なプロセスも視野に入れることにより、SIの実現可能性を広げることが示唆される。

実践的意義について、1点述べる。本稿では、地域に密着した実践共同体での学びが経営者の社会性を高め、SIを創出・普及する可能性が見出された。実践共同体の多重成員性、すなわち経営者が複合的な学びのネットワークに所属し、構造的空隙に位置することにより、SIの創出・普及が促された。今後は、経営者に対して、既存の実践共同体への参加を促し、そこでの活動を活発化させることでSIの創出・普及につなげることが期待できる。

最後に、今後の研究の課題について述べる。本稿は、中津川から派生した4社に限られた事例である。今後は、本稿の事例からの波及サンプルや本稿以外の事例など、観察事例を増やし分析の精度を高める必要がある。そして、その観察事例から見出されたことの普遍妥当性を検証することも今後の課題である。

謝辞

本稿の調査にあたり、加藤製作所、サラダコスモ、コミュニティタクシー、オハラの関係者の皆様には多大なご協力をいただいた。また、2名の査読者からは貴重かつ有益なコメントをいただいた。そして、指導教員の石山恒貴教授には、多面的、かつ長期にわたり指導していただいている。記して謝意を表す。

1  外部労働市場とは、樋口(1996)によると、「企業組織の外部における労働市場資源配分機能」を意味し、「企業組織の内部における労働市場資源配分機能」の内部労働市場に比較して使用される。

2  ソーシャルファームは、障害者などの就労困難者(就労弱者)を多数雇用する企業を意味する。

3  社会的所有とは、私的所有の対比概念であり、企業の財産の所有権や生産手段の決定権を国家、自治体、共同、あるいは従業員が所有していることを意味する。

4  Kerlin(2006)は、新自由主義学派と社会政策学派の各々の社会的企業を比較分析している。

6  中津川市は岐阜県南東部に位置し、長野県に隣接する人口約8万人の市である。歴史的には、中山道中津川宿、落合宿、馬籠宿といった宿場町を中心として発展した町である。

7  サラダコスモは、もやしやちこりなどの野菜生産などを営む。2006年に開業した教育・観光型生産施設「ちこり村」事業では、事業に従事する90名のうち約半数がシニア社員で占められる。

8  加藤製作所は中津川市のプレス板金部品メーカーであり、従業員のうち約半数がシニアのパート社員で占められる。

9  コミュニティタクシーは、岐阜県多治見市のタクシー会社であり、地域の高齢者の足となることを使命として市民出資(72人)で設立されたコミュニティビジネスである。経済産業省「ソーシャルビジネス55選」に選定されている。

10  石川県金沢市に本社を置くオハラは従業員80名の食品加工会社であり、こんにゃくの生産をはじめ、地場の規格外農水産物の加工商品などを製造販売している。

11  インタビューや文献調査のほかに、地域のイベントへの参加、工場見学、あるいは経営者との懇親会などの参与観察も試みることにより調査分析を深めた。

12  倫理法人会は、経営者の自己変革、率先垂範により社風や地域を変えることを目標に組織された組織であり、経営者モーニングセミナーや朝礼活動を実施している。

13  例えば、オハラの芋ペースト事業の売上は、2014年度が116百万円、2015年度が113百万円、2016年度が121百万円、2017年度が192百万円であり、順調に推移している。

14  ちこり村の売上と高齢雇用者数は、2010年度が490百万円、10人、2011年度が500百万円、12人、2012年度が510百万円、19人、2013年度が514百万円、20人、2014年度が526百万円、23人、2015年度が564百万円、23人、2016年度が564百万円、23人、2017年度が639百万円、27人、2018年度が790百万円、27人であった。

15  大木・鹿生・藤波(2014)は、2012年改正高年齢者雇用安定法に伴い就業期間が長期化し、それに対応する形で、60歳代前半層への期待役割が「第一線で働く能力」から「現役世代の力になる能力」へ変化したことを高齢・障害・求職者雇用支援機構(2013)のアンケート結果の再分析から明らかにしている。

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