抄録
本研究の目的は,重量の漸増および漸減に対する肘関節筋の筋出力調節を筋電図を用いて明らかにすることである。対象は健常男性7名。課題は,20秒間の漸増・漸減的負荷に対して,肘関節屈曲90度を等尺性に保持するものである。上腕二頭筋および腕橈骨筋それぞれの課題開始時から終了時までの1秒毎の筋積分値を求め,重量と回帰分析を行った。結果,両筋の筋活動は,重量と高い相関を示し,負荷変動に対応したものであった。両筋活動の時系列変化は,両者が相互に平行して変化するパターンが大部分を占めた。しかし,一部の被験者において,相補的に変化するパターンが認められた。すなわち,一方の筋活動が増加すれば,他方は相対的に減少するパターンを示した。この特殊な活動パターンから,両筋間における代償の可能性が考えられた。また,二つの活動パターンが認められたことから,単関節運動であっても,その収縮様式には複数の自由度が存在することが示唆された。