2010 年 25 巻 2 号 p. 299-303
〔目的〕高齢者における転倒の多くは滑りやつまずきといった外乱刺激が加わった時に生じており,既存の評価指標では明らかにすることのできない転倒リスク保因者を,外乱刺激を与えることで発見できる可能性がある。そこで本研究では,新たに開発した歩行時側方傾斜外乱刺激装置を用いて,高齢者と若年者の外乱負荷応答の違いを明らかにすることを目的とした。〔対象〕対象は,高齢者群13名(年齢77.9±3.9歳),若年者群15名(年齢20.1±3.1歳)であった。〔方法〕測定は重心動揺計を用い,至適歩行速度での歩行中,不意に与えられた側方傾斜外乱刺激に対する反応を計測し,反応動態を高齢者と若年者とで比較した。〔結果〕重心の座標推移から加速度を算出した結果,高齢者群は若年者群に比べ,外乱刺激に対して姿勢バランスを保持する二次的な負荷応答が有意に小さかった。〔結語〕この指標が外乱刺激に対する高齢者と若年者の反応動態の違いを反映している可能性が示唆された。