外部環境の変化が激しく、不確実性が高まり、国内外の競争が苛烈になる中、内部資源だけで持続的な競争優位性を獲得するのが困難となり、外部資源の獲得・活用が必要となってきている。外部資源を獲得・活用する手段として、80年代後半から「グローバルで」「戦略的な」提携、すなわち、国際戦略的提携で「協調」するケースが増えてきている。
本稿では、日本の製薬企業が国境を越えた戦略的提携を、どのように活用しているのか、その成功に必要な要素は何か、について、提携類型別、戦略類型別に定量的、定性的に分析を行った。
その結果、日本の製薬企業は、国際戦略的提携を通じ、内部資源の「補完」「拠出」よりも、知識等の内部資源を相互に持ち寄り、組織間学習を行い、新たなイノベーション創出を目指す「共創」に取り組んでいる。また、国際戦略的提携を通じた「協調」は、国境を越えた内部資源による「支配」に比して、企業の持続的競争優位性の獲得に寄与している。
国際戦略的提携を成功に導くためには、信頼関係、相互の能力把握、組織間学習、経営陣のコミットメント、パートナー間多様性の活用などに加え、適切に提携を形成、マネジメントする能力と、提携相手にとって魅力的な内部資源・ケイパビリティ、「創薬力」が必要となる。