1989 年 4 巻 2 号 p. 55-60
合併症を有する非インスリン依存性糖尿病患者5名に対し低強度運動療法を実施した。低強度負荷は、最大心拍数の40%を目標心拍数とし、1秒1ステップの歩行運動によってなされた。低強度運動が血糖のコントロールにどのような影響を与えるかを調べた。網膜症を合併する症例1名においては食事療法7日目より運動療法を実施した結果、空腹時血糖値の低下を認めた。脳血管障害による右片麻痺(Brs.6)の症例2名において食事療法14日目より運動療法を実施した結果、空腹時血糖値は3日後、正常値範囲に到った。狭心症、高血圧を合併する症例においては食事療法と経口血糖降下剤によって空腹時血糖値は正常化していたが、運動療法によって経口血糖降下剤より離脱することに成功した。また、これらの症例において運動の拒否および合併症の増悪はなかった。これらの結果から低強度運動療法はこれらの合併症を有する糖尿病患者にとって有効であることが示された。