イノベーション・マネジメント
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査読付き投稿論文
戦略への縦断的アプローチによる組織アイデンティティ形成の考察
石谷 康人
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2022 年 19 巻 p. 71-89

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抄録

組織アイデンティティの研究分野では、その内容の形成にまつわる文献が少ない。そのため、組織アイデンティティの形成の「どのように(方法)」と「何を(内容)」と「なぜ(理由)」を結びつけることが課題となっていた。そこで、本論文では、組織の戦略とアイデンティティの相互関係性に着目しつつ、戦略の継続的遂行に対する縦断的アプローチから、組織アイデンティティの内容の形成について述べた。そのために、日本の不織布産業における乾式不織布のパイオニアであり、日本初となる高機能かつ高付加価値の不織布を積極的に開発しつつニッチ市場で競争優位を確立している金星製紙株式会社の事例研究を実施した。

同社の開始時期の異なる再生PET繊維使用不織布事業や合繊エアレイド不織布事業の成功事例を調査することで、戦略とアイデンティティの相互関係性の視座から組織アイデンティティの内容の形成について考察した。その結果、同社の組織アイデンティティの形成では、代々の経営者による「高付加価値製品の積極的な開発によるニッチトップ戦略の追求」が深いプロセスとなっていたことが分かった。同社は、その影響を受けて(どのように)、自社の組織アイデンティティの内容を(何を)、不織布のニッチ市場で持続的競争優位を確立するために(なぜ)形成したことが分かった。

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© 2022 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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