抄録
本研究の目的は,圧力分布測定システムと実験モデルを用いて,椅子座位時の背もたれと骨盤の位置関係が坐骨部荷重ピーク値とずれ応力に与える影響を調べることであった。対象は,健常成人男性10名(平均年齢22.4±2.3歳)であった。その結果,荷重ピーク値は,背もたれにもたれることで有意に低値を示し,骨盤を前方へ移動させて体幹を後方傾斜させた方がより低値を示す傾向にあった。また,ずれ応力の推定値は,基準位置では1.8±0.7 kgf,5 cmでは2.2±0.6 kgf,10 cmでは2.2±0.5 kgfであり,骨盤を前方へ移動させた方が基準位置よりも高い値を示した。これらの結果は,背もたれとの距離が近い位置で背もたれにもたれることが,坐骨部への荷重は少なく,また,ずれ応力は少ないため,褥瘡予防上有効であることを示唆した。