2003 年 18 巻 2 号 p. 75-77
本研究は,パーキンソン病(PD)患者を対象に介護保険導入前・後における退院後の転帰先と入院・退院時の機能的自立度評価法(FIM)による変化および入院期間について比較調査し,PD患者の社会復帰に介護保険導入が及ぼす影響について検討した。対象は,介護保険導入前に兵庫県立リハビリテーション中央病院に入院したPD患者18例(男性11名,女性7名;平均年齢65.2±9.4歳)と介護保険導入後に入院したPD患者25例(男性13名,女性12名;平均年齢69.7±6.5歳)とした。介護保険導入前・後における転帰先の比較では,介護保険導入後の在宅復帰率が全体の8%減少傾向を,転院および施設入所がそれぞれ7%および1%増加傾向を示した。介護保険導入前・後において退院時FIM総得点は,入院時FIM総得点と比較していずれも有意に高値を示したが(p<0.001),介護保険導入前・後で入院時および退院時平均FIM総得点は有意差を認めなかった。しかし平均入院期間は有意に延長していた(p<0.05)。これらの結果は,PD患者の社会復帰に介護保険導入が及ぼす影響と考えられた。今後,PD患者の在宅および社会復帰を進めていく中で,介護保険制度の利用状況やその活用法について詳細な検討が望まれる。