理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
30 巻, 4 号
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原 著
  • ─ラットによる実験的検証─
    原口 脩平, 白根 歌織, 沖 貞明, 積山 和加子, 梅井 凡子, 高宮 尚美, 小野 武也
    2015 年 30 巻 4 号 p. 489-492
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕温熱療法直後における拘縮関節の可動性増加の有無を検証した.〔対象〕Wistar系雌ラット(8週齢)12匹とした.〔方法〕ラットの右側後肢足関節を,最大底屈位で1週間ギプス固定した.温熱療法群とコントロール群に分け,前者に対しては渦流浴を実施した.その後,両群のラットの足関節に対して,他動的に最大背屈させる際の最大抵抗力を測定した.〔結果〕最大抵抗力の中央値は温熱療法群で2.8N,コントロール群は3.0Nであり,両群間に有意差は認められなかった.〔結語〕温熱療法直後において,拘縮関節の可動性増加は認めないことから,温熱療法によるコラーゲン線維の伸張性増加は不十分であると考えられる.
  • ─膝関節機能障害を想定した場合─
    藤本 静香, 藤本 修平, 太田 隆, 金丸 晶子
    2015 年 30 巻 4 号 p. 493-498
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝関節機能障害で問題となると想定される基本動作と日常生活活動(ADL)の関連性を,理学・作業療法学生がどのように捉えているのかを把握する.〔対象〕理学・作業療法学生95名とした.〔方法〕膝関節機能障害に対して用いられる評価表から抽出された基本動作とADLの関連性について,質問紙による分析を試みた.〔結果〕ADLに強く関連すると考える基本動作は,歩行および立位保持,立ち座り,しゃがみであった.〔結語〕学生は,一般的にADLに関連すると予測が容易である基本動作を想像する傾向が認められた.
  • 正保 哲, 柿崎 藤泰
    2015 年 30 巻 4 号 p. 499-502
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕中間座位と後傾座位において胸郭拡張差と上下胸郭体積変化について検討することを目的とした.〔対象〕若年男性12名とした.〔方法〕三次元動作解析装置を用い胸郭拡張差と胸郭体積変化を算出した.胸郭拡張差の測定は,第3肋骨と第10肋骨の高さとし,胸郭体積変化は胸骨剣状突起より上部を上部胸郭,下部を下部胸郭とした.〔結果〕上下部胸郭の体積変化は,中間座位で上部胸郭が下部胸郭に対して有意に大きく,後傾座位で上部胸郭,下部胸郭に対して有意な減少を示した.〔結語〕後傾座位では上部胸郭の体積変化が大きく減少し,この体積減少が肺活量および最大吸気量低下の要因になることが示唆された.
  • 熊野 貴紀, 谷 浩明
    2015 年 30 巻 4 号 p. 503-508
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕全国理学療法士養成校における臨床実習形態の違いを調べるためにアンケート調査した.〔対象〕理学療法士養成校241校に質問紙を郵送し回答のあった94校とした.〔方法〕学校種別,学生数と学科教員数,実習期間,実習前後の介入方法,学校提出課題,課題の使用状況を質問紙による郵送法で実施した.〔結果〕回収率は,39.2%で学校種別による偏りも少なかった.実習前の介入は,座学での介入が4年制大学の48.6%に比べ,3年制専門学校で59.3%,4年制専門学校で63%と多く実施されていて,実技でも同様の傾向であった.学校提出課題では,レポートが3年制専門学校の81.5%に対し4年制大学で68.4%と少なく,逆にレジュメは,3年制専門学校の70.4%に対し4年制大学で84.2%と多かった.〔結語〕全国理学療法士養成校の臨床実習に向けた様々な介入が伺え,学校種別による違いも認識された.
  • ─下肢荷重率と片脚立位時間の検討─
    加嶋 憲作, 山﨑 裕司, 河邑 貢, 津田 泰路, 大菊 覚, 峯田 拓也, 馬渕 勝, 篠原 勉
    2015 年 30 巻 4 号 p. 509-512
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕下肢荷重率および片脚立位時間と独歩自立との関係を検討すること.〔対象〕65歳以上の高齢入院患者241名とした.〔方法〕下肢荷重率を4群,片脚立位時間を5群に区分し,それぞれの群毎に独歩自立例の割合を算出した.〔結果〕下肢荷重率が高い群,片脚立位時間が長い群において独歩自立例は多かった.下肢荷重率90%以上群では全例が独歩自立し,70%未満の群では全例が非自立であった.一方,片脚立位保持が困難な症例でも独歩自立例が存在した.片脚立位保持が困難でありながら独歩が自立していた者は,独歩非自立例に比べて有意に下肢荷重率が高値であった.〔結語〕片脚立位時間よりも下肢荷重率が独歩の可否をより正確に判別できると考えられた.
  • ─身体活動量の評価指標は歩数のみで評価が可能か?─
    陶山 和晃, 朝井 政治, 田中 貴子, 田中 健一朗, 宮本 直美, 髻谷 満, 千住 秀明
    2015 年 30 巻 4 号 p. 513-518
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健常高齢者の身体活動量を歩数のみで評価できるかを検討すること.〔対象と方法〕対象は102名の健常高齢者とした.1日の身体活動量(歩数と身体活動関連エネルギー消費量 “PAEE”)は単軸加速度計を用いて評価した.加えて,身体活動に関連すると考えられる因子(BMI,大腿四頭筋筋力,握力,呼吸機能,うつ症状,地域別環境,装着率)を評価した.〔結果〕歩数とPAEEには高い相関が認められた.さらに,重回帰分析により,年齢,握力,大腿四頭筋筋力,装着率は歩数とPAEEに影響を与える共通の因子であることが明らかとなった.〔結語〕歩数がPAEEに対して充分な評価指標となり,健常高齢者の身体活動量は歩数のみで評価できることが示唆された.
  • 山田 健二, 須藤 明治
    2015 年 30 巻 4 号 p. 519-521
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕足把持力と50 m走の疾走速度との関係について明らかにすることを目的とした.〔対象〕健康な男子学生101名を対象とした.〔方法〕足把持力は,足指筋力測定器を用い,片足で椅座位姿勢にて3回行った.50 m走は,裸足と靴の2条件で行い,それぞれ2回行った.〔結果〕靴よりも裸足の疾走速度は大きかった.また,両条件において,足把持力と正の相関関係が認められ,相関係数には条件間で差は認められなかった.〔結語〕足把持力は,疾走能力に重要であり,基礎的な身体づくりに役立つ能力であると示唆された.
  • 岡本 伸弘, 増見 伸, 水谷 雅年, 齋藤 圭介, 原田 和宏, 中村 浩一
    2015 年 30 巻 4 号 p. 523-527
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕栄養状態の観点から,大腿骨頸部骨折患者の歩行能力の推移と到達水準を明らかにすること.〔方法〕入院時の栄養状態を3群に区分した.各群における歩行能力の推移の検討は,Friedman検定後に多重比較検定を行った.また,歩行自立水準に到達した時期を調査した.〔結果〕歩行能力の推移について,通常栄養群は入院時から入院4週目まで増加した.低栄養リスク群は入院時から入院8週目まで増加した.低栄養群は入院時から入院6週目まで増加した.また,歩行自立に到達した時期は,通常栄養群は入院4週目,低栄養リスク群は入院8週目,低栄養群は到達しなかった.〔結語〕栄養状態に関わらず,歩行能力は回復するが,入院時に低栄養の場合は,歩行自立が遅れることが示された.
  • 河戸 誠司, 江口 はるか
    2015 年 30 巻 4 号 p. 529-532
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕終末期の特発性間質性肺炎(以下,IIPs)患者への理学療法士の関わりについて,PT介入の役割と終了時期を検討することである.〔対象〕IIPs急性増悪により死亡した12例とした.〔方法〕理学療法(以下,PT)の経過・実施内容,患者・家族の希望内容,医師の治療内容・経過,患者の意思決定の可否,緩和ケアの説明の有無を調査した.〔結果〕PT介入は4例で再悪化時に,残りの8例で再々悪化時に中止となった.PT内容に患者・家族希望を反映できたのは3例であった.〔結語〕終末期のIIPs患者に対する理学療法士の役割は,短期間に患者と家族の精神状態を把握し,終了時期まで症状緩和に向けた的確なADL変更をすることである.
  • 伊藤 忠, 酒井 義人, 山﨑 一德, 中村 英士, 山田 彩加, 佐藤 徳孝, 森田 良文
    2015 年 30 巻 4 号 p. 533-537
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢者での下腿三頭筋と腰背筋への振動刺激時の固有受容加重比率(RPW)の性差を検証した.〔対象〕腰部脊椎症と診断され入院中の54名(男性30名,女性24名,年齢の平均±標準偏差74.7 ± 4.8歳)とした.〔方法〕下腿三頭筋および腰背筋に閉眼立位で交互に60 Hzの振動刺激を与えた.男性と女性の2群間で,年齢,身長,体重,BMI,罹病期間,RPW,腰背筋断面積,腰椎前弯角度,背筋力,Visual Analogue Scale(VAS)を比較した.〔結果〕女性高齢者のRPWは,下腿優位の反応を示した.〔結語〕女性高齢者は,疼痛コントロールと同時に,体幹の固有感覚と筋機能の両方に対する機能向上プログラムを実施する必要がある.
  • 金子 千香, 平林 茂, 菅沼 一男, 大日向 浩, 丸山 仁司
    2015 年 30 巻 4 号 p. 539-543
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕入学様式の違いが大学生活不安に及ぼす影響について調査すること.〔対象〕四年制大学の理学療法学科の新入生86名とした.〔方法〕大学生活不安尺度を用いて大学生活に関する不安感を調査した.〔結果〕アドミッションズ・オフィス入試(以下,AO入試)による入学者は一般入試による入学者に比べ,大学生活不安尺度における評価不安が高く,実際の成績には差がないにもかかわらず成績に関する不安が強かった.その他の尺度である日常生活不安,大学不適応と総合得点には有意差はなかった.〔結語〕AO入試による学生は,筆記試験を経験していないため学力に自信が持てず,評価されることに対する不安感が他より大きい可能性がある.
  • 小林 薰, 柊 幸伸, 丸山 仁司
    2015 年 30 巻 4 号 p. 545-548
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕従来の転倒評価に加え,これまで扱われることが少なかった敏捷性の指標を追加し,地域在住高齢者の転倒に関する要因を検討した.〔対象〕地域在住高齢者78名(男性21名,女性57名:平均年齢76.5歳)とした.〔方法〕過去1年間の転倒歴および各運動機能評価を測定した.非転倒群と転倒群の比較には対応のないt-検定を用いた.転倒を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,カットオフ値を算出した.〔結果〕非転倒群と転倒群の比較では,ステッピングのみ有意な差が認められた.投入した変数からステッピングが有意に抽出され(オッズ比:0.714倍),カットオフ値は14.0回(感度76.9%,特異度61.5%)と判断できた.〔結語〕地域在住高齢者の転倒には敏捷性が影響していることが明らかになった.
  • 解良 武士, 河合 恒, 吉田 英世, 平野 浩彦, 小島 基永, 藤原 佳典, 井原 一成, 大渕 修一
    2015 年 30 巻 4 号 p. 549-555
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕都市部在住高齢者の心身機能から1年後のフレイルへの進展に寄与する要因を検討することとした.〔対象〕都市部在住の高齢者913名のうち,すでにフレイルであったもの121名を除き,翌年に調査ができたもの384名を最終的な対象とした.〔方法〕心身機能の調査をもとに,1年後の新たなフレイルの非該当を従属変数,ベースラインでの各評価項目を独立変数とし,性別,年齢を共変量として強制投入したうえで,多重ロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕新たにフレイルの発生がみられたのは42名(11.0%)であった.ベースライン測定時の性別,握力,転倒スコア,膝関節の疼痛が独立した因子として抽出された.〔結語〕筋力以外に,転倒スコアと膝関節の疼痛がフレイル発生の予知に重要であることが示唆された.
  • 中越 竜馬, 武政 誠一, 中山 宏之, 森 勇介
    2015 年 30 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕整形外科に通院している地域在住高齢者のロコモティブシンドローム(ロコモ)の有無と生活活動量および健康関連QOLとの関連性を明らかにすることを目的とした.〔対象〕整形外科に通院する地域在住高齢者30名とした.〔方法〕質問紙によりロコモの有無,握力,手段的日常生活動作,生活活動量,転倒恐怖感,抑うつ度,健康関連QOLの調査をし,ロコモの有無により2群に分け比較した.〔結果〕ロコモ群より非ロコモ群では,握力,手段的日常生活動作,生活活動量,抑うつ度,健康関連QOLが有意に低くなった.〔結語〕ロコモを有する地域在住高齢者の健康関連QOLの向上を目指すためには,運動機能や日常生活機能へのプログラムのみならず,精神面へのアプローチの必要性が示唆された.
  • 平野 恵健, 林 健, 新田 收, 西尾 大祐, 皆川 智也, 池田 誠, 高橋 秀寿, 木川 浩志
    2015 年 30 巻 4 号 p. 563-567
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中重度片麻痺患者の退院時の日常生活活動(ADL)が,回復期リハビリテーション病棟入院時の患者属性および身体機能から予測できるか否かを検討することである.〔対象〕入院時に麻痺側下肢Brunnstrom Recovery StageⅡ以下の62名とした.〔方法〕退院時のADL能力となるBarthel Indexを基に分類された部分自立群(60点以上)と介助群(60点未満)との間で,入院時の患者背景(年齢,疾患名,障害名,転院待機日数),認知機能(MMSE),神経症候(NIHSS),体幹機能(TCT),非麻痺側膝伸展筋力を比較した.次に,2群間で有意差を認めた項目を用いて,退院時のADL能力の部分自立/介助について判別分析を行った.〔結果〕単変量解析では,年齢,転院待機日数,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力において2群間で有意差が認められた.判別分析では,年齢,転院待機日数,非麻痺側膝伸展筋力が選択された.〔結語〕これらの患者背景および身体機能から退院時ADLを予測することができると考えられる.
  • 平野 康之, 井澤 和大, 夛田羅 勝義, 川間 健之介
    2015 年 30 巻 4 号 p. 569-576
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕訪問リハビリテーション(訪問リハ)従事者が利用者の病状把握に用いる重要なアセスメントを明らかにする.〔対象〕全国の訪問リハ従事者335名とした.〔方法〕540施設に質問紙を郵送し,その回答結果を職種別,経験年数別に検討した.〔結果〕訪問リハの実践においてバイタルサインや転倒,意識レベルなどは重要とされていた.しかし,腹部聴診,心尖拍動触診,心電図変化などは重要とされていないアセスメントであった.また,職種や経験年数の違いによる影響も認められた.〔結語〕訪問リハ従事者は,内部障害を有する利用者を経験しているにもかかわらず,内部障害系のアセスメントの知識や実施経験に乏しい現状がある.
  • 武田 祐貴, 新居 弘尭, 石野 洋祐, 石川 啓太, 釘本 充, 杉山 俊一, 山口 日出志, 金子 貞男
    2015 年 30 巻 4 号 p. 577-582
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,脳卒中急性期の理学療法におけるHAL導入の効果を明らかにすることである.〔方法〕当院入院中の脳卒中患者の中で,HAL適用基準に適合するものを1)通常の理学療法に週2回HAL両脚型を用いるHAL群と,2)通常の理学療法のみを行う対照群の2群に任意に割り付け,HAL開始病日と終了病日における両群のパフォーマンス値を比較した.〔結果〕 HAL終了病日における10 m快適歩行速度のみHAL群で有意に速かった.〔結語〕脳卒中急性期におけるHALを用いた理学療法は,歩行能力の改善に有効だった.HALに備わる運動アシスト機能などの特徴が有効に働いた結果と考えられた.
  • 小林 巧, 山中 正紀, 神成 透, 堀内 秀人, 松井 直人, 角瀬 邦晃, 野陳 佳織, 大川 麻衣子, 田中 昌史, 信太 雅洋
    2015 年 30 巻 4 号 p. 583-587
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症患者の歩行速度に影響を与える因子について検討した.〔対象〕対象は変形性膝関節症患者54名であった.〔方法〕歩行速度により高速群,中速群,および低速群の3群に分け,高速群および低速群の2群について,基本属性,身体属性および機能因子の比較を行った.また,歩行速度と有意に関連する因子を選択するためにロジスティック回帰分析を実施した.〔結果〕年齢,身長,膝伸展,および屈曲筋力は2群間で有意な差が認められた.歩行速度に関連する有意な予測因子は膝屈曲筋力であり,その基準値は0.31 Nm/kgだった.〔結語〕変形性膝関節症患者の歩行能力の向上には膝屈曲筋力が重要である可能性が示唆された.
  • 三浦 紗世, 世古 俊明, 隈元 庸夫, 高橋 由依, 金子 諒介, 田中 昌史, 信太 雅洋, 伊藤 俊一
    2015 年 30 巻 4 号 p. 589-593
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕徒手筋力計を用いた徒手固定による,座位での頭頸部筋力測定の有用性を検証すること.〔対象〕男女の健常者20名とした.〔方法〕座位での徒手固定法,ベルト固定法,臥位での徒手筋力検査法で,頭頸部屈曲,伸展筋力,頭頸部,および体幹の筋活動量を計測した.各測定法の信頼性,測定法間での筋力と各筋活動量の比較および筋力については相関も検討した.〔結果〕検者内信頼性は全測定法で良好な値を示した.頭頸部屈曲,伸展筋力は徒手固定法とベルト固定法でMMTより高い値を示し,徒手固定法による筋力はMMTとベルト固定法の間に有意な相関を示した.筋活動量は,頭頸部屈曲時の腹直筋がMMTで高い値を示した.〔結語〕徒手固定法は体幹筋の影響を受けず,信頼性の高い簡便な測定法となり得る.
  • 金子 千香, 平林 茂, 菅沼 一男, 大日向 浩, 丸山 仁司
    2015 年 30 巻 4 号 p. 595-598
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法学科新入生の理学療法士をめざす意志と,大学生活に対する入学前のイメージとが,入学後の不安感に及ぼす影響を評価することとした.〔対象〕2014年に四年制大学へ入学した88名である.〔方法〕大学生活不安尺度(CLAS:college life anxiety scale)とアンケートを使用し,集合調査法によるアンケート調査を実施した.〔結果〕イメージ不一致感を持つ者では,CLAS下位尺度のうち,大学不適応尺度で有意に高得点であり,学部への不適合による不安感を持っていた.〔結語〕入学直後からすでに理学療法士になる意志のない学生がいることと,新入生が大学生活に不安感を感じる一要因として入学前の大学生活に対するイメージが関係していることが明らかとなった.
  • 本田 啓太, 松原 誠仁
    2015 年 30 巻 4 号 p. 599-603
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕二重課題が歩行中の動揺に対する反応的運動制御の適応過程に及ぼす影響を明らかにすることとした.〔対象〕健常男子大学生20名で,このうち二重課題群と単一課題群を各10名とした.〔方法〕三次元自動動作分析装置および地面反力計による計測値から力学的負仕事および身体に加わる衝撃力を算出し,歩行中の動揺に対する適応過程を両群間で比較した.〔結果〕両群の衝撃力および足関節の負仕事の適応過程に有意な差はなかったが,膝関節の負仕事は,二重課題群の方が有意に遅い適応的変化を示した.〔結語〕二重課題は,歩行時の下肢関節による衝撃吸収能の適応過程を部分的に遅延させるという機能の損失を生じさせることが示され,このことは転倒発生機序の理解に寄与するものである.
  • 古後 晴基, 宮原 洋八, 大川 裕行, 溝田 勝彦, 大田尾 浩, 久保 温子, 八谷 瑞紀, 満丸 望
    2015 年 30 巻 4 号 p. 605-608
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護予防のために,腰部筋硬度と身体柔軟性との関係を明らかにすることとした.〔対象〕65歳以上の健常高齢者28名(男性4名,女性24名)を対象とした.〔方法〕腰部筋硬度の測定部位は最長筋部とした.身体柔軟性の測定は,背中で両手指を斜めに近付けた中指-中指間距離(Middle finger-Middle finger Distance: MMD)と長座体前屈距離とし,左上位のMMDと右上位のMMDの測定値を比較した.さらに,腰部筋硬度と身体柔軟性との関係,および身体柔軟性の各測定項目間をPearsonの相関係数にて分析した.〔結果〕左上位MMDと右上位MMDに有意差は認められなかったが,両群間に強い正の相関が認められた.また,右上位MMDと長座体前屈距離において,有意な負の相関が認められた.その他の測定項目間,および腰部筋硬度と身体柔軟性に有意な相関は認められなかった.〔結語〕身体柔軟性は腰部筋硬度に影響しない可能性が示された.
  • 田中 昌史, 小林 巧, 小林 匠, 世古 俊明, 信太 雅洋, 隈元 庸夫
    2015 年 30 巻 4 号 p. 609-614
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕模擬除雪反復動作での投擲高さの違いによる筋疲労の変化を検討すること.〔対象と方法〕健常男性8名の僧帽筋上部線維・腰部脊柱起立筋・大腿直筋を導出筋とした.ショベル上の重錘を,身長比50%,75%,100%の高さに設定したバーを超えるよう10分間反復して投擲させ,平均パワー周波数(mean power frequency;以下,MPF)を算出した.〔結果〕全ての高さで両側の大腿直筋のみにMPF低下がみられた.大腿直筋のMPF低下と同時期かその直後に非投擲側腰部脊柱起立筋の休止期での筋活動量増加が出現した.〔結語〕大腿直筋の疲労が腰部脊柱起立筋の筋活動増加を招き,腰痛を引き起こす可能性が示唆され,除雪動作では定期的な休息をとる必要性が考えられた.
  • ─SWMを使用しての定量的な評価─
    木村 和樹, 久保 晃, 石坂 正大, 伊藤 晃洋, 塩見 誠
    2015 年 30 巻 4 号 p. 615-618
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕Semmes-Weinstein-Monofilament(以下SWM)を使用して定量的に足底触圧覚を測定し,加齢変化を足底部位別に検討した.〔対象〕日常生活動作の遂行に支障のない男性62名,女性174名,合計236名(472肢)とした.年代を20-29歳群,55-74歳群,75-94歳群の3群に設定した.〔方法〕SWMを使用し両足底の母趾,母趾球,小趾球,踵の計8ヵ所を評価し,加齢と部位の影響を検討した.〔結果〕55歳までに足底触圧覚閾値は上昇し,部位別では踵が他の部位より触圧覚閾値が有意に高かった.〔結語〕加齢によって足底触圧覚閾値は上昇し,踵部がより高くなる事が示唆された.
  • 齋藤 崇志, 井澤 和大, 大森 豊, 渡辺 修一郎
    2015 年 30 巻 4 号 p. 619-625
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕要介護高齢者の自宅内での,2.4 mの歩行テスト(2.4T)の有用性を調べるために運動機能,Functional Independence Measure(FIM)との関係を明らかにすることとした.〔対象〕要介護高齢者51名とした.〔方法〕2.4T,運動機能指標(膝伸展筋力とModified-Functional Reach Test(M-FRT)),FIM運動項目について測定した.さらに運動機能と2.4Tの関係,ならびに,2.4TとFIMの関係をスピアマンの順位相関係数と重回帰分析を用いて解析した.〔結果〕膝筋力とM-FRTとFIMはそれぞれ有意な相関関係が認められた.〔結語〕2.4Tは,要介護高齢者の運動機能とFIMと関係する歩行能力指標となる可能性が示唆された.
  • ─中年と高年女性の比較から─
    成田 誠, 岡田 壮市, 小泉 大亮, 北林 由紀子, 加藤 芳司, 竹島 伸生
    2015 年 30 巻 4 号 p. 627-633
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕中年(M)と高齢(O)女性を対象に,静的および動的バランス能の相違を比較し,加齢の影響を検討することである.〔対象〕50歳代をM群(n=49)と80歳代をO群(n=53)の2群に分類した.〔方法〕バランスの指標はプラットフォームシステムを使用し,静的(SB)および動的バランス能(DB)を測定した.反応時間(RT),重心移動速度(MVL)はDBの指標に用いた.〔結果〕SBとDBで,O群はM群に比べ有意に劣っていた.中でもRTとMVLは,2群間の差は著明だった.〔結語〕DBの中で,RTとMVLの低下は著明であり,神経筋や神経機能を含むバランス運動の導入が推奨される.
  • 津田 章代, 望月 智行, 小西 智也, 泉 達弥, 萬井 太規, 山本 敬三, Shih-fen Hsiao, 浅賀 忠義
    2015 年 30 巻 4 号 p. 635-640
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕片麻痺患者の立位における下肢外旋位がCOP移動範囲に与える影響およびその際の足底部内の部位別圧分布の特性について検討することだった.〔対象〕片麻痺患者9名と健常者10名を対象とした.〔方法〕被験者は一側下肢を外旋し,4方向リーチを行った際のCOP座標と足圧分布を計測した.外旋角度は3条件(10°, 30°, 45°)とした.〔結果〕下肢を外旋するとBOSは有意に拡大したが,片麻痺患者のCOP移動範囲は拡大しなかった.足圧分布は,健常者と比較して麻痺側では前方で有意に低下し,非麻痺側では踵で有意に増加した.〔結語〕片麻痺患者の麻痺側下肢外旋位は立位安定性には貢献しない.また,両側の前方への荷重性低下が特性として挙げられる.
  • 前田 貴哉, 吉田 英樹, 齋藤 茂樹, 佐藤 菜奈子, 佐藤 結衣, 佐藤 公博
    2015 年 30 巻 4 号 p. 641-645
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕キセノン光の星状神経節近傍照射(Xe-LISG)が上肢領域の筋血流量を増加させ得るか否かを明らかにすることとした.〔対象〕健常者16名とした.〔方法〕全対象者に,安静仰臥位での10分間のXe-LISGと安静仰臥位保持(コントロール)を日を改めて実施し,Xe-LISGおよびコントロール実施中の左右の上腕二頭筋および上腕三頭筋の酸素化ヘモグロビン量(HbO2)を測定した.〔結果〕両筋のHbO2は,コントロール実施中ではほぼ一定に保たれたが,Xe-LISG実施中では増加し続けた.さらに,コントロール実施中と比較してXe-LISG実施中の両筋のHbO2は有意に高かった.〔結語〕Xe-LISGは上肢領域の筋血流量を増加させる.
症例研究
  • 村部 義哉, 木村 大輔, 上原 信太郎, 加藤 丈博, 平松 佑一, 松木 明好
    2015 年 30 巻 4 号 p. 647-652
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕破局的思考とアロディニア様症状を呈した症例に対する治療経過を報告する.〔対象〕胸骨正中切開法による心臓外科術後4ヵ月が経過した70代女性で,術創部の炎症反応,肩関節運動に伴う伸張痛,非侵害的物理刺激による顕著な疼痛が,また,自己身体に対する悲観的発言や社会参加への消極的な態度が認められた.〔方法〕予め提示した肩関節他動的水平外転に要する時間と実際との時間差に注意を向けさせた上での可動域練習を実施した.〔結果〕2ヵ月後,対応可能な運動速度の短縮と共に,破局的思考とアロディニア症状の軽減がみられた.〔結語〕疼痛自体から注意を逸らす他動運動による疼痛の制御経験が,痛みの恐怖─回避モデルからの脱却を促す可能性がある.
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