2006 年 21 巻 4 号 p. 427-432
立位で頚部に振動刺激を与えると,頚部固有受容器からの感覚変化が生じることで頭部位置の混乱を引き起こし,自己中心参照枠が変更され,姿勢変化が生じるとされている。本研究の目的は,健常者を対象に頚部振動刺激の介入を行い,その残存効果によって起立動作の身体重心変位が生じるかどうか,被験者の内省報告と三次元動作解析装置,および床反力計を用いて検証することである。計測は,座位で頚部後方へ振動刺激を1分間与え,被験者に頚部前屈の運動錯覚を生じさせた後,起立動作とそれに伴う重心変位を記録した。その結果,起立動作における重心位置の前方変位が生じ,さらに6分後までその重心前方変位が確認された。振動刺激によって誘発される,頚部固有受容器からの継続された感覚変化が起立動作後の重心位置に影響を及ぼすと結論した。