抄録
〔目的〕二重課題が歩行中の動揺に対する反応的運動制御の適応過程に及ぼす影響を明らかにすることとした.〔対象〕健常男子大学生20名で,このうち二重課題群と単一課題群を各10名とした.〔方法〕三次元自動動作分析装置および地面反力計による計測値から力学的負仕事および身体に加わる衝撃力を算出し,歩行中の動揺に対する適応過程を両群間で比較した.〔結果〕両群の衝撃力および足関節の負仕事の適応過程に有意な差はなかったが,膝関節の負仕事は,二重課題群の方が有意に遅い適応的変化を示した.〔結語〕二重課題は,歩行時の下肢関節による衝撃吸収能の適応過程を部分的に遅延させるという機能の損失を生じさせることが示され,このことは転倒発生機序の理解に寄与するものである.