イノベーション・マネジメント
Online ISSN : 2433-6971
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論文
ダイキン創業者・山田晁の企業家史研究
―経営理念と企業変革力―
片山 郁夫
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2026 年 23 巻 p. 1-20

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抄録

本研究は、ダイキン工業創業者・山田晁の企業家活動を対象に、その経営理念と意思決定の特徴を歴史的に再構成し、経営学理論との接点を明らかにすることを目的とする。日本の企業家史研究は、渋沢栄一や松下幸之助など代表的経営者を対象に、理念や思想に着目した多くの研究成果を積み重ねてきた。他方で、そうした研究の多くは経営者本人の著作や言説に依拠する傾向が強く、理念と戦略的意思決定や技術革新を結びつけた分析は必ずしも十分に展開されてきたとは言い難い。本研究では、一次資料(社史など)および二次資料を用いて山田の経営実践を歴史的に再構成し、イノベーション・マネジメントや両利きの経営といった理論的枠組みとの接続を試みた。

山田は1930年代に軍需事業に従事しながらも冷凍機や空調機といった民需製品の開発を進め、戦後は米軍特需を活用しつつ空調産業へのシフトを実現した。さらに1960年代以降は海外展開を強化し、グローバル企業への基盤を築いた。これらの意思決定は、既存事業と新規事業の両立を図る両利きの経営の先駆的事例と位置づけられる。本研究の成果は、①理念と戦略・組織の相互関係に着目することで企業家史研究を補完すること、②歴史的事例を通じてイノベーション理論の適用可能性を検討すること、③日本的経営理念と国際戦略の連関を示すことにある。以上、山田晁の事例は「理念に根ざした企業変革力」を考察する上で重要な学術的意義を持つ。

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