イノベーション・マネジメント
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Print ISSN : 1349-2233
研究ノート
日本の地域発展モデルの構築
―イタリアのテリトーリオ戦略の適用―
木村 純子二階堂 行宣佐野 嘉秀
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2023 年 20 巻 p. 167-182

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抄録

本研究は、持続可能な地域発展の実例として注目されるイタリアのテリトーリオ戦略の実践より地域発展のモデルを抽出したうえで、日本における地域発展のモデル構築に向けた試論を行う。調査から、イタリアのテリトーリオ発展モデルをそのまま日本に適用することは難しいことが明らかになった。日本の特徴として、第1に、テリトーリオの範囲は、行政区によりフォーマルに区切られながらも、行政区の中に散在する同業者団体や個別の企業を多元的な核としつつ、これらのアクターがそれぞれ想定する地域ブランドや地域アイデンティティの重なり合う範囲として緩やかに成立している。第2に、交易がコミュニティ形成の契機となる。交易をつうじて地元地域や日本の市場、さらに世界の市場へと開かれた市場に向けた経済活動が、地域ブランドや地域アイデンティティを形成する。第3に、交易の担い手となるのは、農業・漁業等のほか、関連する加工製造・流通・飲食・宿泊などを営む事業主やその業界団体といった複数セクターのアクターである。日本型テリトーリオの形成には多様なアクターの自律的活動や、アクター間のネットワーク形成に向けた仲介や支援が欠かせない。企業活動が重要であることから、そこで働く社員について、ワークライフバランスを実現できる雇用機会や、消費者としての生活の充実も欠かせない。外部からの環境整備や支援も重要であり、行政の役割が期待されるプロセスである。

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© 2023 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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