イノベーション・マネジメント
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Print ISSN : 1349-2233
研究ノート
米国におけるセグメント会計基準の改定案
―FASBによる公開草案―
中野 貴之
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2023 年 20 巻 p. 183-194

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抄録

米国の会計基準設定主体であるFASB(財務会計基準審議会)は、2022年10月に、セグメント会計基準に関する改定案を公表した。本稿の目的は、同改定案公表に至る経緯を跡づけるとともに、提案内容について検討することである。当初、FASBは、(1)セグメンテーションにおける集約基準の改善、および、(2)開示項目の拡充という二つの主題の検討に着手した。(1)については審議の結果、コスト効率的に集約基準の改善を図ることは難しく、最終的に審議の対象から外された。一方、(2)については、現行基準の維持を前提に、CODM(最高経営意思決定機関)に定期的に提供され、かつ、セグメント利益に算入されている、重要な費用項目の追加的開示が改定案で提案されている。かかる重要な費用の原則の導入により、研究開発費や人的投資をはじめ、企業における重点投資分野および企業の戦略がより鮮明化することが期待される。ただし、一部のFASB委員は重要な費用の原則の有効性を疑問視しており、当該原則がどの程度機能するかは未知の要素を含んでいる。米国は、これまでセグメント会計基準の形成を主導してきているだけに、今後の審議が注目される。

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© 2023 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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