イノベーション・マネジメント
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研究ノート
大日本製薬株式会社の設立および発展経緯の考察
―『我社五十年のあゆみ』を中心として―
安士 昌一郎
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2022 年 19 巻 p. 127-136

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抄録

本稿では、大日本製薬株式会社における企業家活動を取り上げる。資料『我社五十年のあゆみ』を得たことで、共同出資により製薬会社、薬品試験機関を設立した大阪薬種商の重要性がより明確に把握できた。

当該資料により、半官半民の大日本製薬会社が設立された時点で、パンデミック時の医薬品の安定供給が想定されていたことが判明した。この企業は、後に大阪の薬業者により共同設立された大阪製薬株式会社に吸収合併された。また薬業者に、良質な医薬品を調達し販売できないという問題意識があったこと、その状況を好転させることで「名声を回復する」意図が存在したことが明らかとなった。

また品質試験の為の企業も共同設立した際は、欧米に倣って薬品試験の業務は本来民営にて行われるべきであると主張している。更に、日本の近代化が進行するに従い官営の衛生試験所が廃止される可能性もある、とも主張した上で私立の試験機関を立ち上げるに至ったことが分かった。

彼らの行動力は薬業調査会の設置提案という形で、政府への働きかけにも表れている。加えて、個別の企業においても医薬品研究の進展を助ける育英事業が見られた。

これまで研究してきた大阪の薬業者が持つ先見性、行動力、リーダーシップについて、新たな資料を通し、より一層明らかとなった。

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© 2022 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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