抄録
〔目的〕“注意”の機能低下は,転倒要因の一つに挙げられている。本研究では,“注意”の機能向上によって,地域在住高齢者の転倒を予防することが可能となるのか検討した。〔方法〕対象は要介護・支援状態にない地域在住高齢者63名(平均年齢;83.3±5.9歳)とし,注意機能トレーニングと運動介入を行う群21名(注意運動群),運動介入のみを行う群21名(運動群),それにコントロール群21名に割り付けた。介入を行った2群は共に,標準的な運動介入を週に1回の頻度で6ヶ月間実施した。注意運動群では,それに加えて注意トレーニングを実施した。〔結果〕注意運動群では,二重課題条件下での歩行能力向上効果と注意機能向上効果を認めた。さらに,注意運動群でのみ介入前後6ヶ月間の転倒発生率が減少していた(24%→10%)。転倒予防には“注意”の機能向上が重要である。