本研究は、従来の座学中心の女性起業家支援プログラムの限界を克服するため、「伴走サークル型支援プログラム」という新しいアプローチを提案・実施し、その効果を検証した。特に、帝国データバンク(2023)の調査で日本の女性経営者比率が全国平均(8.3%)を下回る北陸地方(7%)において、ネットワーク形成とロールモデル効果の観点から、女性起業家の成長促進要因を実証的に明らかにすることを目的とする。
同プログラムは、座学とイベント出店や異業種交流会参加といったビジネス実践体験教育を取り入れた点が特徴の起業家支援プログラムである。このプログラム参加者を研究対象とし、2022、2023年度参加者88名のうち45名と、メンター2名に対して期中の参与観察と約3ヶ月後に定性調査を実施した。結果、「自発的・中期的なネットワークの形成」、「ロールモデル効果」が機能し、女性特有のキャリア中断やビジネス経験の不足を補って、プログラム終了後の自発的な起業家行動と継続へ繋がったことが明示された。結論として、ネットワーク理論の「弱い紐帯の強み」を生成し、ロールモデル効果を併用した「伴走サークル型支援」が、女性起業家育成に資する可能性を発見した。本研究の新規性は、①実践的な体験学習の効果の実証、②メンターによる伴走支援の効果の実証、③参加者間の相互学習を統合した支援モデルを提示する、の3点である。